バーチャルさんは見ていた3 ~そもそもVtuberとは金がかかるもの~
よし、この前の記事で大よそVtuberがある時期に急激にバズったことは理解してもらえたと思う。
もっともなぜ「突然Vtuberブームが訪れたのか」に関しては正確な分析が難しいんだ。
というのもまずニコニコ動画で輝夜月が『首絞めハム太郎』として話題になったのがきっかけで、そこから連鎖的にミライアカリ、電脳少女シロにも注目が集まっていき、ほぼ1~2週間で起きたバブルだったからね。
参考:大体の爆心地
ダンス首絞めダンス https://nico.ms/sm32485786?ref=twitter_ss #sm32485786 #ニコニコ動画
軍用シロイルカ:サイコ発言集 https://nico.ms/sm32487865?ref=twitter_ss #sm32487865 #ニコニコ動画
この前の「チャンネル登録者数の推移」からもわかるように、こうした動画がバズる以前のVtuberはキズナアイ以外ほとんど注目されていない状態だったんだ。
ミライアカリが健闘してはいたけれど、それには彼女の生みの親である「エイレーン」の貢献が大きかったし、あくまで特殊なケースだろう。
しかし、実はこのあまり注目されていなかった時期に彼女たち(アカリ、シロ、富士葵、ときのそら)がやっていた活動は、現在いたるまですべてのVtuberの指針になっているのも間違いない。
今回はその話だよ。
まず現在活動しているVtuberの主な活動というものをここで整理してみよう。
1.生放送
30分~1時間程度の枠で視聴者のコメントを読みながら雑談をしたり、企画、ゲームプレイなどをする。
2.ゲーム実況動画
ネットゲーム、または家庭用ゲーム、アプリなどをプレイし、その様子を動画にする。
3.企画
「作ってみた」、「やってみた」、「調べてみた」など、Vtuberがやったことを動画にする。アーティスト系のVtuberもこれに該当する。
4.歌動画
「歌ってみた」ともいう。ゲーム、アニメの曲から米津玄師まで色々なジャンルを歌いう。他と比べても重要なので3ではなくここに分類。
5.単発ネタ
コントや漫才。ショートショートなど。
たぶん、というか、キミたちが見ているVtuberの活動は以上のどれか、または1の中で、2~5のどれかを行うというものがほとんどだろう。複数のVtuberが参加する「コラボ」というものあるけれど、やっていることはあまり変わりがない。
こうして見るとそもそもVtuberのやれることは案外少ないことがわかる。
ここから。
・リアルのライブ、イベント
にいく人もいるけれど、こちらはごく少数だといっていい。
とくに新人Vtuberの場合、どうしてもまずは先輩たちがやっていたことと同じようなことしていくことになる。
そして厄介なのはここだけれど、こうした試みのほとんどはすでにこのVtuberブーム以前に活動していた先駆者たちがやり尽くしてしまっている。
これがVtuberが今後発展していくかを考える上でも重要になる点だけれど
・現在はもう「新規性」というものを新しく打ち出すのは難しいといえる程度には、やれることは誰かがやっている状況
なんだ。
もちろん、この状況を覆すことができるアイデアを持つ人間が出てこないとは限らないし、それは期待したいところだけれど、以前電脳少女シロがマツコ・デラックスの番組に出演したときに相談していたように電脳空間ではやれることが案外少ないらしいんだ。
そのせいで最近は3D化しても、それを活用する機会があまりないVtuberも多い。ゲーム実況や雑談をするのにわざわざ3Dのいいモデルを使う必要はないからね。
たぶんこれも「Vtuberが当初意図していたものとは違うものになっていった」からだとは思うんだけど、これも話を進めていくうちにわかると思うから、今は触れない方がいいだろう。
では、もう一度Vtuberバブル前後の時代に話を戻すけれど、当時から活動して、このバブルの時期に人気が出たVtuberにはいくつか共通点がある。
まず。
・企業のバックアップ体制が充実して複数のスタッフがついていたこと
そして
・モデル、設備など、3Dで活動することを前提にかなり高額な投資が行われていたという
という点だ。
ひとことでいえばもともと。
・「企画としてのVtuberはお金がかかるもの」
だったんだ。まして当時はVtuberそのものが少なく、3Dモデルの出来が今以上に厳しく評価されていたから、富士葵が外見をネタにされたりしていた(「見た目以外はいい」)のもそれが大きかったのはあると思うよ。
もちろん、あまりお金をかけない個人勢でがんばっていた人もいるんだけれど(のじゃおじとかね)そこは割愛しよう。話が際限なく広がってしまうからね。
次に、お金がかかるといってもシロやミライアカリのようなVtuberをやるには、実際どの程度の資金が必要かというのを考えてみよう。
