2021/10/6 門出
ベランダ菜園のブロッコリーの葉っぱがたったひと晩でボロボロになっていた。びっくりしてベランダへ飛び出し、よく見てみると青虫がはりきって生きていた。まさかこんなところに青虫が来るなんてと思ったけど、思い出してみると何日も前、チョウチョがブロッコリーの周りをひらひらしていた。あれの子か。かわいいな。
葉っぱはほとんど食い散らかされている。一晩でこんなに食べるの?しかし青虫くんあのね、このベランダには栄養状態のよくないヒョロヒョロのブロッコリーが二本あるのみ。食料が尽きたらどうするんだ。母親もその辺もっと考えて産むべきだったよ。
きみの食べっぷりからするに食料は持ってあと二日。葉っぱがなくなればブロッコリーは光合成ができずにじき枯れる。そうするときみの住処も危うい。あとね、考え事を増やされても私こまるんだ。今朝、図書カードを拾ったから交番へ届けに行かなきゃならないのだけど、中身が入っていなかったら持って行っても仕方がないと思って残高見たら90円だった。0円ならよかったのに90円入っているから交番へ持って行かなきゃならない。あそこの交番はいつも誰もいないから何度か行かなきゃならない。
今日はこまごました用事が多いなと思いながらベランダのブロッコリーを見やると、青虫が脱走を試みているところだった。まだいくらかは食べる部分があるのに、どこへ行くのだろう。新しい住処を捜しに旅立つのかな。ボロボロのブロッコリーが少し可哀そうに思えた。シェル・シルヴァスタイン『おおきな木』の一節が浮かぶ。『それでも木は幸せだった。』そうか、ブロッコリーは幸せか。だけど青虫くん、きみが老いて、このブロッコリーの元へ再び戻ってきたとしても、ブロッコリーは燃えるゴミで捨てられて、もういないからね。残念ながらあの本のラストのようにはならない。ボンボヤージュ、青虫くん。