ワタシのそばかす

ワタシには生まれつきそばかすがあります。
それも一部ではなく、顔全体に散りばめられたようにあります。
そのせいで幼い頃は、よく「顔に茶色のカスがついている」と馬鹿にされたこともありました。
だから大人になるまで、自分の顔についているそばかすが大っ嫌いでした。

ワタシのそばかすは母ゆずりで、母にも同じようにそばかすがあります。
物心ついた時には、顔中のそばかすが嫌で、母のことを無意味に恨んだこともありました。
「どうして、こんなそばかすだらけの顔で産んだの！」そう思ったことが何度もあったんです。

今でこそ、そばかすメイクというものまで存在していますが、ワタシには正直理解できませんでした。
このそばかすが好意的に受け取られたことがなかったから。

学生時代はそばかすにさらなる嫌悪感を抱き、顔に何もない人たちに強い憧れを抱くようになりました。
綺麗な顔にワタシのような茶色の点々は一つもなくて、化粧をすればより一層映えて見えていたんです。
彼女たちのことを羨ましく思い、あらゆる化粧品を使ってそばかすを消す努力をしました。
何層にも塗り固められた肌に多少なりとも満足感を覚え、そしてアプリの機能を使ってさらにそばかすを消す作業を行いました。

画面越しに映るまるで別人のような姿をした自分を見て、生まれ変わったような気分になれたんです。

鏡を見ればうっすら茶色の斑点が見えるけれど、画面越しには綺麗にさっぱり消えた姿で映し出される。
それだけでも十分嬉しかったんです。
彼女たちのように何もない綺麗な肌に生まれ変われたことが嬉しくて、何より自信に繋がっていたのだから。

幼い頃からずっと持ち続けたコンプレックスはそう簡単に消えることはなく、大人になってからはそばかすを消すことが当たり前になっていました。
ファンデーションやコンシーラを使い、ありとあらゆる方法で消すことだけに全力を注いでいました。

あの日までは・・・。

今のパートナーと出会う前まで、ワタシのそばかすを褒めてもらったことはもちろんありません。
それどころか、元彼たちには「そばかすがあるのって、ちょっとかわいそうだよね」と言われたことさえあります。
せめて好きな人だけでも「素敵だね」と言って欲しかったけれど、自分自身も嫌がっているのだから、相手もよく思わないのは当然かもしれません。
時には「俺、そばかすがある人と付き合ったの初めて。なんか最初ゴミがついているのかと思ったわ」と冗談半分で言われた時には、なんとも悲しい気持ちになったことを今でも覚えています。
だから余計に、そばかすに対して良いイメージがなかったんです。

ただ彼だけは違った言葉をかけてきたのです。
ある日、ふとワタシは鏡を見ながら「そばかすなんて全部無くなっちゃえば良いのに。かっこ悪いから嫌いなんだよね」と言いました。
すると彼は鏡の前までやってきて、「僕はそばかすはとっても素敵だと思うよ。納言ちゃんの雰囲気にもあってるし、むしろチャームポイントだよ。僕はそのそばかす含めて素敵だなって思っていたよ」と言ったのです。

そんなことを言われたのは人生で初めてだったので、どう返事をして良いのか分からず戸惑ったことを今でも覚えています。
きっと彼自身、常日頃からワタシがそばかすに嫌悪感を抱いていたことに気づいていたのでしょう。

だからこそ、「コンプレックスではなく、チャームポイントなんだ」と伝えてくれたのかもしれません。
幼い頃からの根強い嫌悪感が一気に軽くなったような気がしました。
ワタシは少し照れながら、「本当に変じゃない？」と聞き返すと、「もちろんだよ！自分の持っているものは全て神様から与えられたギフトなんだよ。だから自信を持ってね」と言ったのです。

受け入れるまでに時間はかかりましたが、あの言葉以降、変にコンプレックスとして捉えることはなくなり、むしろ一つのチャームポイントとしてそばかすを受け入れられるようになった気がします。

思い返せば、小さい頃は母と同じそばかすがあることが嬉しくて、母によく「一緒のそばかすがあるね」と話していました。

誰しもコンプレックスの一つや二つあって、それが根強く今もなお残り続けているものがあるかもしれません。
他人と比べれば、自分のいいところよりも悪いところ、優しいところよりも劣っているところにばかり目にいってしまうこともあるでしょう。

ただ一つだけ言えることは、自分自身が受け継いだものはきっと何かしらの意味を持って与えられていると思うのです。

他人と比べるのではなく、自分自身にしかないものを大切に、そして誇りを持ってほしいと思います。

それぞれにしかない素敵なギフトを、どうか手放さないでください。
その贈り物は、きっとあなたが輝けるために必要なものだと思うから。