アカウントが消えても、思い出は心の中に (妄想と現実をうろうろする女)
先日、 noteとは別のブログのアカウントを削除しました。やっとさよならできました。いまはとても心が軽く、清々しい気持ちです。
◇
わたし、ひそかに心を寄せていたひとがいました。それはネットの世界で知り合ったひと。毎日一言ずつの何気ないやりとりに笑って、癒されて、お互いを気遣って。かわいい年下の友達だったけれど、ほんとは好きだったの。
でもリアルの生活を大切にしたいと、わたしの前からあぶくのように消えてしまいました。「ありがとう、元気でいよう」と言葉を残して。
意志の強いひと。再び戻ってくることはないとわかっていたのですが、わたしは悲しくて、寂しくて、ずっとメソメソして。ネットの世界のことなのに何をしていても涙が出てきて、自分でもどうしちゃったんだろうってくらいに弱っていました。
そして、そのひとと繋がっていたブログが、わたしにとって唯一残った宝物。毎日のようにログインしては、アクセスがないのを確認して泣く日々でした。
次第に、辛いことがあると「たすけて」と無意識にそのひとの名前を呼んでしまうほどで、わたしにとって神様みたいな存在になっていました。
このままじゃよくないと、自分の気持ちに蓋をして、楽しかった思い出も、さみしさも、スクショしたデータもひとつずつ消去しながら、心の中にしまっていきました。そうしていつか自分の気持ちが落ち着いたときに、ブログを消そうと考えるようになりました。たとえ何年かかってもいいから、と。
そんな自分と向き合ってもうすぐ2年。
いまは月に1、2度、ただログインするだけ。ずいぶん気持ちも穏やかになって、時々「元気にしているかな」と思うくらいです。会いたいとか、そういう気持ちもなくて。
ただただ、幸せでいてほしいと思っています。
◇
そしてとうとうその日が来ました。
先日、noteを始めたばかりの頃に書いた記事にスキをいただきました。それは好きなひとへ向けたラブレターで、とても長く、読みにくい記事です。noteの海の深いところに沈んでいました。
思いがけないスキのお知らせが届いた時に、ふっと心が軽くなったんです。
あの時の苦しかった思いが、甦ったと同時にふわふわと昇華していく感じがしました。おかしな表現だけど、わたしの思いが成仏して空に消えていく感覚。なんというか、もう大丈夫だよ、と肩をそっと抱かれた気がしました。
その瞬間「ああ、今ならブログを削除できそう」と思いました。そしてすぐにブログにログインして、退会手続きのページを開きました。
急げ、急げ。
でも、こういうサイトはすぐに退会できないのですね。「今後同じアカウントは使用できません」とか「データは全て消えて戻りません」それと、あとひとつは何だったっけ、とにかく最後の意思確認のチェック項目がありました。
ああん、ここで考え始めると、また気持ちがずるずるしちゃう。内容の確認もそこそこにぽち、ぽち、ぽち。ひとつひとつチェックしていきます。
そして最後に「退会する」のボタンにカーソルを合わせて、ふうーっと息を吐いて。
押したら、すべてが消えるの。ここまで来たら勢いよくいこう。
えいっ。
退会完了の四文字を見て「終わってしまった」という喪失感よりも、「ここまで長かった…」という気持ちが大きかったです。へなへなと力が抜けました。(写真を撮る余裕はありました)
◇
アカウントが消えても、自分の中でとくに変わったことはありません。ただ、ログインページを開くという行為をしなくなっただけです。
それに後悔することもなくて、データが消えて悲しいとか、もったいないことをしたとか思うこともなくて。
退会した次の日。外回りでママチャリに乗りながら、ブログのことや好きなひとのことをあれこれ考えました。
—ああ、とうとう消しちゃった。でも全然悲しくなくて、むしろすっきりした気分。
そういえば、あんなこと、こんなことあったよな。大事な言葉をたくさんもらったなあ。いっぱい笑ったなあ…。
楽しかったやりとりを思い出して、ふふふと笑いました。
そうか。
もうこの目に見えるものは何もないけれど、思い出は消えない。
今もこうして心の中に残っているから、寂しくなんかない。わたし、もう大丈夫。
いつか、記憶は砂のように手のひらからこぼれ落ちるかもしれないけれど、それでもしっかり握りしめて、ずっと心の奥にしまっておこう。
ねえ、元気にしてる? いま幸せ? わたしは相変わらずぼんやりしているけど、元気だよー。
自分の中で何かが少し変わったような、新しい風が吹いたような気がしました。
もっと速く。追い風が吹いてきて、ついついママチャリを立ち漕ぎ。するとあっという間に身体がほてってきました。
心も体もあつくなるのは、あの子のことを思ったからじゃない。
きっと、季節外れの強い日差しと、このダウンジャケットのせい。
◇ ◇ ◇
この恋、ようやく一区切りつきました。これまでずっとずーっと温かく見守ってくださり、ありがとうございました。
「かわいいあのこ。」完結です(たぶん)。きっかけをくださった方々には、心から感謝いたします。