めいっこと自転車の話②
2台目の自転車は、ピカピカのシルバーのBMX。
新しい自転車に彼女は目をキラキラさせていた。みんなに囲まれ、彼女は恥ずかしそうに自転車にまたがった。
主人に後ろを支えられながら前へ進む。彼女もうれしそうだ。
彼女のママ(義妹)が特に喜んでくれた。義妹のおなかには二人目の子がいてちょうど産休に入る。生まれるまでの間、一緒に遊ぶ時間もできそうだという。よかった。
その後、実家の母からは自転車で遊んでいるよ、と報告があった。
でも、しばらくすると自転車の話はぱったりとなくなった。
なんでも、仲良しの近所の女の子は補助輪のついたプリンセスのかわいらしい自転車に乗っているらしい。ああ、ほんとは、そういうのが欲しかったのかな。補助輪なしは早かったかな、、、ちょっぴり胸が痛む。
でも、プリキュアみたいなのはいつか飽きるし、ピカピカのシルバーはいつだって乗れる。この思い、いつかわかっておくれ。
願いもむなしく、BMXは乗ってもらうことなく、しばらく玄関に置いたままだった。いつ実家に帰っても、傷ひとつなく、ピカピカのまま。
彼女が6歳になる前。久しぶりに実家へ帰って、自転車で遊ぼうと誘った。寒いので気が乗らなそう。
ペダルが付いただけでガラリと彼女の乗り方が変っていた。後ろから押してあげると、ペダルに置いた足が気になるのか、ずっと下を向いたまま。自信満々で地面をけってわたしを驚かせた、あの勢いがどこにもない。
しまいにはペグが足に当たって痛いという。父と一緒に工具を探してペグを外した。
そんなこんなでもう帰る時間。
近くに住んでいたら、もっと一緒に遊べるのになあ。プレゼントしただけで、何もしてあげられない自分が情けない。彼女も、新しく習い始めたピアノに夢中になっていた。
※
そして彼女は小学生になった。連休中にすることがなく、ばあちゃん(わたしの母)に軽く促されて自転車で遊び始めたときのこと。
突然、ちょっとした下り坂でなんとなくコツをつかんだようで、じいちゃんに教えてもらうと、30分もかからないうちに自転車に乗れるようになったという。
そして、次の日も実家に来ては、庭で2時間も自転車に乗り続けていた。ぐるぐる、ぐるぐると。
ふふ、2時間も乗っていたなんて、よっぽど楽しいんだろうな。元気に遊ぶ彼女のことを想像しただけで、こちらもうれしくなる。
おばさんはこう思うのだ。
そうだよね。自転車に乗れると、うれしいよね。初めて乗れた時の瞬間、おばさんも覚えてるよ。後ろからぐんぐん押されていく感じで不思議だよね。
がんばったね。ぜんぜん教えてあげられなくてごめんね。早く、ピカピカの自転車に乗っている姿をこの目で見たいよ。いつか一緒にサイクリングしようね。
それと、もうひとつ思う。
下のめいっこも、もうすぐ2歳。あの黄色のキックバイクは、今は親戚のところで大活躍していて、しばらく戻ってこない。
よーし。おせっかいなおばさんだけど、3台目の自転車は水色か黄緑のキックバイクにしようって。