宿業が取消料を取る苦悩と実験
宿業務に取消はつきもの。14年の営業を経て、取消料金について、今新たに実験を始めた。
1166バックパッカーズの取消規定
キャンセルポリシーは各宿で定めている。1166バックパッカーズの場合はここ数年は以下(booking,comはOTA独自のあれこれがあって、少し変動したりもするが基本設定は同じ)。
取消料金支払いに抵抗したいゲストの気持ち
お客さん立場で考えた時に "泊まっていない"(飲食店であれば "食べていない" 、交通機関であれば "乗っていない" )にも関わらず料金を支払う、というのに争いたい気持ちもわかる。しかも、それが閑散期であったりなんかすると「どうせ空いてるんでしょ」とか、逆に繁忙期には「どうせ埋まるでしょ」とか、直前予約だったりすると「ちょっと前に予約したばっかりなんだから、いいでしょ」という気持ちが働くのもちょっとわかる。
取消料金支払っていただきたい店の気持ち
私だってお客さんになることもあるので、争いたい気持ちはよくわかるんだけれど、店側の立場になるとそうも言ってはいられない。予約が成立した段階で契約は結ばれ、その人のためにベッドをキープする。取消に至るまでに、あったかもしれない再販の機会はなくなる。「閑散期はどうせ空いてるでしょ」、と言われてもそればかりはわからない。もしかしたらその人の予約だけだったりして、「あぁ、この予約入ってないんだったら休館にしてたのに…」と思うかもしれない。「繁忙期だからどうせ埋まるでしょ」と言われても、そういう時期は連泊ゲストで部屋割りがパズルのようになっているので再度その前後数日の部屋割りをやり直すことになる。取消になった場合にPMSに入れていた予約情報を削除して、SNSやら使ってまだ見ぬ誰かに再予約を促すという労力も発生している。直前予約の取消でも同様。いつだって仕事は単純ではない。
まず取消を減らす努力をする
1166バックパッカーズは3ヶ月前まで予約を取らない。それは "とりあえずの予約" = "ぎりぎりで取消したらいいか" という考えの人を避けるため。
そして顧客との関係を事前にしっかりと作る作業も取消を減らすのに貢献すると思う。予約完了したら予約内容を入れたメールを即時通知する。3日前にリマインダーを送る。当日は日中の荷物預かりの必要性がないかも確認。その他にもゲストに応じ、高速バスで早朝に着くゲストには駅前の朝食処を案内したり、各観光地へのアクセスや雪の状況を連絡する。チェックイン前から「この宿は安心して泊まれそうだ」と思っていただく必要がある。
恐怖のノーショー
"ノーショー"、という言葉をご存じだろうか。これは予約をした人が取消ル連絡もないまま、現れないことを言う業界用語だ(ちなみに、"ゴーショー" というのもあり、これは予約なしで現れる "ウォークイン" と同義の言葉)。
ノーショーは本当に心が折れる。うちの場合は最終チェックインの夜9時になっても現れない場合は電話やメッセージを送る。その際に気をつけているのが、「どこにいるんですか、早くきてください!」ではなく、「まだ来られていないから心配しています。迷ってないですか?」と言うスタンスでコンタクトを取ること。本当に迷っているパターンもあるので、そっちに合わせる。しかもごく稀にこちらが予約の日付を間違っているパターンもある。
連絡をしてもスルーされることがある。そうなると、来るか来ないかわからないゲストを夜中通じて待ち続けるのだ。ないにこしたことはないが、年に数回ある。スタッフは風呂に入るにも玄関のチャイムの受信機を脱衣所に持ち込み、寝る際も枕元に置く。こう言った眠れぬ夜を過ごしているゲストハウスは多いと思う…
実際にキャンセルがあった場合の対応
OTA経由が多い海外ゲスト場合は事前決済にしているのでもはや取りっぱぐれることはほぼなくなった(未だ値引き交渉されることは多い)。一方で日本人ゲストは基本的に取消料金を問題なく払ってくださることが多い。「都合で取消すことになりました。すみませんが取消料金の支払い方法を教えてください」なんて丁寧におっしゃってくださる方がほとんど。めっちゃいいひと。ありがとう。「今回は取消料金はいいですよ」と喉元まで出たくなるんだけれど、そう言ってると宿は潰れてしまう。
ということで、ここからが本題。そういう "めっちゃいいひと" に取料金を支払っていただくなかで、どう感謝の気持ちを伝えるかに悩んでいた。取消したことに後ろめたさを感じて、次の機会に選んでもらえないかもしれない。めっちゃいいひとなのに…。
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