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OSK日本歌劇団 ミュージカル「三銃士」 ポルトス(京我りくさん)見どころ記
公演期間:大阪…2025年2月6日(木)~9日(日)
東京…2025年2月20日(木)~25日(火)
公演会場:大阪…ナレッジシアター 東京…銀座博品館劇場
出演者 :翼和希(12) 千咲えみ(12) 華月奏(16) 登堂結斗(11)
天輝レオ(11) 羽那舞(9) 京我りく(8) 柊湖春(4) 南星杜有(4)
奏叶はる(2) 桜乃ひとみ(2) 陽向だいち(1)
※カッコ内は年次、全員敬称略
観劇日時:2月8日12時・16時公演 2月9日11時・15時(千穐楽)公演 計4回
ZAIKO配信・1公演(部分的にのみ)
2018年に初演が上演され、7年ぶりの再演となる三銃士。
初演に入団1年目でご出演されていた京我さんは、当時は敵兵やコロス等を演じておられたが、今回はタイトルロール・三銃士の一人であるポルトス役をされている。
以下は、昨夏の「PS京我」を機にファンとなったとあるド新規が、今公演の京我さんポルトスとその好きなポイント・見どころを個人的な記録としてまとめたものである。
ご贔屓バイアスのかかった主観的記録に過ぎないが、もし多少なりともどなたかのお役に立つことがあれば、それは願ってもないことである。ただし、お読みになる方がおられたら、以下の点にご留意いただきたい。
■残念ながら音楽・ダンス・演劇に関する専門知識は一切ない。
■シーンの説明を交えているので、ネタバレを含む。
■台詞や演技の内容等、記憶違いを含む可能性がある。
■個人的な勝手な解釈や考察を多分に含む。
■ポルトスの出ていない景には言及していない。
京我ポルトスのビジュアル
ご承知のとおり「三銃士」とは、アトス、アラミス、ポルトス、の3名を指すが(ダルタニャンは主人公だが「三銃士」ではない)、どういうわけか昨年11月にリリースされた公演ポスターには、初演と同様、ポルトスが載っていなかった(何故?)。よってお待ちかねの京我ポルトスのビジュアルが判明したのは、大阪公演の初日だった。
私は初日を観ていないので、翌日、劇団公式Xにアップされた、各出演者が自身のアクスタと缶バッジを手にした画像で初めてビジュアルを目にすることとなる…
京我ポルトスは、茶色の短髪、やや褐色の肌、左耳に一粒のダイヤのピアスをしている。そして印象的なのが、左眉にかけての傷跡!更に、緑色の石のついたゴツい指輪を左手の人差し指にはめている。お衣裳(銃士隊の制服)は深紅の色。
美形のベリーショートの破壊力たるや…(言葉を失う)。京我さんがベリーショートの超絶イケメンになられたことは、1月中旬に公式Xを見た時点で承知していたのだが…いやはや、ポルトス、最高に男前でイケメン!ポスターに載っていないのがつくづく勿体ない(涙)
インターネットで一般論を調べてみると、左耳のピアスの意味は「男性の場合、勇気と誇りの象徴」だそう。なるほど、そういう意図でつけておられるのかもしれない。
左眉にかかる傷跡は、銃士隊の訓練でうっかり作ってしまったのか、はたまた実戦で受けた傷なのか…?ファンとしてはそこの設定が気になる。この傷跡がポルトスの男前度を一層高めていると感じる。
ちなみに、ビジュアルからは逸れるが、公演パンフレットにおいてポルトスのキャラクターはこのように説明されている。
■腕っぷしが強く威勢のいいムードメーカー
■豪快で明るい性格
さて、本編に入る。以下、単に「ポルトス」と表記するが、当然全て京我ポルトスのことである。
第一幕
