『彼女の行方』【第7話】
『誕生日』
4枚目の写真を手に都内のレストランを訪れた。
「懐かしいな」
TVドラマのロケ地として使われたフレンチのお店で、つきあって1年目、奈緒の誕生日に訪れた店だった。
門の中に入ると緑に囲まれた小道が続く。
木々の隙間に差し込む光がキラキラと輝いていてとてもきれいだった。
少し歩くと小さな丸い窓のあるおとぎ話に出てきそうな建物が見えてくる。
一人で食事をするようなところでもないのと
そもそも予約で席は埋まっていた。
預かり物がないことは
電話で確認はしていたが
いままで写真に写っている場所に
パズルが残されていたので
気になって来てしまった。
店内に入ると、まだオープンして間もない時間帯だったが、席はほぼ埋まっていた。
小さな丸い窓の近くの落ち着いた席にカップルが座っていた。
当時蓮たちが通された席だった。
どのプレートも綺麗に飾られた食材で、奈緒は目をキラキラさせていた。
デザートのケーキはシェフにオーダーしておいた特別なものだった。
「誕生日おめでとう」
と小さな箱を渡す。
「ありがとう。開けてもいい?」
「もちろん」
プレゼントは彼女が欲しがっていたティファニーのネックレス。
「蓮はずるい。レストランもケーキもプレゼントも・・・
もう、全部感動しちゃった。」
と、泣きそうな顔をしていたのを思い出した。
念のため、
奈緒の写真を見せて近日中に訪れていないか、
店員に確認してみた。
複数人が確認してくれたが見覚えがないということだった。
礼を言って表に出る。
今回は空振りなのか・・・
レストランの横に小さなケーキショップがあり、
もしかしたらと少しの望みをかけて扉を開ける。
ショーウィンドウには色とりどりのケーキや焼き菓子が、かわいらしくディスプレイされていた。
レストラン同様に写真を見せて確認する。
「あぁ、この方ならいらっしゃいましたよ。1週間前くらいだったかしら。」
「藤咲と言いますが、何か預かっているものはありませんか。」
「あります。あります。今お持ちいたしますね」
と店の奥に入って行った。
どうやら奈緒はレストランではなく、こちらに立ち寄ったようだった。
奥から店員がニコニコしながら戻って来る。
「こちらです。」
手に持っているのはカラフルなアルミはくで包まれた、6つの卵の入ったカゴだった。
ひとつを手に取り軽く振ってみるとカタカタと音がした。
「これ、もしかして中身はパズルですか?」
「あら、開けなくてもわかるんですか。
イースターの宝さがしに使うので、サプライズで渡したい。とご注文いただきました。」
袋に入ったイースターの卵を受け取り店を出る。
取りに来なければ連絡するように頼まれていたらしく、今回は間に合ったようだった。
家に戻ってチョコレートでできた6つの卵をそっと開ける。
蓮の予測ではパズルのピースは5枚のはずだったが、どうやら順番を間違えたようだ。
現時点の合計は16枚。
写真をもう一度並べ直してみることにした。
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