『君の名は・・・』Vol.2
第一場a アランフェス王宮 夕方
曲が流れ緞帳が上がる。(M1)
舞台裏に箱台、中央に階段があり、中幕が途中まで閉じている。
着飾った男女(王女たちと貴族)が踊っている。舞踏会。
上手台上からアストレイア、下手台上からアンジェロ子爵が出てきて踊る。
二人見つめあう。少しの間。
(曲調が変わる)
ひとしきり踊って、王家の人たちを残して皆退場。
奥階段のところにみな腰掛ける。
アストレイア、アンジェロと共に退場。
曲を残して一家団欒のひととき。暗転。銃声。悲鳴。
再び明天になったときは全員死に絶えている。王家の人々にピンを残して絞りながら暗転。暗転幕下りる。
第一場b 街 朝
上手花道からアストレイアとルドルフが歩いてくる。
アストレイア:(ルドルフに向かって)うそよ。うそでしょう、そんな話。
私信じられない。
ルドルフ:アストレイア・・・
アストレイア、下手中央に向かって足早に歩きだす。
ルドルフ:どこへ行くんですか?
アストレイア:決まっているでしょう。お父様のところよ。
ルドルフ:それはいけません。
アストレイア:どうして?
ルドルフ:皆様を手にかけたやつらはあなたを探しています。そんな危険な
ところにあなたを行かせるわけにはいきません。
アストレイア:それでもかまわない。家族を失って一人生き残るよりも、皆
と一緒にいる方がましよ。お願い行かせて。
ルドルフ、振り切って行こうとするアストレイアを止める。
ルドルフ:生きるのです。
生きて皆様ができなかったことを成し遂げるのです。
その方が皆様は喜ばれると思います。
アストレイア、泣き崩れる。
下手奥から追っての声が聞こえる。
男1(声):急げ!あっちの方へ逃げたぞ!
男2(声):捕まえるんだ~!
ルドルフ:さあ、急いで!皆様の分も生きるのです。
アストレイア:(立ち上がって)私は犯人を決して許しません。必ず仇を討
ちます。
ルドルフ頷く。アストレイアの手を引いて、下手花道を通って退場する。
舞台上暗転。
男1(声):いたぞ!
男2(声):もう逃げられないぞ。何しろ後ろは海だからな。
男1(声):まさか、飛び込もうっていうんじゃ。
男2(声):あ~
二人海に飛び込んだ音。悲鳴。
荒れている波の音が流れている。