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弘田しずえインタビュー シノドスの目的と、その経緯、意義
ひろた・しずえ●ベリス・メルセス宣教修道女会会員、タリタ・クム日本運営委員長、カトリック正義と平和協議会専門委員。
シノドスの目的――教会の宣教使命を果たす
教皇フランシスコは第二バチカン公会議が示した教会のビジョンを現実化するためにシノドスを始めました。教皇は、シノダリティとは、「教会の人々が互いに学び、耳を傾け、福音を宣べ伝える責任を共有するやり方」と述べました。シノダリティーは教会の生活と使命に神の民全体が関わり、参加することを意味します。ここがシノドスの一番大切な事です。それは教会の本質、教会を構成する現実そのものを指し、それゆえ、宣教使命に向けられています。そういう意味の教会が、今日の世の中に対する預言的な模範を示していけるかということだと思います。
その意味でシノドスは第二バチカン公会議のダイナミックな復活であるということが言えます。第二バチカン公会議は二〇二一年から二〇二四年のシノドス(司教会議)の確固たる基盤です。そこで重要なことは、神の民全員としての教会ということと、洗礼を受けた人全員がその尊厳をフルに生きるということです。
そして全世界一三億人へ意見聴取をすることを目標に掲げました。実際それは無理でしたが、ともかく、まとめられた文書は始まりにすぎません。シノドスの第二会期は終わりましたが、むしろ始まりはこれからで、これからが大事です。
「このシノドスの目的は、さらに多くの文書を作成することではないことは明らかです。むしろ、わたしたちが招かれている教会についての夢を人々に抱かせ、希望を花開かせ、信頼を刺激し、傷口をふさぎ、新しく深い関係を紡ぎ、互いに学び合い、橋を架け、共通の使命のために精神を照らし、心を温め、手に力を取り戻すことを目的としています(『準備文書32』)
その結果、全世界一一四の司教協議会のうち、一一二カ所から返事がきました。バチカン二三部署のうち一七部署からもです(シノドスに賛成していない部署があることが見て取れます)。それから男子女子修道会総長連盟からも返事が来ました。特に女子修道会総長連盟では、「シノドスと奉献生活」というテーマで一人の聖心会のシスターが担当者としてオンラインのプログラムを提供するなど、とても活発な動きをしています。意見聴取の段階では、カトリック組織の様々なネットワークが、特にデジタルシノドスとして二〇〇〇万人参加したということです。教会に行っていない人、信者ではない人も含まれているといいます。
回答文書のまとめ
そして回答が、大陸ステージのための作業文書『あなたの天幕に場所を広く取りなさい』にまとめられました。これは本当に素晴らしいものです。端的に言ってここに何が書かれているかというと、教会の中で排除されている人がいるということです。中でも、女性です。女性が文化に関係なく、あらゆるところで「神の民として洗礼を受けた女性たちが神の民として評価されなければならない!」と叫んでいます。女性参加、ということです。
そのためには新しい実践、仕組み、新しい文化を確立することが必要だということが言われました。考え、態度を変えるだけではなく、どのような機構、あり方となるかが重要です。これは性的虐待の問題についても言われていることです。これからそういうことがないようにするためにどのような仕組みを作るか、です。
それから次に、教会から排除されている人として、聖体拝領ができない再婚した離婚者、シングル・マザー、一夫多妻制の結婚生活を送っている人々、LGBTQA+の人々などの苦しみ、悲しみ、叫びがあがっています。
教会は完全な人のための場所ではなく、傷つき傷つけられた人々のための避難所であることが求められています。教会が、人々を裁かずに、共に歩み、優越感ではなく、気遣いと誠実さを通して真の関係を築くことが望まれているのです。「最貧困層、孤独な高齢者、先住民族、不安定な生活を送る居場所のない移住者、ストリートチルドレン、アルコール中毒者や薬物中毒者、犯罪の手に落ちた人々、売春が唯一の生きるチャンスである人々、人身売買の被害者、(教会内外で)虐待の生存者、受刑者、人種、民族、ジェンダー、文化、セクシュアリティに基づく差別や暴力に苦しむグループなど」とこの回答文書は述べています。
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