『彼女の行方』【第13話】
「彼女の居場所」
パズルが完成した。
もうすでに場所はわかっていた。
写真は旅行中に車窓から撮った景色だった。
「外寒そうだな」
「うわぁ、きれい」
はしゃぎながら窓の外に携帯を向けている。
「撮れた?」
画像を見ると少しぶれていたが
夕日の中に白く輝く雪山が映っていた。
「今度行ってみたいな?」
「奈緒ってスキーできるんだっけ?」
「できるよ。こう見えても雪国出身なんだから?」
「そっか、今度一緒に行こうな」
結局は実現しなかった・・・
パズルの中央、抜けている場所に奈緒がいるはずだ。
蓮は確信していた。
警察官の友人佐藤に連絡を取り、写真の雪山に向かう。
もう蓮一人で捜索できる範疇を超えていた。
シーズンオフとはいえ雪がまだ多い。
スキー場に到着すると、捜索隊がすでに動いてくれていた。
ほどなくして奈緒は発見された。
蓮と佐藤は立ち入り禁止のロープの中へ入っていく。
左手の薬指に結婚指輪
右手の薬指に蓮の贈った指輪をはめ
真っ白なワンピースを着て、眠るように横たわっていた。
口元は心なしか微笑んでいるようにみえた。
「大丈夫・・・なんじゃなかったのかよ」
年明けに届いた言葉を思い出しながら
茫然と立ち尽くしていた。
また会えると思って安心しきっていた。
どうしてそんな風に思えたんだろう。
彼女はずっと不安定なままだったのに。
俺の甘えだ。
俺に残されたのは永遠に会えない。
という事実を告げる言葉のみ。
リフトは町人が普段利用するため、スイッチさえ入れれば無人で動くので
奈緒が一人山頂近くまで登ったことを目撃した者はいないようだった。
旦那さんが知らせを受けて駆けつけてきた。
奈緒の姿をみて
「いつか、こんな日が来るのではないかと思っていました。」
と呟いた。
「奈緒の心の中に大切な人がいることは知っていました。
藤咲さんが訪ねて来た時、すぐにわかりました。
おそらく奈緒は貴方に探してほしくて旅に出たのだろうと。」
「・・・・・」
「見つけてくださってありがとうございます。
奈緒も喜んでいると思います。」
返す言葉が見つからず、一礼してその場を離れた。
東京に戻って写真とパズルを引き出しの奥にしまう。
1週間在宅勤務にしていたので、翌朝久しぶりに出社した。
課長は相変わらずブツブツと小言をいっていたが、仕事は以前にもまして忙しく、そのことがむしろありがたかった。
あれから1週間しか経っていないのに、
もう1年くらい前のことのような気がしていた。
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