『ウルフ』 1-2 薫風
1−2
夜に溶け入る山はまるで昆虫が周辺の風景に擬態するかの様に闇に色を染める。
しかし、昆虫のとは全く異なる部分は息吹は隠さないところだろう。
現に山の中には夜中、日が落ちきった時を昼とし眠った種を捕獲する種も居る。
「完全に鎮火するまで5日間かかり、その後すぐ市役所の人間が消防と警察と一緒に火元を調査したらしい。
その消防員にね、父の知り合いの息子の『次晴』というのが居たんだ。
紹介した事あったかな。」
「消防署の方?覚えてないわ、あなたに消防員の知り合いがいたのは。」
「そうだよね、もうしばらく会ってない。その火事の後はしょっちゅう会ってたんだけどね。
その山火事の前は、父の友人の息子って事で会ったことはあったけども、話したことはなかった。
その次晴から聞いた話しなんだけどね。」
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