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大きな木の下、雨宿り

車に乗っている時、突然雨が降ってきました。
ワイパーを少しだけ早めにしながら運転していると、通りがけに大きな木を見つけたんです。
まるでジブリに出てくるような大きな木。
一瞬で通り過ぎてしまったのに、運転をしながらしばらくの間、その木のことをぼーっと考えていました。

その木はどことなく、子どもたちと一緒に雨宿りをした木に似ていたからかもしれません。

昔働いていた保育園の園庭は、他の園よりも少しだけ広くてあらゆるところに木が生えていました。
中にはものすごく大きな木もあって、夏になれば虫取りアミとカゴを持って、子どもたちとセミ探しを真剣にした覚えがあります。

ある時、園庭で遊んでいるとポツポツと雨が降ってきました。
通り雨だったのか、晴れているのに雨が降っている現象に子どもたちは大はしゃぎしながら「なごんせんせい!このままおそとにいたらダメなの?」と聞かれたんです。
ワタシは少しだけ「うーん」と考えて、こう尋ねました。

「確かに不思議な天気だし、お外にいたいよね・・・。でも、そのまま遊んでると、雨でお洋服も濡れちゃうよ?」

「うーん。ぬれるのはやだなぁ」

「ねえ、それならあのおおきなきのしたにかくれればいいんだ!」

「そうだね!そしたらあめからにげれるかもしれない!」

「確かにあの木なら雨宿りができるかも!それじゃあ、他のお友だちにも木の下で雨宿りすることを伝えてきてくれる?」

「うん!わかったよ!」

「ねー!みんなぁ!このきのしたにきたらぬれないから、こっちにおいでよー!」

近くにいた数人の子たちが園庭で遊んでいる子たちに声をかけに行くと皆が走って木の下に集まってきました。
それほど強い雨ではなかったので、木の下は屋根の代わりみたいに私たちを守ってくれました。
普段雨の日には外で遊ぶこともできなかったので、特別感があって余計に嬉しかったのかもしれません。
子どもたちは木の下から少し出てみたり、雨にちょっとだけ当たって逃げてみたり、それぞれの遊びを見つけ始めました。

「せんせい、あめはいつやむのかな?」

「どうだろう。もう少しかかるかもしれないね」

「そっか!ならまだきのしたであそべるね」

「そうだね。雨の日にお外に出ることってないもんね。こんな時は雨宿りを楽しもうか!」そう言って、子どもたちと一緒になって雨自体を遊びの一つにしながら楽しむことにしました。


「ねえ!みて!あそこ!にじがでてるよ!!!!」

その声に木の下にいた全員が外に飛び出して、うっすらと空にかかる虹を探し、見つけた時には嬉しくて子どもたちと一緒に虹の行方を見つめていました。

あれからもう随分と時間が経っているはずなのに、雨の日に大きな木を見つけるとあの時の思い出がつい昨日のことのように思い出されます。
何度も雨を経験して、虹だって見たことがあるのに、あの時の景色は特別だったんです。

子どもたちと雨宿りした時間も、虹を見つけた時の気持ちも。

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