奥さま、ジェダイの騎士になる
先日、主人が紺色のコートを買ってくれました。ちょっと早いクリスマスプレゼントです。
わたしはお洒落にあまり興味がなく、いつも着るのは黒か紺もしくは白の服ばかり、シンプルなものです。
主人は洋服が好きで、こだわりがあります。ファッション関連のポッドキャストを聴いて気になるものを調べては、あーでもないこーでもないと言っています。
このコートは「いいよ!絶対おりちゃに似合う。」と選んでくれました。そして「このコート、メンズもあったら俺、絶対買うんだけどなあ。」とも言っていました。
コートが届きました。
肌触りもよくて、きれいなコートです。オーバーサイズでゆるっとしていて、肩のラインがまあるい。襟はなく、ボタンは前からは見えないデザインになっています。
ベルトは外側に出しても、内側に隠してもいいようになっていて、アレンジができます。カジュアルにも、きれいめにもなりそう。裾は少し広がっていて、着るとふんわり広がります。余計なものが付いていなくて、ゆるゆる、たぽっとした着心地が気に入りました。
もちろん仕事でも使える。でも、ママチャリに乗るのはなんだかもったいないなぁ。
このコートを着て、どこへ行こうか。
そうだなぁ、落ち葉の公園をお散歩デートしたい。
ん? 隣にいるのは、だぁれ?
かわいいあの子かな・・・
一緒に野球観戦したいね。「おりちゃ、今のホームラン見てなかったでしょ!」って大笑いしながら。
それともあの子かな・・・
手を繋いで、イルミネーションを見たいな。そして「おりちゃ、おいしいお店見つけたんだ。行く?」って。
あれこれ妄想します。笑
で、その日の夜のこと。
久しぶりに、リビングでファッションショーをしました。我が家では新しい洋服を購入すると、必ず発表会をします。
この前は主人。今日はわたしの番です。
さっそくコートを着てみます。主人はワインを飲んですっかりご機嫌です。大きな声がリビングに響きます。
「うん、やっぱり似合う!」
もともと主人が欲しかったコート。わたしを見ながらとっても羨ましそうな顔をします。
「いいなあ。」
なんだか申し訳なく思えてきます。わたしは聞きました。
「どうしてそんなに、このコートがいいの?」
すると、笑いながら主人は言いました。
「だって、ジュダイみたいじゃん?」
ふぇっ? じゅだい?
「そうだ!!おりちゃ、ちょっと2階から掃除機持ってきて!!!」
えっと、意味がさっぱり分かりません。
わたしは、言われた通りにハンディ掃除機を取りに行き、リビングへ戻りました。すると主人はおもむろに掃除機の吸い取る部分を外しました。
「はい、これ持って!」
新調した紺色のコートを着て、真っ白な掃除機の棒の部分を持つわたし。そして、隣には赤ら顔の主人。
「おおお!いいね。ジュダイみたい!」
わかった。
主人が言いたいのはスター・ウォーズの「ジェダイ」だ。
あの主人公に違いない。確かに、ジェダイの騎士が着ているジャケットっぽいかも。
主人は時々、言い間違いをします。それもなぜかスピルバーグ監督の映画作品ばかり。
ジェダイは、ジュダイ。
ジュラシック・パークは、ジェラシック・パーク。なにそれ、ジェラシーなの。
主人が言い間違いをするたびに「違うよ」と言っていたけれど、いつまで経っても直らないので今はほったらかし。最近はわたしまで間違えるようになりました。
「ほら、ポーズとって!こう!」
主人と同じように足を広げて、掃除機の棒を振り上げてみます。すると主人はうれしそうにこう言いました。
「ぶおん、ぶおん、ぶおん」
うんうん、ライトセーバーだね。
可笑しくなり、わたしはコートを脱いで主人に渡しました。
「せっかくだから、あなたも着てみたら?」
コートはオーバーサイズなので、体の大きな主人でもなんとか着れました。袖も短いし、丈も膝上、ぴちぴちだけど。
「おおおお!ジュダイだ」鏡を見に行って、テンションのあがる主人。そして、やっぱり
「ぶおん、ぶおん、ぶおん」
掃除機の棒を振り上げます。
えーと、なんのプレイ??
「このコート、やっぱりいいよ。おりちゃ、よかったねー。ジュダイになれて!!」
いや、別にならなくていいんだけどさ。主人があまりにご機嫌で言うので思わず吹き出します。「そうだね」と返しました。
ふふ、きっと主人はよほどこのコートが欲しかったんだなあ。おしゃれで、ジュダイにもなれるコート。欲しかったものを代わりに買ってくれて、ありがとね。
ああ、メンズでも販売されたらいいのに。そしたらお揃いでジェダイごっこするだろうな。
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最後までお読みいただきありがとうございました(*´▽`*)
ではまた!