幸い、これに関してはいくつかのヒントになる数字がある。
まず、ミライアカリの生みの親である「エイレーン」が、ミライアカリ(ミライアカリプロジェクト)を開始するために用意した資金が「6000万円」だったという話(本人談)。
ときのそらのの運営会社が「AR対応のバーチャルライブ配信サービス」(ときのそらが生放送してる空間だね)を開始するために調達した資金が「3000万円」であったということ。
参考:https://www.moguravr.com/cover-ar-live/
https://www.moguravr.com/cover-vtuber-fd/
そして富士葵が新しい3Dモデルを用意するためにクラウドファンディングで集めた資金の目標額が「1000万円」だったという点だ。
まず富士葵の場合、彼女自身はもともと3Dで活動していたことから、1000万円というのはほとんどがモデル単独(デザイン、モデルの製作費)にかかる資金だったと考えることができる。他にも回している可能性はあるけれど、そこはわからないし。
次にときのそらの場合、これはシステムの開発と、モデルの開発を含めての金額だろうから、企業のプロジェクト運営の一環と見るべきだろうね。
そしてミライアカリの場合、エイレーンは運営に必要なスタッフの募集も同時に行っていたから、ミライアカリのモデルが非常に出来のいいことを考えても、システムや機材、人件費なども含んでの6000万円ということになる。
これらのことから。
・スタッフを集め、企業を立ち上げる場合なら6000万円程度
・事業として参入しシステムを作るには3000万円程度
・いいモデルを作るには1000万円程度
という推測ができる。
シロや輝夜月のところはよくわからないけれど、いずれにせよ彼女たちは「企業、集団のプロジェクトであり、活動するためには複数人のスタッフが必要とされていた」というのは間違いない。
今でこそVtuberはひとつのジャンルとなり、収益が話題になることもあるけれど、これを最初に手掛けようと思った人たちはかなりリスクを背負っていたのは間違いない。
そのおかげで、今見ても彼女たち(シロ、アカリ、ときのそら、富士葵)が当時(2018年の1月前後)に投稿していた動画や生放送を非常に質の高いものが多い。
まあ、当たり前といえばそうなんだけれど、企業がしっかりバックアップしている分、一本あたりの動画の編集や生放送で現場に参加するスタッフも力が入っていたろうから。
これがVtuberの多くが今後厳しくなる次の理由。
それはもうシロやアカリたちほど、しっかりしたバックアップが受けられるVtuberは今後あまり出てこないだろう、ということなんだ。
ここまでの話でわかるように、一人のVtuberにたくさんのスタッフが関わり、多額の予算が投入されるのは、企業側からすれば一定の成果が上がらない限り効率が悪い。
去年、かなり人気のあるVtuberが運営と揉めて話題になっていたけれど、その理由の一端もおそらくはここにあったと思うよ。
一人に多くのリソースが割かれれば、企業も一定の見返りを活動に求めるようになるわけだから。
こういうタイプを仮に「勝負型」としようか。
そうすると、今成功しているVtuberとしてはキズナアイ、ミライアカリ、電脳少女シロ、猫宮ひなた、富士葵、道明寺ここあ、Yuni、田中ヒメ・鈴木ヒナ、ピンキーポップヘップバーンがこれに当たる。
彼女たちは最初から3Dモデルが用意されていたし、おそらくは「たましい」(中の人)の選考もかなり厳重に行われていたはずだ。
キズナアイ、アカリ、シロ、ひなた、ヒメヒナ、ピンキーの演技力は間違いなくプロのそれだし、葵やここあ、Yuniの歌唱力も非常に高い。
ようするにエリートだね。
もしVtuberがこうした路線(モデルも中の人もプロで、運営のバックアップ)だけだったとしたら、おそらく今ほど彼女たちが身近な存在にはならなかっろうたし、また数がも増えることなかった。
「大体みんなが同じようなことをやる」のなら企画力のある、きちんとしたスタッフがついている方が有利なのも当たり前だからね。
実際、今じわじわとVtube界r全体に効いてきているのがこの「最初から資金と時間をかけて用意されたVtuberには新人勢の多くが勝てない」という問題なんだけれど、これは今後。
・所属するVtuberの事務所、企業によって待遇に大きな差が出る
という方向で可視化されていく可能性が高いだろうと思うん。
さて、今日はここまでにしよう。
次回は・・・そろそろあの人の話をしないといけないんだろうね。ここまでがエリートの話だとしたら、彼女は間違いなく雑草のそれなんだけれど。それではまた。
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