第1景 ダルタニャン恋をする
ダルタニャンの恋の告白を盗み聞きして、吹き出しながら三銃士が登場するのが最初のシーンである。
アトスが「恋は不幸の始まりだ」(これは理由あって彼の口癖)とダルタニャンに言ったのを受けて「あぁ…また出たよ」という表情をしていたり、その台詞の真意を探ろうとするダルタニャンの様子に「やめとけって、お前」という仕草と表情をしているポルトスのお芝居がいい。
ポルトスはとにかく女性に目が無い。キュートもしくはセクシーな女性が大好き。コンスタンスが登場した途端、「ワォ、キュートでいい女だ」と言って見惚れ、アラミスと一緒になって脇でしきりに「可愛いよね~」とデレデレして盛り上がる。ダルタニャンが「お前らいい加減にしろ!」の気持ちを込めて「ポ・ル・ト・ス!」とコンスタンスに紹介すると、我に返って少し気まずそうに「ハァィ(汗)」と片手を挙げて挨拶するところがいい。
ダルタニャンに「どうだい、頼りになる奴らだろう?」と問われたコンスタンスに向かって、強い男っぽいポーズでアピールしたポルトスは、「ええ、最高よ」と言ってもらえると「最高だって!!」ととても喜んでアラミスへ報告しに行く。アラミスから「良かったな」と言われるとますます嬉しそうで可愛い(笑)
コンスタンスから、アンヌ王妃とバッキンガム公爵の密会に力を貸してほしいと請われた際、「俺たちに不貞の手助けをしろと?」と慎重なアトスとは対照的に、「つうかさ、ダルタニャンは誰かさんのためにやる気満々じゃんか。ダルタニャンが乗りかかった船だ、俺たちも力になるぜ」と威勢よく請け合うのがポルトスである。なんせ友情に厚いのがポルトスである。(三銃士のなかで最も「友情」要素が強いのはポルトスのように思う)
ありがとうとコンスタンスからふいに両手を握られると、ポルトスはうっとりと自分の両手を見つめて余韻に浸る。女性に目が無いけれどピュア。日によってはアラミスから「照れんなよ」などとツッコまれる(笑)
第2景 許されざる恋
王妃との密会を終えた侯爵の元へ、護衛役の三銃士がさっと現れる。アトスの「銃士隊のアトスです。これよりは我らが公爵を港までご案内いたします」の台詞と共に一礼する三銃士。たったのワンアクションだが、その姿からは頼もしさが滲み出ている。お三方がどれほど深く役創りをしてこられたのかが伝わってきて、個人的にグッとくる。そしてこの時、アトスに従うポルトスの横顔がウルトラ格好いい。仕事をする男の真剣な表情…そして何と言っても京我さんの鼻の形とEラインは美の極み…(一度は鑑賞した方がいいと思う)
第3景 リシュリュー枢機卿
第4景 銃士隊
ファンファーレから銃士隊のテーマソング(※曲名不明につき、本稿における勝手な呼称)が始まる。このテーマソング、ビートがドゥンドゥンしていて高揚感があり、大好き。イントロから始まる剣舞は恐らく銃士隊の訓練を表しているためか、表情はきりっとしている。
普段悪戯なんて一切しそうにないアトスがこの劇中唯一ふざけるのがこの曲で、訓練が一段落した直後、すれ違いざまにポルトスに足を引っ掛ける。躓いたポルトスは「おい、何すんだよ!」と食って掛かろうとするが、ダルタニャンにそれを制されて歌が始まるという、何とも気の毒な(笑)流れである。
1サビの「♪One for all, all for one」が終わってすぐ、正面に一突きしてターンしたあとの、剣を顔前で右から左へシャーっとやる振付のときのポルトスの、歯を食いしばってやや睨みつける表情が最高に格好いい。
2番の始まりで、間奏中に下手前方で剣の腕前を披露していたダルタニャンに対抗意識を燃やして「俺だって…見てろよ!」的な感じで剣を振り回すポルトスが愛らしい。
