日本人にとって、信仰とは何か?(3)
日本人の信仰を問うシリーズ、第3回目です。前回分はこちら↓
前回までの検討で分かったのは、日本人の6割が「無宗教」と回答する一方で、少なくとも6割は神や超自然的な力の存在を信じるマインドを持っているということだ。そこで、次なる疑問は、日本人はどの程度宗教的な行動をしているのだろうか?ということである。
日本人の宗教的行動
アンケート結果の分析に入る前に、まずは宗教的な文化的慣行と信仰について、『教養としての宗教入門』から引用。
この記事で紹介しているアンケートでは、「ふだん信仰している宗教はありますか」という質問に「冠婚葬祭の時だけの宗教でなく…」という但し書きがついていた。これは宗教信仰ついて、少々厳格すぎる考え方なのかもしれない。もはや文化的慣行となった「浅い」ものであっても、広義の信仰に含められてよいはずだ。以下で紹介する初詣や墓参りにしても、それらを「浅い信仰」として認める観点から見ていきたいと思う。
神様・仏様を拝む頻度
神様や仏様を拝む・祈る頻度はどのくらいなのだろうか?
全体的に見ると、一年以上拝んだり祈ったりしていない or したことがない人は2割、年に数回程度が5割、月に1回以上が3割という結果になっている。やはり多くの人は初詣などの機会に年に1回は祈っていると考えてよさそうである。
何らかの宗教を信仰している「信仰組」に限ってみると、1/3は1日1回以上拝むか祈るかしているというから、やはり頻度が高い。一方、「無宗教組」であっても、年に数回というのがマジョリティのようだ。週に数回以上祈っているのに「無宗教」と答える人は、よっぽど「信仰」について厳格か、否定的なのではなかろうか。
参拝・礼拝の頻度
一方、先ほどの設問とよく似た設問なのだが、「寺、神社、教会などの参拝や礼拝に、どの程度お出かけになっていますか」というものもある。参拝・礼拝に出かけるとなると、単に祈る・拝むよりもハードルが上がりそうではある。
結果を見ると、日本人の9割近くは、年に数回かそれ以下しか参拝・礼拝に行かないようである。これで神社やお寺が維持できるのかと不安にもなるが。しかし、たとえ「無宗教」であっても、6割程度は年に1回以上参拝・礼拝に行っているというのも、見逃せない事実だ。
初詣、墓参り、お守り、おみくじ、占い
続いて初詣や墓参りなど、いわば信仰というよりも文化的慣行となっているものや、お守りやおみくじなどがどの程度親しまれているのか確かめてみたい。
初詣や墓参りをよくする・したことがあるのは9割程度。お守り・お札は8割、おみくじは3/4である。日本人の2/3は信仰心・信心があるという自己認識はないようだが(第1回のグラフ3)、海外の人の目から見れば、日本人のやっていることは十分に信仰心・信心の現れとして見えるのではないだろうか?
ここまでの検討で見えてきたのは、宗教的世界観・宗教的行動の観点では日本人の大半が「宗教的」であるにも関わらず、「宗教を信仰していない」とか、「信心・信仰心がない」という自己認識を持っている人が多数派だ、という事実である。これはいったいなぜなのだろうか?
一つの仮説としては、<日本人の「宗教」への拒否感>があるのかもしれない。つまり、「宗教」という言葉に対して、ネガティブなイメージを持っているがゆえに、自分を宗教と結びつけることに強い拒否感を示すのではないだろうか?
この点を検討するため、次回からは日本人の宗教についての見方、いわば「宗教観」について見てみることとしたい。
(その4につづく)
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