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あわい
あいまいなものに惹かれる。
たとえば、水平線。
海と空の境界はどこにあるのだろうと、海を見るたび思う。
はっきり見えることもあれば、ぼんやり見えることもある。高いところから眺めるとより遠くに見え、その境目はかすむ。
水平線のうえに立ってみたい。でもここから見えたところまで船で行ったとて、そこはただ海の上。きっとまた空と海の境界が見えるだろう。
じゃあもっと遠くへ行ってみようか。終わりのないことを空想するのは楽しい。
夕暮れどきの空も好きだ。
水色からオレンジ色にかわる瞬間の、白く霞んだところ。同じ時間、同じ場所でもすこし方角が変わるだけで、空の色はピンク色に見える。
ひと続きの空。じゃあ、オレンジとピンクの境目はどこ。眺めているうちに空は藍色に、朱色に変わってゆく。
「あわい」に惹かれるのかもしれない。
あわいについて調べてみる。境界(の地帯)やあいだのこと。物と物とのあいだ、事と事とのあいだ、時間と時間とのあいだ。
また、物と物との交わったところ、重なったところという意味もあるようだ。
海と空のあわい 夕焼けのあわい
あわいにあるものはあいまいで、はっきりとした答えはないように思う。ただ考えることが楽しい。考えているうちに、まあいいかと思ってしまえるゆるさも好きだ。
言葉と言葉のあわいには、思いがある
感情と感情のあわいにも、思いがある
夜と朝のあわいには、静けさだったり、喜びだったり、哀しみがあるかもしれない
過去、現在、未来のあわいには、なにがあるのだろう
あわいにあるもの自体もゆるゆると変化したり、がらりと変化したりする。自転車に乗りながら、わたしは「いま」という時間のあわいを生きているとか、空間のあわいを通っているとか、想像して楽しくなる。
あいまいなものや答えが見つからなくていいもの。
そういうあわいに惹かれる。
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