2サビ~間奏、ラストにかけて、精悍な顔で踊っている姿がとにかく格好いい。「♪我ら 我ら フランス銃士隊」の「フランス銃士隊」の瞬間のポージングも好き(頭上に剣を構えて左腕を広げる。左手の形も素敵)。上手の客席降り用階段に足をかけて客席側に身を乗り出して歌ってくれるシーンもある。
銃士隊のテーマソング後、ポルトスはしびれを切らしてダルタニャンに突っかかる。「何かさぁ、今じゃダルタニャンが隊長みたいじゃん!いっつもセンター取ってさぁ!」。ダルタニャンを押しのけてセンターに仁王立ちしてご満悦なポルトスが可愛い。このあとは日によって違うようで、ダルタニャンがポルトスの更に前へ回り込んでセンターを奪還したり、大阪の千穐楽の際はダルタニャンは敢えてそのまま何もせず、予想外に長くセンターを張れたポルトスの方がむしろ手持ち無沙汰になりかけていて面白かった。
センターから追い払われ、アトスとアラミスからダメ出しを喰らったポルトスは、アトスから「お前にはそれ(腕前と、何よりも勇気)が足りないんだよ、口は立つけどな」と指を突き付けられて、その指に噛みつこうとする(笑)ポルトスは「ちぇっ ガスコンの田舎モンのくせによぉ」とダルタニャンへ悪態をつくが、アトスから更に「(ダルタニャンは)顔はノーブルな貴公子様だよ、お前とは違ってな」と言われ、回りの銃士からも笑われてしまいムキになってその辺の銃士(奏叶さんあたりの下級生)に殴りかかる。プライドが高いところがまた愛らしい。
コンスタンスがダルタニャンを大至急の用だと呼びに来て、ダルタニャンが出ていくと、「…枢機卿にバレたな」「あぁ、多分」「内通者がいるねぇ…コンスタンス以外の王妃付きの侍女、ってとこか…」「さぁて、どこまでバレたんだ?」…と三銃士がやり取りをする。第2景の公爵護衛のシーンと一緒で、ここも声音や口調、表情に三銃士の仕事人としての鋭さが急に覗いてグッとくる場面である。アトスの「ともかく忙しくなる。馬の用意をしておこう」に対するアラミス・ポルトスの返答「あぁ」からのマントを翻して捌ける一連も格好いい。(個人的に男役の低音の「あぁ」が凄く好き)
このシーンだったか忘れたが、ポルトスが会話の際、大抵、制服のバックルのような部分に両手の親指を引っ掛けているその立ち姿が頼もしくて素敵である。
第5景 密命
第6景 ロンドンへ
最初に枢機卿サイド(親衛隊)の追っ手と一戦交えるのが、シャンディの戦いである。三銃士とダルタニャンそれぞれ個別の殺陣がある。最初がポルトス。
「ヘイヘイヘーイ!へっぼいねぇ親衛隊は。命までは取らねえからさっさとパリに帰れ!」と最後はキックをお見舞いして、好戦的な表情で捌けていく。初演当時はポルトスと戦う親衛隊の兵士役を京我さんがやっていたが、今回はそれを陽向さんがやっていて、ポルトスが京我さん。嗚呼7年の歳月よ…(ド新規ファンの分際で言うことではないが)
誰か一人が必ずロンドンへ辿り着くと誓った4人。
追手がざっと40人来たのを見て、ポルトスは「ここで時間食ってたら間に合わねえよ。ここは”俺が”食い止める、だからお前らは先に行け」と実に頼もしい様子で言う。アトスから「40人だぞお前、死ぬつもりか」と問われ「馬鹿言え、誰が死ぬもんか。暴れるだけ暴れて、駄目だと思ったら(剣を置き両手を挙げる)こうやるさ」とひょうきんな顔を見せるポルトス。
アラミス「なるほど、相手は枢機卿だ。騎士道に則って君を殺すことはな
い」
ポルトス「そういうこと。分かったら早く先に行け」
アラミス「了解」
アトス「相手、殺すなよ」
ポルトス「ウィ」
