ベーシックインカムは極めて怪しい.10―カナダの不正確な事例―
■カナダの「最低所得保障」をBIと定義します
さて、前回の負の所得税(NIT)の話から続きですが…。
BIENはこのように述べています。
自動翻訳で読み難いので、箇条書きに要約してみます(また、翻訳では「保証」と訳されるため「保障」に修正します)。
イランでは偶然にBIのような制度が導入された
1970年代に米国とカナダで行われた「最低所得保障」と「負の所得税(NIT)」の実験では、「社会的に有益な成果」が示され、「雇用からの離脱」はほとんどなかった
カナダの実験の結果は、「最低所得保障」と「BI」は似ているので、「BI」が導入された場合にも同様の効果が期待できることを示している
「BI」の方がより大きな効果をもたらす可能性がある。
1.については後で語るとして、2~4.はカナダの事例となりますが、3.では「最低所得保障」は「BI」と似ていることが強調されていますので、「最低所得保障(BI)」と以降では書かせていただきます。
■「有益な社会的成果」は「格差是正」と定義します
さて
「有益な社会的成果」
と
「雇用からの離脱」はほとんどなかったこと
は
「最低所得保障(BI)」によって得られたものでしょうか?
それとも
「負の所得税(NIT)」によって得られたものでしょうか?
簡単に「有益な社会的成果」とは何かを定義しましょう。
これは経済政策ですので、経済政策上社会的に有効な経済政策とは何か、というと、それは「格差是正」効果があり、貧困層が貧しくあっても基本的人権が保障される状況のことになります。
詳しくは下の記事をお読みください。
4.「BI」の方が「最低所得保障」より大きな効果をもたらす可能性がある、というのがBIENの見解ですが、富裕層にも分配する以上、寧ろ真逆だ、というのが私の見解になります。
■「有益な社会的成果(格差是正)」はBIによるものではない
上記のリンクの通り、BIは「有益な社会的成果(格差是正)」には寄与しないことを私は述べてきました。
「格差是正」を行なう為には、貧困層に富を付与し、富裕層には付与しない、という「資産調査による給付コントロール」をしなければなりません。
となると、「格差是正」はBIの要件である「普遍性」を伴いませんので、限定的定額給付金となります。
カナダの実験の場合では限定的定額給付金に当たるのは「負の所得税(NIT)」の方です。「最低所得保障(BI)」ではありません。
何とBIENは「負の所得税(NIT)」による「有益な社会的成果(格差是正)」を「最低所得保障(BI)」とセットで語ることで、まるでBIに「有益な社会的成果(格差是正)」があるかの如く団体代表のホームページに掲載しているわけです。
これは最早、捏造であり詐欺です。
このように書くこと自体、逆説的に、BIには「有益な社会的成果(格差是正)」はないことを認めていると私は判断します。
あと、「雇用からの離脱」はほとんどなかった、という件についてですが、「いつ止めるか分からない社会実験なのに、退職するはずがないでしょう」
というのが、常識的な考えだと思います。
また、当時のカナダ人労働者たちが「退職」しなかった理由は別にもあるのですが、それは次の記事でご紹介いたします。