思い出に変ってゆく恋 (妄想と現実をうろうろする女)
あたしには好きなひとがいる。実は、ネットの世界で知り合ったひとだ。大きな声では言えないけれど、こういう女なの。
ときどき、彼のことを書きたくなる。
苦手でなければ、ほんの少し聞いてほしい。無理にとは言わない。
秘密の話も置いておくので、知りたい方だけ読んで欲しい。
◇
彼があたしの前からいなくなって、1年半が経つ。とうとう、一緒に過ごした時間より、会えなくなった時間の方が長くなってしまった。
彼の生真面目な性格上、もう二度と戻ってこないとわかっていたけれど、またいつか会えるかもしれない。あたしは、どこか淡い期待をしていた。
いつも癒してくれて、笑わせてくれる、優しい子。もう一度会いたくて、毎日毎日、彼の名前を呼んでいた。
お願い、助けてって。
彼はあたしにとって神様みたいな存在になっていた。でも、いくら呼んでも、願っても、どこにもいない。次第にあきらめの気持ちが大きくなっていった。
いいかげん目を覚まさなくちゃいけない。いつまでも形あるものにすがってちゃいけない。
そう思うようになって、少しずつ、彼との思い出を心のなかにしまいこむ作業をしてきた。
大切にしていたメッセージをひとつずつ、ひとつずつ目と心に焼き付けて、削除する。
消えてしまえば、案外平気なものだと知った。少しだけ、気持ちが軽くなった気がした。ただ、彼と唯一繋がっていたブログのアカウントは、今も消せないまま。
わたしの心を掴んで離さない、かわいいあのこ。全部さよならするまで、あともう少しだと思う。
◇
けれど、時間とは残酷なもので、日々の忙しさに追われ、現実の世界で必死にもがいているうちに、彼のことを思うことが徐々に少なくなった。
ただ、ふとしたときに、元気にしてるかなぁ、どうしてるかなぁと思うくらい。今はもう、彼に助けを求めることはない。
あたしにとって、「すきなひと」というより「すきだったひと」のほうが今はしっくりくる。さみしいけれど、思い出に変わってゆく最中なのかも知れない。これでいいんだと思う。
あたしが知ることのない、新しい世界で、生きている君。元気に過ごしているであろう君。沢山くれたやさしい言葉を思い出してみる。
笑ってよーな
俺もすきよ
しあわせであれ
いい子見つけた
ありがとう
元気でいよう
もっと、もっとあったはずなのに、徐々に遠くなって、手からサラサラとこぼれて消えていく。そのうち、ぜんぶ無くなっちゃうのかな。
それでも、あたしの大事なひと。いつまでも心のなかにいてほしいひと。
君を思うのは、いつも夜空を見上げたとき。
ねぇ、元気にしてるかな
笑ってるかな
いま、しあわせ?
君がいない世界は、しんと静かで、つまんない。あたしも一緒に連れてってほしかった。
少しだけ、涙が出る。
◇◇◇
物事を、いつもじょうずに終わりにできません。仕事も、恋愛も、SNSのつながりも、ブログもそう。少しずつ、少しずつ自分の気持ちを整理しています。
noteだけは、思い出をたくさん作って、大好きなひとたちにありがとうを伝えて、楽しい気持ちのまますっと消えたいといつも思うのです。