ダルタニャン「パリで必ず会おう、ポルトス」
ポルトス「あぁ」
ここの、各人の性格や立場が端的に表れた短い会話が大好きである。ポルトスにだけ唯一、フランス語の台詞(ウィ)があるのも良い。ポルトスの「ウィ」好き…。
シャンディでの一連のやり取り、全ての台詞の喋り方や声音・表情・仕草がポルトスそのものという自然さで、京我さんはやっぱりお芝居の人なんだなあと改めて思う。
3人を見送ってからの、剣を差し銃を手にして戦闘モードに入っていく表情の変化や雄叫びも非常に格好いい。
第7景 愛の証の首飾り
第8景 晩餐会
ダルタニャンとは未だ合流できていないものの、それぞれ無事にパリへ戻ってきた三銃士。ルイ十三世の生誕記念晩餐会へ招かれ、王宮へ来ている。そこへリシュリュー枢機卿が登場、ポルトスは苦々しげな表情。
このシーン、表情からポルトスの頭の中が読み取れるけれどもギリギリやり過ぎではない、京我さんのお芝居が絶妙である。
枢機卿が「どうして君たちがここに?君たちを呼んだ覚えはないよ」と探りを入れてくると僅かに「マズい」という表情、アラミスが機転を利かせて「休暇を取ってフランス各地を旅行していました」と上手く誤魔化すと「おぉ、巧いこと言ったなアラミス」という顔になる。更に枢機卿が「ダルタニャンが居ないようだが」と急所を突いてくると「クソ…あいつ今どこに居るんだ」という思いが表情にうっすら出る。アラミスが再び巧みに受け流して”枢機卿と一緒に居るご婦人(=ミレディ)”へと話を逸らすと、遠慮がちながらもすぐその”ご婦人”へと視線を移す。ミレディがアトスのことを「もろ、タイプですわ」と評するや、アラミスに話しかけに行くところが、流石、美女に目が無いだけある(笑)
晩餐会の会場へ移動すると、開会ギリギリまでダルタニャンの姿を心配そうに探すポルトス。時間となり整列し、枢機卿による開会挨拶が始まってからも、ダルタニャンを探して場をわきまえつつもソワソワ・キョロキョロしているポルトスはやはりダルタニャンへの想いが人一倍熱いのだと感じさせられる。ダルタニャンの安否とミッションの成否のことで頭がいっぱいで、周囲が拍手していることにすら一瞬遅れて気が付くありさまである。国王と王妃の入場が告げられた際は、「あぁ…駄目だったか…」という表情になるが、いざ登場した王妃の胸に輝く首飾りは一早く発見し(お辞儀の姿勢を3人のうちただ一人止めて王妃の姿を確認してしまう)、アトスとアラミスに嬉しそうに報告する。
計画が失敗し青ざめる枢機卿の姿を見て、ポルトスはスカッとした表情で「見ろよ、血の気引いてるぜ、このクソ親父!」と言い放つ。口が悪い(笑)のは、まだ貴族ではないという設定ゆえか。
国王の挨拶時、全員が舞台の上手/下手両端にㇵの字型に一列になるが、この際、上手側の最前(最も客席寄り)に立つのがポルトスである。この、脱帽時のポルトスの横顔の美しさ(またその話(笑))…!尊いものを見つめる目の表情も絶妙。
国王の「余はこれからも王妃と互いに慈しみ合い…」というスピーチを聴き、素晴らしさにウンウンと頷きながら心からの拍手を送るポルトス。その姿は彼の国王への忠誠心の深さを物語っていて、それが第2幕の10年後のシーンにも繋がっているのだろうと今、これを書きながら思った。
国王が王妃を誘いダンスを始めると、それを跪いてうっとりと眺めるポルトス。4度生で観劇したが、うち2回はそのうちアラミスがポルトスを誘って男同士でぎこちなく組んで踊りだした(レオきょが!)。男同士なうえに上手く踊れないのが嫌になってか、二人とも割とすぐ離れてしまうのが面白い(笑)
第9景 デートの約束
