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『君の名は・・・』Vol.7

第6場a 街 夕方 サンホセの火祭り

 上手花道から、ルドルフとコルドバが歩いてくる。上手から下手に向かっ
 て祭りに行く人々が通り過ぎていく。

コルドバ:なぁルドルフ、お前さんずっとそうやって陰で見守っているつも
     りか?
ルドルフ:えっ?
コルドバ:レイラだよ。好きなんだろう?
ルドルフ:・・・・・
コルドバ:俺だったらとっとと手に入れちまって、自分のそばに置いとくけ
     どな。あんた達見てると時々じれったくなるよ。
ルドルフ:レイラは俺の気持ちは知らない。第一身分が違う。
コルドバ:身分が何だっていうんだ。
     過去に何があったか知らないが、この国じゃおてんとさんの下で
     は皆平等だぜ。

 ルドルフうなづく。遠くの明かり(下手客席あたり)に気づいて

ルドルフ:あれは?
コルドバ:サンホセの火祭りさ。あれを見ると春が来たなと思う。
ルドルフ:きれいだな。あいつにも見せてやりたいな。

 コルドバ苦笑する。

ルドルフ:何かおかしなこと言ったかな?
コルドバ:あんたは正直者だな。あんた達の間がどんなものなのか俺にはわ
     からんが、レイラのことを幸せにしてやれるのは、あんただけ
     じゃないのか。
ルドルフ:できることならそうしたい。しかし・・・(首を振る)

 レイラ、下手から歩いてくる。女の声が聞こえる。

女(声):どろぼう!誰かそいつを捕まえとくれ!!

 少年が手にパンを持って下手から走ってくる。少年振り返ったレイラと
 ぶつかる。女、追いかけてくる。

コルドバ:いくらだ?
女:えっ?
コルドバ:このパンはいくらか、と聞いているんだ。
女:50ペセタだよ。
レイラ:そりゃずいぶん高いな。
女:仕方ないさ。材料の小麦や卵がべらぼうに高くなったんだから。
  文句があるんだったら今の王様に言っとくれ。

 コルドバ、腰につけている皮の袋から50ペセタを出して女に渡す。

女:あんたが払ってくれるのかい。そりゃどうも。

 女、金を受け取る。少年に向かって

女:ホセ、二度とやるんじゃないよ。

 コルドバに軽くお辞儀をして下手に退場。コルドバ、少年の頭に手を置き

コルドバ:ボーズ、やるんならもっとうまくやれ。
ホセ:おじちゃん、ありがと。

 少年、上手に走り去る。

コルドバ:(ルドルフに)あの子の家では、お腹を空かせた弟や妹たちが
     待っているのさ。毎日具のないスープと固くなったパン。
     いつもひもじい思いをしている。
レイラ:そんなにひどいのか。
コルドバ:ああ。自分たちは贅沢三昧をしているのに、民衆に重税をかけ、
     おかげで物価が上がる一方さ。
     民衆は今の王に不満を抱き爆発寸前だ。
レイラ:いよいよだな・・・
コルドバ:何が?
レイラ:いや、別に・・・