ネコを探して、30分
今の働いてる職場には、部屋中に大きな窓があり、外から見えないようにすりガラスになっています。
けれども、すりガラスの隙間みたいなところからちょうど外の景色が見えるようになっているんです。
園舎がマンションの一角にあるため、隣は駐車場、そして目線を上げると大きな家が一つ、二つと建ち並んでいます。
その一つ目の家には、たった一回だけ猫が窓から顔を出してこちらを見ていたことがあったそうです。
その姿を発見した子どもたちは、必死に「ネコしゃん、ネコしゃん!!」と教えてくれたのです。
しかしワタシは、その幻のネコと出会えたことが一度もありません。
子どもたちに「しぇんしぇい!ネコしゃんみたい」と言われて探しても、一度も発見できていないんです。
(本当に窓ガラス越しに猫がいたのかなぁ)と思っていても、必死にすりガラスの隙間からネコを見つけようとする子どもたちの気持ちを疑うこともできず、今では毎日のように猫を探すようになっています。
そして見つからないたびに、子どもたちはすごく残念そうな顔をしながら「ネコしゃん、いないねぇ・・・」と本当に悲しそうに、今にも泣きそうな顔をしながらすりガラスの隙間をのぞいているのです。
ワタシもなんとかして、子どもたちと一緒に猫を見つけたい!
そして一緒に発見できた時の喜びを味わいたいと思ってもう半年が経ってしまいました。
その間、猫を見つけられたことは一度もないのです。
だから毎日のように、30分ほど猫をあらゆる場所から探すのが日課となっています。
一生懸命探して、探して、探し続けて、結局「見つからないねぇ・・・」と話すことも、また日課となってしまっています。
姿を現したたった一度きりのことを、子どもたちはいまだに覚えていて、時折「ネコしゃんいたんだよ」と話してくれることもあります。
保育士になってから、これほどまでに猫が現れてくれることを望んだことはありません。笑
そして大の大人が子どもたちと一緒にほぼ寝っ転がっているような体勢をとりながら、探すようなこともなかなかないでしょう。
それほどまでに、ワタシも、子どもたちも猫探しに必死になっているのです。
姿を現さない幻の猫を探す日々は、これからも続いていきそうです。
その度に、みんなで「いないねぇ」なんていいながら、また明日も、その次の日も探し続けるのでしょう。
子どもたちがこの園を卒園するまでには、一度くらい一緒に幻の猫を見つけてみたいものです。
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