ダルタニャンとコンスタンスがデートの約束をするところを盗み見ていた三銃士。ダルタニャンがコンスタンスの投げキッスをジャンプしてキャッチしたポーズをそっくり真似てからかうポルトス。アラミスが「アトスがダルタニャンに話があるって」と振りアトスが話しだそうとした途端、二人の間に割って入ってひょうきんな顔で「二人で恋バナとか、無しね?」と釘を刺す。彼は女性に目が無いのみならず恋バナ好きである。
だが、ミレディの素性を知るやすぐさま「いまクソ親父は(首飾りの計画が失敗して)絶不調。何か嫌な予感がするぜ」と何かを察するあたりは、流石仕事のできる男である。
第10景 誘拐
コンスタンスをあと一歩のところで誘拐されてしまい錯乱するダルタニャン。ここのダルタニャンの迫真の演技が素晴らしい。本当にアトスとポルトスの2人がかりでなければ止められないほどである。ダルタニャンを落ち着かせ励まそうとする三銃士の声掛けも、それぞれらしさと溢れんばかりの友情が表れていて良かった。ポルトスの「ああ、それに一度だけじゃねえ、何度でも言ってやる。お前は俺たちの、心底、永遠の友だ」は、彼らしい熱さに満ちている。アラミスが「一緒にコンスタンスを取り戻そうぜ」と続くと、ポルトスは敬礼しながら「All for one」と言う(続いてアラミスが「One for all」)。
銃士隊のテーマソングの歌詞では「♪One for all, all for one」の順なのにここではポルトスが第一声で「All for one」と言うのは、何か意図があっての演出だろうと個人的には思っており、ダルタニャンに「お前には俺たちがついてるぜ!!」を伝える役柄として敢えてポルトスが選ばれているのではなかろうか。
イギリス(バッキンガム侯爵)がフランスに宣戦布告し戦争が始まるぞというところで、本ミュージカルのテーマ曲「君よ知れ」を全員で歌い、第一幕が終わる。
「君よ知れ」は踊っている最中のシリアスな表情がとても素敵で、剣舞ではないダンスが劇中で堪能できる貴重な曲である。手指の細かい形や一つ一つの振付の美しさ、どの瞬間を切り取っても格好いいのが京我さんのダンスだと個人的に思っているので、全部が見どころなのだが、1番を4人のみで歌い踊る際の「♪愛のなせる業は残酷」の「愛の」で横顔を見せる瞬間は、伏せられた目、首筋、横顔、左耳のキラッと光るピアス、それらが相俟って息を呑むような色気がある…!その瞬間を是非観てもらいたい…直後のターンの美しいマントの翻りようと、「♪残酷」の「残」と「酷」ですら表情に変化があるところも非常に素敵。
ダルタニャンたちと目を見交わして下手へ捌けていく際の表情もいい。
第二幕
第1景 提案
ミレディから免罪符を奪い取ったアトスの元へ集まる三人。リシュリュー枢機卿とミレディの会話を盗み聞きしていたアトスからコンスタンスの無事を聞き、一同安堵する。ポルトスは「で、どこの修道院に匿われてるんだ」と気が急いていたり、ミレディがダルタニャンを始末しようとしていると聞くや枢機卿への怒りを露わにしたり、とにかく率直で友情に厚い人である。
枢機卿とミレディのバッキンガム公爵暗殺計画を王妃様に知らせねば!のシーン、アラミスに「ほぉ~流石だなぁお前」という表情で近付きながらポルトスが「…で、どの女に頼むんだ?エロ神父」…初演の映像を観て、このシーンを楽しみにしていた!(笑)毎回微妙に「エロ神父」の言い方が違う。囁きとまではいかないものの声量を抑え気味だった言い方(具体的には2月8日16時公演)が個人的には一番好きだった。
第2景 急ぎの知らせ
第3景 バッキンガム暗殺
