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deft_prawn9989
鯨、飲んだ
私の 内側の世界には ワタシだけが存在し
外側には 住めない
違う星から来た民は 飲み込めず吐き出した
誰も 住むことは出来ず
ワタシは私に閉じ込められた
住人も 私を飲みこめず
吐いて蓋をし 冷蔵庫の隅で腐らせた
飲んだ
私は内側に アナタを飲んだ
アナタが これまで創世した言ノ葉を
刹那の眼差しに 泡沫の命に魅せられて
何もかも 美味しそうで
飲んだ
時には 理想という名のオブラートに優しく包みながら
飲まれた
異世界から 長く大きなビッグウェーブがやって来て
アナタは私を 不可思議な満ち引き手で
残された傷痕も 丸ごと飲み込んでしまった
鯨のように 空一面 飲み込んだ
元の星へ帰る暇も与えず 飲まれた私は アナタの身体に漂いながら
世界中の海を 沢山の生物と共に泳いだ
こうして 私の内なる世界の外に
私以外の者がいる と知った
ハ キ ダ シ タ
津波の跡 静寂は黒の額縁を白に染めあげながら再生した
魂と物質世界をつなぐプリマ・マテリアの鍵はこの手の中に……
こうして鯨は
残りかすの毒と迷いを分解し
噛み砕いて消化した
ふたつの命は共鳴し 未来で待ち受ける互いの宿命を
ガムのようにクチャクチャに丸め 天高く放った
放り投げられた命は 新たな世界を創世するため 独り海を渡る
空 消えない