ひとときの花
庭の薔薇達よ
朝日に愛でられ 雫 輝き
薄紅色の乙女 ほころべど 1本ひととき
咲いては散り 咲いては散り……
恋も 情熱も ほころびは ひととき
過ぎ行く時の刹那に酔うて 散るのは早い 摘めばなおさら
他所の庭に 純白の可憐 根をつけたアナタ
水晶の雨粒に濡れ輝き 君に勝る華はない
彩も匂いも 極繊細で儚げ
他所の華らは己の美を競うように刺々しく咲き 朽ちてゆくだけ
嗚呼、尊いアナタ
高潔なる命に神を見た
無下に摘むことなど出来ぬ運命それでも 満月に焦い願う
アナタが開く 蕾の微笑みを
共に息吹けば さらに尚
それは 叶わぬ夢……
今宵 どしゃ降りの涙 降り出したアナタ 花弁を清らに濡らす
私に見つめられた火照り 鎮めるために
窓の外には蜃気楼
真珠のような肌が水滴に濡れ 月明かりに身体をさらす妖艶神秘を
殺伐とした世界 アナタが神の愛により仄かに光とき放つ奇跡を見た
甘い誘惑を 微細に奏でながら
暖かな瞳 柔らな白羽
煙まとう 喉仏までも切なげ
誰もアナタを知らない
アナタの神秘を知りようもない
が……それさえも愛しい
月神の化身か
夏の青 解き放つかのごとく
想いは空を染めあげ
激しい雨さえも濃厚に甘く夜に溶け
アナタの温もりも眼差しも
はらはら落ち綿雪へ……
ささめく木漏れ日や春の風へ
小馬に寄り添う 母馬にも
感じる 離れていても呼応する
想いの丈は 蕊-ズイ-の奥深くにしまい
不思議と世界を包みこむ
それは心地よく 途絶えることもなく
想えばいつも 心に
ひとときでも 愛