公爵暗殺現場にミレディが居なかったこと、ミレディが男を篭絡し暗殺の実行犯に仕立て上げたことを知り、ミレディの恐るべき悪女ぶりに驚愕するポルトス。
第4景 最愛の人
ベチューヌの修道院へ4人はコンスタンスを迎えに行くも、あと一歩間に合わず、コンスタンスは既にミレディから毒を盛られていた…。恋人同士の感動の再会と思いきや一転、コンスタンスは突然苦しみだし、そのままダルタニャンの腕の中で息を引き取る。
ここもダルタニャンとコンスタンス、迫真の芝居が光り息を吞む名シーンのひとつだが、慟哭するダルタニャンの熱量が凄まじく、友の絶望と悲しみに共鳴して三銃士の中に憎しみや怒り(こんな風に簡単な言葉で表せる感情ではないはずだが)が湧き立つ流れのリアルさが凄い。
ポルトスは憎悪を込めて「あの女…地獄の果てまで追いかけて捕まえてやる!」と叫ぶが、観たある回では帽子を地面に叩きつけていたような気がする。
第5景 処刑
ミレディが逃亡を図るも失敗し、4人に捕まる。斬首役人も事前に呼んであり、その場でミレディの処刑を実行しようというシーンである。
最後まで、どんな嘘をついてでも汚い手を使ってでもあがこうとするミレディ。羽那さんは、4人(+斬首役人)のみならず全観客からも憎悪を一身に浴びせられているに違いないと感じるほどの、骨の髄からの悪女を物凄いエネルギーで演じている。ミレディがキャラクターとして弱いと、このあとのストーリーの説得力が無くなってしまうので、大変な重要シーンである。
ミレディは最初にアトスへ、自分に手を掛けたら後悔するぞと泣きつく。続いて、若い身空で死にたくないと訴え、それを聞いたダルタニャンの怒りが猛然と燃え上がる。その場に立ち会うポルトスは、往生際の悪いミレディへの怒りを滲ませた表情から、ダルタニャンの「コンスタンスはあなたよりも若かった!」を聞くや、彼の深い悲しみに想いを馳せてもう堪えられないという悲痛な表情に変わる。そしてミレディがアトスへ「愛しているわ」と改めて泣きつくと、ポルトスは怒りと共に信じられないものを見ているような表情を浮かべる。
ここまでの一連の表情の変化が本当に巧い。京我さんのお芝居は、目の表情はもちろんのこと、無言の時も含めた口の動かし方が素晴らしいと思う。
ミレディ処刑により「何かが狂いだす」。ダルタニャン以外の三銃士はみな銃士隊を辞めてしまう。ポルトスは「付き合ってる女に結婚を迫られている」という理由で。(これは建前であって、本当はもっと深い理由があるのだろう、と友人が具体的に想像していてなるほど、と思った。浅はかな私はそこには考えが至っていなかった…)
第6景 十年後
国王は幼いルイ十四世となり、枢機卿はマザランへ。そしてダルタニャンは銃士隊の隊長となっていた。
マザラン派とフロンド派に分かれて国内の対立が深まっていた時代。マザラン枢機卿からの命によりダルタニャンは三銃士を、マザラン派の救世主として探し出すこととなる。
第7景 敵か味方か 親友か
ダルタニャンが真っ先に探しに行ったのが、ほかでもないポルトスである。ポルトスは、未亡人と結婚して貴族となったが、その妻を既に亡くし孤独のなかにいたという設定。
ポルトスとダルタニャンが、敵対するフロンド派と一戦を交えんとする現場から、この景が始まる。
10歳年を取ったポルトスは、少しラフな(ように個人的に感じた…アトスやアラミス比で)長髪で登場する。指輪も、左手の人差し指から薬指に替わっている。妻に先立たれた悲しみで乱れた心が髪型に現れており、結婚指輪を今も大切に付け続けている、ということかしら?…と勝手に推測。
