商品貨幣論1 ―貨幣ヴェール説―
「貨幣」を辞書で引くと次のように書かれています。
長々、っと書いているので主要部分だけを抽出するとこうなります。
商品交換の際の媒介物。
「A.商品(価値)」と「C.商品(価値)」の価値を交換する際に、それを中継する「B」が「B.貨幣(価値)」である、という考えです。
これは、貨幣を「物々交換をより円滑に行うための便利な道具」としてとらえた考え方になります。
A.商品(価値)⇔B.貨幣(価値)⇔C.商品(価値)
というわけですね。
B.貨幣(価値)は、もし、
A.という商品が大容量で移動が困難な場合でも、
そのAの価値を測った上で、(価値尺度)
容量の小さな貨幣というものへ変換することができ、
結果、その貨幣は流通させやすくするための手段にもなり、(流通手段)
Aという商品が腐っても、B.貨幣に変換することで価値を減らすことなく
貯蔵することができます。(価値貯蔵)
まさに価値尺度、流通手段、価値貯蔵そのものです。
これは、A.商品(価値)が「サービス」であっても同じです。
A.サービス(価値)⇔B.貨幣(価値)⇔C.商品(価値)
A.の名称が変わっているだけで、B.貨幣の役割は全く変わっていません。
B.貨幣はAがサービスだったとしても、物々交換の理論の中では価値の「媒介物」なのです。
こうした、
「物々交換を円滑に行うための道具としての貨幣」
「価値と価値を交換するための媒介物」
という考えの貨幣論のことを
商品貨幣論
と言います。
「商品と貨幣を交換する理論」ということですね。
その中でも特にこの、「価値と価値を交換するための媒介物」という考え方を示した説明のことを
貨幣ヴェール説(貨幣ヴェール観)
と言います。
ヴェール、というのは女性がウェディングなどで被るシルクのヴェール、とかそういう透けて見えるような頭部に被る薄布のことですね。
これはどういう意味なのかというと、
A.商品(価値)⇔B.ヴェール⇔C.商品(価値)
ということ、
つまりB.は価値がA.⇔C.間を通り抜けるヴェールにすぎない
ということです。
この貨幣ヴェール説を初めて唱えたのは
経済学の父 アダム・スミスの親友でイギリスにおいて「経験論」という哲学の基礎を築いたスコットランド人の哲学者であり歴史家、政治思想家などなどの数多くの肩書も持つ、
デイヴィッド・ヒューム
という人物だったりします。
こうして、経済学はその黎明期において、
「基本的に貨幣を重視しない理論」
として成立したわけなのです。