東京のSMバーに行ったら身体を改造された話①〜上京〜
これは私(なるはた)が初めてSMバーおよび緊縛を体験した記録です。
内心とても恥ずかしいのですが、あまりに衝撃的な体験でしたので、文章として残しておくことにしました。
かなり長くなります。
お好きなところからお読みいただけたら幸いです。
最初はごく軽い気持ちだったんです。
一ヶ月ほど前、私はいつものようにX(旧Twitter)のスペース機能を使って、まだ声しか知らない友人たちと喋っていました。
そのときは「美人なお姉さんとキスしたい!」みたいな、今思えば微笑ましい程度の下ネタで戯れていたと記憶しています。
そのとき友人の真昼さん(好奇心旺盛でアングラな趣味にも理解がある)が、「SMバー行きたいんですよ!」と言い出しました。
私もかねがね関心があったので、「めっちゃ行きたい!」と応答しました。
私は関西在住で、真昼さんは東京に住んでいます。
もともと衝動性の強い私はその場で東京旅行を決断し、来月頭にSMバーに行くことを約束しました。
そのとき私が想像していたSMバーは、ボンテージ姿の女王様や緊縛師と、ただフェティッシュな会話をする場所でありました。
そして、場合によっては緊縛体験もあるかも、と。
友人と笑いながら「すごいね!やっぱりプロだね」なんて言いあって、身動きの取れない私や友人を楽しむ、和気藹々としたアングラ体験。
愚かでした。
私はSMバーの、SMの、何も知りませんでした。
バーの場所は調べても、そこで何が起きうるのか、SMという営みにどんな深淵が広がっているのか、何の予習もしていきませんでした。
それゆえに私は、この東京旅行の約束から数週間後、
この痴愚に相応しい様で、初めて会った友人の前に晒されるのでした。
こだまはゆっくりと東京に向かいます。
節約のために各駅停車のこだまにしましたが、駅ごとにすっかり表情を変える車窓のおかげで、約四時間の長旅も苦ではありません。鳥せいの焼き鳥弁当でお腹を満たすと、心地よい眠気がふんわりと私を包みます。東京は終点です。寝過ごす心配もありませんから、私は躊躇いなく目を閉じました。
夢うつつの中で、東京のまだ見ぬ友人の顔を想像します。
真昼さんの顔は声から想像するに、少し吊り目で、バッチリ決まったアイメイクの奥には、グレーのカラーコンタクトが覗いています。
スペースでもよく笑う彼女です。きっと少し大きめの口をさらに大きく開けて無防備に笑うのでしょう。意志が強く聡明な彼女に会えることが楽しみでした。
SMバーに行くことはただの口実でした。私は会って話せればそれでいいと思っていました。
起きたら熱海でした。遠くに海がありました。
品川に停車したので、そろそろ本を閉じます。
荷物を整理していたら、あっという間に東京駅につきました。
人波にくるくると流されながらも、何とか在来線に乗り換えます。
さっそく今晩、SMバーの約束があります。
スーツケースを預けて、JR新宿駅東口に向かいます。
「JR新宿駅の東口を出たら
其処はあたしの庭 大遊戯場歌舞伎町」
頭の中でずっと椎名林檎の歌唱が響いています。
新宿ダンジョンで迷いつつも何とか合流した真昼さんは、ギャルでした。
新宿駅東口の(関西人の私には)想像を絶する人混みの中、広場の中央で仁王立ちする彼女に最初は圧倒されてしまいましたが、
「真昼さんですか…?」
勇気を持って声をかけると、弾けるような笑顔で
「なるはたさんー!本物だ!」
と返してくれて、一気に緊張が解けました。
小さくて立体的な鞄を下げてダボっとしたジーンズを履きこなす彼女の姿は、私が恐怖するギャル(陽キャ)そのものでした。
しかし、真昼さんの朗らかで知性的な話し方、大きいけれど柔らかな笑いにすぐ心がほぐれ、腹ごしらえのために入った居酒屋で少しお酒が入ると、すぐにSMの話をしてしまいました。
真昼さんは聞き上手です。するすると私のアブノーマルな趣味の話が引き出されていきます。
その流れで、行ってみたいSMバーがあることを伝えました。
「行きましょ行きましょ!」
とノリノリで返答してくれる心の広い彼女に感謝して、居酒屋を出ました。
そこでもうひとり、別のX関係の友人と合流しました。
彼女(夜中さん)も知的で、古着のよく似合う、緩やかな雰囲気が魅力的な方でした。
挨拶もそこそこに、西新宿へと向かいます。
あざのない綺麗な体を夜風が撫でていきました。
②に続く