日本人にとって、信仰とは何か?(2)
日本人の信仰を問うシリーズ、第2回目です。前回分はこちら↓
日本人の宗教的世界観
神仏は存在するか?
霊魂は存在するか?
死後の世界はあるのか?
以下では、こうした宗教的な世界観が日本人の間でどの程度支持されているのか見てみることにする。
前回紹介したアンケートでは、「神」「死後の世界」「天国」「地獄」「宗教的奇跡」「祖先の霊的な力」の存在について尋ねている。以下でその結果を見る前に、これらの概念の注意点について、『教養としての宗教入門』から引用する。
アンケートでは「神」などの宗教的概念について特に説明していないので、回答者がそれぞれ違ったニュアンスで受け止めている可能性は十分にあるだろう。
神は存在するか?
神は存在するか否かは誰しも一度くらい考えたことはあるのではなかろうか?先ほど少し引用したように、「神」という言葉の内実は多様だ。アンケートでは一神教の神なのか多神教の神なのかすら区別されていないのが不満ではあるが、ざっくり有神論(神は存在する)、無神論(神は存在しない)、不可知論(神が存在するかどうかは知りえない)の割合を把握することはできる。結果は次の通り。
日本人の6割は無宗教であるから、6割は無神論ないし不可知論でもよさそうなものだが、無神論は1割にとどまり、不可知論も1/4にとどまっている。一方で、2割は神は存在しないが超自然的な力はあると答え、3割は神を信じたり信じなかったり気まぐれで、12%は神の存在を信じている。つまるところ、日本人の6割強は神や超自然的な力を(場合により)信じているという意味で宗教的といえるのではないだろうか。
一方、何らかの宗教を信仰していると回答した「信仰組」に限ってみると、有神論者が2割強を占めているが、1/4強は無神論か不可知論のようである。
しかし、ここで特に問題なのが仏教徒の存在だ。もともと修行により悟りを開くことを目指す宗教である以上、「神」の出る幕はなかったはずだが、大乗仏教ともなると仏、菩薩、明王、天など、多神教的世界観が広がっていたりもする。
そこで、グラフには仏教徒に限った結果も示している。無神論者は9%、有神論者は17%となっており、仏教徒の多様性が垣間見える。
また、「信仰している宗教はない」と答えた「無宗教組」について見ると、無神論者と不可知論者を合わせても4割くらいにしかならない。7%は神を信じているというのだが、彼らの神とは一体何者なのか気になるところではある。
そして、「信仰組」と「無宗教組」の区別に関わらず共通しているのは、超自然的な力の存在を信じる人や、場合により神を信じるという人の割合が半分を占めることだ。つまり、宗教を信仰しているか否かに関わらず、日本人の半分は何らかの超自然的な力・存在を「ゆるめに」信じているようなのである。
死後の世界はあるのか?
次に「死後の世界」、「天国」、「地獄」についての回答結果を見てみたい。
これまた面白い。死後の世界については「ある」が多数派で4割に迫っている。一方、天国があると答えた人は約1/3、地獄があるという答えは約1/4で、4割よりも明らかに小さい。ということは、「死後の世界」は必ずしも「天国」や「地獄」を意味しないらしい。また、信仰組と無宗教組を比較すると、信仰組の方が「ある」という答えの割合が大きいものの、意外とあまり変わっていない。無宗教であっても、死後の世界がないと答えたのは35%程度しかいない。
ご先祖様の力はあるのか?
アンケートでは「祖先の霊的な力」について存在を尋ねていたので、結果を見てみよう。
「祖先の霊的な力」の存在について、肯定的な回答が4割、否定的なのは3割強、わからないのは3割弱。「信仰組」では肯定がより多くなり、「無宗教組」では否定がより多くなる。しかし、「無宗教組」でも1/3強は霊的な力があると答えているのには驚いた。
ちなみに、「死後の世界」「天国」「地獄」「宗教的奇跡」「祖先の霊的な力」のすべてに一貫して、「絶対にある」と答えたのは0.8%、「決してない」が5.2%、「わからない」が17%だった。科学的世界観を突き詰めるなら、すべて「決してない」か「わからない」と答えそうなものであるが、8割近い人々はそうした態度をとらないようである。
以上をまとめると、日本人の6割以上が神や超自然的な力の存在を信じるマインドを持っており、死後の世界観や先祖の霊力についても4割近い人々がその存在を信じていることがわかった。一方、無宗教の人々の間でも、神の存在や死後の世界、先祖の霊力の存在を否定する人は少数派だった。宗教を信奉しているか否かに関わらず、日本人の多くは宗教的な世界観を少しは持っていると言ってもよさそうである。
(その3につづく)
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