令和6年6月の初旬俺
2024年5月の半ば。
手元に10万円あった。
俺はそれを競艇のとある優勝戦に全ツした。
理由はこうだ。
金があと3万ほど足りなかった。
そう、支払いと生活費で13万くらい必要だった。
まあ遡れば、足りなくなった原因はあの日のパチンコでしかないが。
そして、その競艇で10万をきっちり溶かした。
もちろん、後悔して本気で自身を恨んだよ。なにやってんだ俺って。
失った10万はあまりにもでかい。
とりあえず、親、知人達に金を借りて詰めようと思った。銀行やサラ金はもう俺には貸してくれないから。
借りる際、注意したのはやはり聞き方。
この人は3~5万くらいいけるな、と思ったら
「タマ回してくれない?」
「どれくらい?」
「んー、10くらいかなあ」
「いやー10はきついな」
「じゃあ5でもいい」
という塩梅。もしそこで渋れば3でもいいし最悪1でもいい。
そして、そんなこんなで3人から7万ほど借りることができた。意外にも、貸してくれたその3人はいっしょに飲みに行ったことすらない関係値の薄い人達だった。
だが、まだ全然たりない。あと7万くらい。
しかし、他は誰も貸してくれなかった。
だから、最後の切り札を切ることにした。
人生初。むしろ、まさか自分がその世界に足を踏み入れるなんて思いもよらなかった。
そう、闇金だ。
昔、女子大のインカジで隣に座ったお兄さん。「今日罫線からいっすよね」とかよくある世間話からちょいちょい顔をあわせるようになって仲良くなった。「もしタマに詰まったら連絡ください、回しますよ」たしかそんなことを言われてLINEを交換した。その言い回し、雰囲気からして完全に闇金だった。
コメダの駐車場。厚い雲から青空が覗く昼下がりだった。
追い込まれた心境は胃をギュッと締め付けた。情けなさと切なさとどうにかなれ。震える指でその通話ボタンを押した。
「お久しぶりです!わかりますか?」
「あー、どうもどうも」
電話越しに信号機のぽっぽーんが聞こえた。
俺は端的に5万ほど貸してほしいと伝えた。駆け引きはしなかった、いや、できなかった。
「あー大丈夫っすよ♪」
軽快にオッケーをもらえた。そのセリフの後ろには音符がついていた。そして、俺の口座情報をLINEで送るとすぐに5万振り込まれた。
実際、利子とかそういう話は出ていない。つけなくてもよさそうな雰囲気まであった。だがまあ、1割はつけようと思う。5000円。
こうして12万をかき集めることができた。
とりあえず家賃8万、子どもの給食費やらの支払い1万、嫁へ生活費1万を渡した。
手元に残ったのは2万。
残る支払いは個人再生の3万。
あと、俺の生活費1万。
2万たりない。さてどうしよう。
考えた。 俺は考えた。
そして、たどり着いたのは
ギャンブルだった。
競艇。どこかの優勝戦。買い目は忘れたが合成オッズ3倍になるようにトータル1万円を賭けた。つまり、当たれば+2万円になるように。
俺はこれまでの人生、博打で殺されてきた。
だが、生かされたこともある。
今、ここ。今ここだけ生かしてほしい。
勝ちたい、、、!!!
勝たせてくれよおおおおおお!!!
そして、あたりまえのように負けた。
展示では3対3の枠なりだったくせに、本番で3号挺がカドに構え普通に捲って終わった。3頭なんか買うわけないやん。
残り1万円。
自身の愚により、巻き起こした理不尽。
スマホを閉じ、しばらく呆然とした。いや、これからどうするか?とずっと考えていた。
そして、答えを出した。
個人再生の返済を遅らせよう。
さすがに手持ちに1万円は残しておきたい。それに、元々焦げ付いた45組だ。
※45組(よんごーぐみ)とはカイジという漫画に登場する地下の労働施設で搾取され金がない人々のこと。
もはや世間から見放されているから遅れることもきっと想定内。許してくれるだろう。
まず、個人再生を依頼した弁護士へ電話をした。
武神な受付お姉さんに状況を説明すれば案の定、塩のような対応をされた。しかし弁護士は優しく、「各返済先に自分で電話して返済が遅れることを伝えてください」と言ってくれた。
おっけーじゅん。
ということで、俺は電話しまくった。
ここで気付いたのは、会社によって対応が違うことだ。とあるア◯ムはめちゃんこ優しく、とあるレ◯クは舌打ちをされた。
しかし、どこも返済を待ってくれることとなった。特にペナルティーとかの説明もされず、すんなりと通してくれた。
優しい世界だ。と、思った。
こんなことなら、はじめからそうしとけばよかったとまで。
だが、これでいい。
俺は11万をギャンブルに使い世界の優しさを知った。高すぎる授業料だが、仕方ない。これが俺の人生だ。
それから、俺はちまちまと暮らしている。
手元の1万円を大切に、1日1000円で。
このありあまる時間で瞑想をしたり、無駄に散歩したり、積ん読していた本を読んだ。そうすれば、なぜか気力がわいていたりする。
次はうまくやるぞ。
これは、俺の物語だ。
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