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『君の名は・・・』Vol.6

第5場 宮殿内 午後

 上手からオランジェとアンジェロが歩いてくる。

アンジェロ:父上、アストレイアはまだ見つからないのですか?
オランジェ:手は尽くしているのだがな。
      お前があの娘をそんなに気に入っていたとは知らなかったよ。
      そうとわかっていれば、あんな悲惨なことが起こる前に、あの
      娘と結婚させたものを。
      あれ以来、どんなにすばらしい家柄の娘を連れてきても、お前
      は見向きもしないのだから、困ったものだ。
アンジェロ:父上・・・私はただ、彼女の身の上が心配なのです。
      この3年間見つからず、名乗りを上げないということは、最悪
      の事態も考えざるを得ないじゃないですか。

 オランジェ頷く。

オランジェ:サンドラ、サンドラ。

 サンドラ、上手から歩いてくる。

サンドラ:はい、何か?
オランジェ:確かお前は、アストレイアの探索をしていたと思うが、その後
      の状況はどうなのだ?

サンドラ:残念ながら一向に・・・八方手を尽くして探させているのです
     が・・・

オランジェ:そうか。王子はアストレイアのことが心配でたまらんようだ。
      私としては、見つかり次第王子と結婚させるつもりだ。
      よろしく頼むよ。
サンドラ:はい、かしこまりました。

 サンドラ、お辞儀をする。オランジェ、アンジェロ、上手に退場。
   下手からジェノーバ入ってくる。少し薄暗くしてサンドラとジェノーバに
 照明。

ジェノーバ:じいさん何だって?
サンドラ:アストレイアを見つけ次第、あのバカ息子と結婚させるんだと
     さ。
ジェノーバ:ひぇー、とんだ茶番だな。死体とでも結婚させる気かい。
      しかし、欲のないじーさんだぜ。
サンドラ:狩りに行くことしか能のない男よ。
ジェノーバ:かわいそうに。俺のようにありあまるづ脳と体力を持って生ま
      れていれば、世の中楽しく生きられただろうに。
サンドラ:その頭脳は悪だくみに、体力は女に使われれば、誰だって楽しく
     生きられるわよ。
ジェノーバ:おほめにあずかり光栄です。そろそろ体力を使うお時間かと存
      じますが。
サンドラ:たまには他のことも考えてみたらどう?

 暗転。二人上手に退場。絞り緞帳上がる。