「レジリエンス」と向き合う意義を共有したい
一般社団法人レジリエンス協会で「組織レジリエンス研究会」の座長を務めております、田代邦幸です。
このページにたどり着いた皆様であれば、既に「レジリエンス」(resilience)という言葉について、何らかの知識やイメージ、お考えをお持ちなのではないかと思います。
もともとは、何らかの外力を受けて変形した(またはダメージを受けた)ものが、その外力がなくなった後に復元していく力を指す言葉です。日本で「レジリエンス」という言葉が広く使われるようになってきたのは、恐らく 2011 年の東日本大震災以降で、未曾有の大災害からいかに復興していくかというような文脈で広まってきたと思います。
しかしながら、ひとくちに災害からの復興と言っても、そこには個人や家庭での生活再建、企業の事業継続や復旧、地域社会や経済の再生、自治体や国の行政サービスの継続・復旧など、様々なレベルでのレジリエンスが必要となります。また、個人の生活の基礎が家庭にあり、家庭の生活再建は地域社会に依存し、地域社会の復興は国や自治体の施策に大きく左右されるなど、それぞれのレジリエンスはお互いに影響を及ぼし合っています。
このような状況認識に基づいて、当研究会では「組織のレジリエンス」にフォーカスして研究活動を続けており、特に「組織のレジリエンスを評価する手法を開発する」ことを中心的なテーマとして取り組んでいます。これは当協会の前身である「レジリエンス協議会」が 2010 年に発足した当初から、一貫して取り組んでいるテーマでもあります。
しかしながら、「組織のレジリエンスを評価する」というのは一筋縄ではいかない、難しいテーマです。私たちは国内外で発表されている様々な論文や書籍、研究レポートなどを読み漁りながら議論を重ねてきましたが、なかなか外部に発表できるような成果が出せないまま、現在に至っております。
そこで当研究会では、メンバーが研究会活動を通して、もしくは本業での経験から培ってきた、様々な知見や情報などを、少しずつ文書として発表していくことにしました。
これから発表していく様々な文書は、研究論文と呼べるほどまとまった形にはならないと思います。また、各メンバーが持ち回りで執筆しますので、一定のテーマに基づく連載ではなく、「組織のレジリエンス」を軸としつつも多種多様な内容をお届けすることになります。これらの文書にどのくらいニーズがあるか分かりませんが、もしかしたらどこかで誰かに対して、何らかのヒントや、新たな切り口をもたらすことができるかもしれません。そのような可能性を信じて、情報発信に取り組んでいきます。
当研究会のメンバーの多くは、主に事業継続マネジメント(BCM)の分野を中心に活動していますが、組織のレジリエンスは BCM の枠にとどまらない広い概念であり、ふだん我々が関わることのない分野の方々とも、交流や情報交換が必要なのではないかと考えています。当研究会の新たな試みが、そのような広い範囲の方々に届くことを願っております。
組織レジリエンス研究会座長 田代邦幸