Ain't It Fun
現実の足音が少しずつ聞こえてくる。緊急事態宣言が明け、休業中だったお仕事も徐々に通常運転に戻りそうだ。働くのが嬉しい、というのは私にとっては「特殊」な感情で、それはそれで一瞬ですぎさってしまうものだから、嚙み締めつつ大事にしようと思う。人生ないものねだりが常なんだ。
そんなこんなで、来る10月は当社比ですこし忙しい。(もう一回言う、当社比で)そして、不思議に思うのだが、10月の日付は31日あるにもかかわらず予定は同じような日に集まる。おかげでかぼちゃ収穫のお手伝いを経たその足で、家族へのお土産の美味しいお菓子を駅で受け取り、札幌へ向かわなければいけない。し、仕事も丁寧に文フリの翌日にはいるんだから、まるでとんぼ。さらにその翌日はワクチン接種というイベント目白押しなのである。そこからまた続く労働の日々。しかしそれはそれで楽しみではあるな、と思う。
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なので、ぼんやりとした何もないこの日々ともさらばである。非現実よりさらに非現実な一年半程度。このコロナ禍で思い切った何かができるわけではなかったけれども、そこそこ欲望に忠実に生きてみた。
好きなだけ一本道を歩いてみたり、好きなだけ惰眠をむさぼり夢見てみたり、好きなだけ文字を読んでみたり。そして思索を書き連ねて、あるいは過去をほりあさってインターネットに放ってみたり。
やってることは結構地味だな、と思うが、非現実感は十分にあった。この生活はいったい何に支えられているのだろう、とふと考えてしまうからである。答えは明確にあって「休むことでもらえる休業補償金」なのだが、労働によりお金がもらえる現実世界では、どうもその理論は「感覚的に」しっくりこない。まぁどっちにしろコロナがいなくなれば、こんな生活もなくなるのでいずれにしろ非現実だ。
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さて、きっと私はそんな非現実から、現実の世界に戻るためのBGMとして「Ain't It Fun」を重宝するだろう。アメリカのロックバンド、Paramoreの代表曲の一つである。
社会人になりたての時に「自分が想像していた労働、社会」とのギャップに苦しんだ時によく聞いていてた。
曲の解釈は数多だとは思うが、私は「自立」の曲だと思っていて、要約するとこんな感じになると思う。
「親の庇護の下で欲しいものをなんでも手に入れてきたけど、社会に出たら思うようにはいかないし、全部自分でやらなきゃいけない。でもそんなリアルな世界で生きるって楽しいよね?」
自炊も、掃除も、労働も、全部自分でやって自分で生きていくこと。
素直にうなずけないほど心がすさんだ時もあったけど、確かにそれは楽しいことだ。
Ain't it fun Living in the real world
(楽しいでしょ?リアルな世界で生きていくのって)
Ain't it good being all alone
(楽しいでしょ?ひとりで生きていくのって)
Ain't it good to be on your own
(楽しいでしょ?あなたのまま生きていくって)
以上サビの歌詞の抜粋である。私はこの曲を聞いて現実世界の楽しさを思い出すのだ。そして少なからず非現実なたったひとりの世界で、「自分らしさ」を再確認できたそのことも忘れないで。とにもかくにも現実の足音が空耳でないことを願う今日この頃。