三点監視の応用.6 ―統合政府.3(国債廃止論)―
さて、次はMMTで主流となりつつある
「国債廃止論」
が、どのようにして「統合政府」に繋がっているのか、それを説明したいと思います。
因みにMMTの根本理論は大雑把に申し上げて、過去取り上げた、
租税貨幣論・モズラーの名刺のことになります。
まず、いつもの通り、通常の三点監視の図解を示しましょう。
さて、それではここから「Ⓐ国債」を削除します。
するとこうなります。
日銀当座預金のみが日銀から民間銀行を経由して政府に流れていますね。
この時点で、三点監視においては「発行したⒸ国債とⒹ日銀当座預金の照合を行うことで監視していた政府」は
「Ⓓ日銀当座預金」をただ受け取るだけの存在になります。
監視して金額を確かめようにも、その確かめるための基準としての数字がメモされていた国債が無くなっておりますので
日銀当座預金にどんな数字が書かれていようと、その数字が正しいかどうかなんて区別しようがありません。
三点監視は
C.政府、B.民間銀行、D.日銀、それぞれが、
Ⓒ国債、Ⓑ銀行預金(日銀当座預金に変換できる貨幣)Ⓓ.日銀当座預金
という異なるメモ用紙を発行し、
その異なるメモが照合し合い、
同じ金額だと証明し合うことで「貨幣の信用」が成り立っています。
Ⓒ国債、が無くなれば、異なるメモ同士の確認自体ができませんので「三点監視」が壊れます。
さてここに、
更に「財政ファイナンス」の時に出てきました
「政府と日銀」の「合併」話
も加わります。
国債が無くなった以上、日銀も政府もそれ以降の業務は『日銀当座預金』という「一種類のメモを使って会計を行う」ということになります。
これは、
1台のレジスターで2人が何故か全く同じ打ち込み会計をしているようなものです。
数字の確認作業を行うわけでもない完全な無駄な作業です。
そんな無駄なことをするくらいなら
「合併すればいいんじゃありませんか?」
これが
前回の「財政ファイナンス」と全く同じ、
「政府と日銀の合併」による「統合政府」
という結末を生み出します。
結局、
「国債廃止論」も
「財政ファイナンス」も
「統合政府」に帰結する、
『三点監視・貨幣の信用』を壊す理論
に過ぎません。
国債廃止論を唱えるMMTerの皆さんは「国債」に付利される「金利」が富裕者層の収入となり格差が拡大することを問題、としていますが、金利による格差問題があったとしても
「三点監視・貨幣の信用」の為に国債が機能しているのだとしたら、安易に消滅させて良いものではない
ことは分かるはずです。
私は断言しますが
「国債廃止論」は
「貨幣の信用」を破壊し
「貨幣の価値」も信用できない世界を作り出す。
そのような理論です。
私は、現実に統合してしまうことを目的とした『統合政府論』を非常に危険視しています。
警告!
国債廃止をするとMMTはリフレ理論と変わりないものに成り下がります。
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