この10年後のポルトス、声が少し低い。敵にばれないよう声を潜めて話しているシチュエーションもあるにせよ、若い頃と違い、気分の高まっている際にも声のトーンが高くならないよう抑えられている。何度も捨てようとしたが結局捨てられぬまま銃士隊の制服を取ってあった…ということが、10年前の除隊はポルトスにとって本意ではなかったことの表れなのだろう。
フロンド派の2名に急に斬りかかられ、剣を構えてみると、何とその二人はアトスとアラミス。彼らは政治を動かす枢機卿が国民を苦しめていることが許せず、民衆側のフロンド派となっていた。
4人は剣を構えたまま言葉を交わす。このシーンの緊迫感は、東京の千穐楽にむけてますます高まっていくであろう。殺し合いを避けたいダルタニャンの台詞にぐらつきそうになりながらも己の使命を全うしようとするポルトスの「それ以上言うなダルタニャン、男にはどうしても曲げられないものがあるんだ!」の表情がいい。
いよいよ殺し合いが始まろうかというその時、ダルタニャンが剣を投げ捨てて積年の想いを吐露する。ここがダルタニャンのお芝居の素晴らしい場面その3である。
正直、脚本的には力技なのだが(冷静に考えれば「4人ともそれぞれの重要ミッションを放棄して何してるの?」「国の命運が関わっている職務>友情はあり得ないでしょ…」となる)、ダルタニャンの感情の爆発とそれに呼応する三銃士の演技が素晴らしいので、お芝居に没入でき、現実的なツッコミが頭をよぎったり白々しさを感じることが全くない。
ポルトスの「君たち(アトス・アラミス)と戦うくらいなら、串刺しにされたいよ!…俺が好きな男は、君たち以外に居ないんだ!」の心の叫びが胸をうつ。一番の友愛の人であるポルトスに最もストレートでアツい台詞が当てがわれているところがいい。
ポルトスの心の叫びを聞いたアラミスが頭をぐしゃぐしゃしたり、大きなアトスが飛びついてくるポルトスをドンと受け止めるところがいい。
最後はワインで乾杯しに行く4人が客席降りをするが、ワイワイ喋っている最中ダルタニャンが「今、コンスタンスの声が聞こえた気がする…」と漏らす。その際、ポルトスが居たたまれないような表情で首を振りながら歩いていく姿を見送って、閉幕となる。
第8景 フィナーレ
黒燕尾のボレロ!!実は京我さんの黒燕尾(蝶ネクタイをした正装のタイプ)を観るのは、過去作の円盤、生観劇いずれでもこれが個人的に初で、大変感慨深くまた嬉しかった。
第一幕ラストの「君よ知れ」と同じで、(全く同じことを書く)手指の細かい形や一つ一つの振付の美しさ、どの瞬間を切り取っても格好いいのが京我さんのダンスだと個人的に思っているので、一瞬も見逃せない。短髪の若かりしポルトスに戻っているので余計に格好いい。
京我さんは今回の出演男役陣の中では小柄なほうでおられるが、背の高い人たちと隣や前後で踊っていてもあまり小さく感じなかった。ガッチリしているし(誉め言葉。手も四角くて大きい気が)、何というか身体の周りの空間の使い方が巧い感じがする…
京我さんの黒燕尾、どの瞬間も格好良くて素敵だった。
第9景 パレード
ポルトスの衣装もいいけれど、黒燕尾は大正義。ちょっとダンスが付いているところが嬉しい。ポルトスらしい威勢の良さとちょっとしたオラつき、軽快なステップがいい。しかも前に出てきた際、正面に向かってウィンクまでしてくださる…!被弾しなくても傍目に眺めているだけで十分幸せ(笑)
まとめとはいえないまとめ
好きなところ、注目ポイントは全て太字にした。
京我さんのポルトスは本当にはまり役で、お好きだと聞くお芝居での生き生きしたお姿が2時間以上も観られて最高だった。存在感の出力度合いが絶妙。東京公演も楽しみでしかない。健康第一でますますご活躍されますように!