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ローカルの幸福と新しい観光

コロナ禍で人間の活動が抑制されたことで、インドでは大気汚染が改善したり、ヒマラヤを望むことができたり、ガンジス川の水質改善が見られたりした。禍の主であるコロナが本来の地球の姿を見せてくれたことで話題となった。

無料配信トークイベント『ニューノーマル、新しい観光』開催

コロナ禍で見えたものは、これだけではない。自粛警察、歌舞伎町の夜の街問題や岩手県初の陽性者と所属会社に対する仕打ち、寛容であると思われた社会に潜む、不寛容さもまた浮き彫りとなった。

Go To トラベルキャンペーンを巡っては、東京を諸悪の根源呼ばわりしたり、露骨に来訪を拒否すると明言する首長が現れた。キャンペーン実施にまつわる政府の準備や対応の不備はもちろん看過できるものではないが、感染の疑わしきは近寄るなと公に語って正義となす態度もいかがなものだろうか。

さて、観光文脈でよく耳にする、三方よしという言葉がある。観光は、地元住民・事業者・旅行者の3者にとって、良きものでなくてはならないということを伝えるものだ。

良い時はどんどん招き、悪い時は拒否では、三方よしは成り立たない。3者が互いに気遣うことで難局を乗り越えたい。

コロナ禍では、オーバーツーリズムの問題を抱えた人気観光地から人影が消えた。オランダのアムステルダムは、これまで年間1,900万人もの観光客が来訪し、オーバーツーリズムへの対応に頭を悩ませていた。しかし、この災禍で観光客の消えた街を前に、新たな課題に直面することになる。

観光課題への議論も拡大、オランダが6月15日から観光客受け入れ

観光客が立ち去ってみると、市の中心部に人がほとんど居ないこと、アムステルダムの人へ提供できるものがないことを痛感したのだ。街は観光地化が進み、入場ゲートが閉ざされるとそこは全く人気のない閉園後のテーマパークのようになっていたのだ。

アムステルダム市長のフェムケ・ハルセマは、コロナ後の再開に向け、中心部を地元の人のため再構築する計画を打ち出したという。

飲食店や宿泊施設でも似たような話があった。観光客向けに事業を展開していた店はコロナ禍で客を失い窮地となったが、地元や仲間と繋がりがある店は、互いにコミュニティを気遣い、支援をしたり受けたりしながら助け合うことができたというものだ。

危機に直面したとき、いかにコミュニティが大切かを様々な形でコロナ禍は教えてくれたが、これは、観光における真の三方よしを再考するにあたって重要な示唆でもあるだろう。

少子高齢化や過疎化の進む地域でインバウンドに取り組むとき。すでに人気があり、多くの観光客が訪れている観光地でオーバーツーリズム対策を考えるとき。あるいは、文化観光や富裕層観光を進めて行くとき。

そこではまず、地元住民・事業者・旅行者、3者の幸福を考えなければならない。これまで、観光の指標といえば、訪問者数や消費額といった数字を中心に見てきたわけだが、今後は、経済的な効果だけに着目するのではなく、3者それぞれの生きがいや、やりがい、そして、幸せに繋がっているかを見ていく指標も必要ではないだろうか。

昨年、ミッドタウンでひらかれた瀬戸内国際芸術祭の企画発表会で、総合ディレクターの北川フラムさんが、この芸術祭のKPIは島のおじいさん、おばあさんの笑顔を増やすことだと語ったことが思い起こされる。

コロナ禍はまだ続いている。これが収束を見せた後もまた新たな危機はやってくるだろう。

観光は、未来に向け、地域社会を活性化し、持続可能とするために選ばれ、その取り組みを推進してきた(観光立国)。だからこそ、今後も訪れるであろう危機に際しては、観光がその地域のレジリエンスを担い、地域を幸せな未来へと繋げる役割を果たせるようになりたい。

トークイベント『ニューノーマル、新しい観光』では、コロナ禍によるこの危機を好機ととらえ、これからの観光を様々な角度から登壇者と考えていく。

SESSION 4:
ローカルの幸福と新しい観光 

登壇者プロフィール

齋藤貴弘

齋藤  貴弘
ニューポート法律事務所パートナー弁護士 / ナイトタイムエコノミー推進協議会代表理事    近年は風営法改正を主導するほか、ナイトタイムエコノミー議員連盟の民間アドバイザリーボードの座長、夜間の観光資源活性化に関する協議会の委員を務め、各種規制緩和を含むルールメイキングに注力している。著書に『ルールメイキングナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』(齋藤貴弘・著/学芸出版社)

國友尚

國友 尚
アソビジョン代表取締役  立命館大学客員教授    大学在学中よりTV番組やアーティストの演出を手掛ける演出家、プロデューサーとして活動。その後、ヤフー、KDDIにおいて、企画部門、事業戦略部門の部門長として、新領域の開拓を多数成功に導く。2018年アソビジョン設立。新製品開発、新規事業開発、商業施設開発のディレクションのほか、経営者、プロアスリートのプロデュースを手掛ける。システム工学、感性工学の研究者日本創造学会論文賞を受賞するなど、イノベーションデザイン、ヒューマンシステムデザインにおける独自の手法は注目 を浴び 、産官学の国家プロジェクトに複数参画

手塚マキ

手塚 マキ
Smappa! >Group会長   歌舞伎町でホストクラブ、BAR、飲食店、美容室など10数軒を構える「Smappa!Group」の会長。歌舞伎町商店街振興組合常任理事。JSA認定ソムリエ。97年から歌舞伎町で働き始め、ナンバーワンホストを経て、独立。ホストのボランティア団体「夜鳥の界」を仲間と立ち上げ、深夜の街頭清掃活動をおこなう一方、NPO法人グリーンバードでも理事を務める。2017年には歌舞伎町初の書店「歌舞伎町ブックセンター」をオープンし、話題に。2018年12月には接客業で培ったおもてなし精神を軸に介護事業もスタート。近著に、『ホスト万葉集』(講談社)がある。

伏谷博之

伏谷 博之
ORIGINAL Inc. 代表取締役_タイムアウト東京代表
島根県生まれ。関西外国語大学卒。大学在学中にタワーレコード株式会社に入社し、2005年代表取締役社長に就任。同年ナップスタージャパン株式会社を設立し、代表取締役を兼務。タワーレコード最高顧問を経て、2007年 ORIGINALInc.を設立し、代表取締役に就任。2009年にタイムアウト東京を開設し、代表に就任。観光庁、農水省、東京都などの専門委員を務める。

堀口ミイナ

堀口 ミイナ
ナビゲーター  トルコ・イズミル出身 日本とトルコのハーフ早稲田大学政治経済学を卒業後、大手総合商社(三菱商事)に勤め、2017年よりタレントに転身。母国語の日本語・トルコ語に加え、英語・スペイン語を扱い、ラジオナビゲーターとして活躍。ワインエキスパート テキーラマエストロ小型船舶操縦士1級の資格も持つ。

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Hiroyuki Fushitani
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