野良連合(Kizoku)が滝沢ガレンを訴えたらどっちが勝つ?法的観点からの予測
※滝ガレと野良連合(kizoku)の件に関して、他の記事も読みたい方はこちらのリンク先にまとめておきましたので、よろしければご覧ください
先日、滝ガレさん(以下、「滝ガレ」といいます。)が、野良連合の代表(現在は辞任)であるKizokuさん(以下、「kizoku」といいます。)に様々な疑惑があるとして、様々な手段を用いて公表しました。
野良連合は、これに対して、法的措置を検討すると声明を出しています。
最も考えられるのは、kizoku及び野良連合が滝ガレに対して、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟(名誉毀損もしくはプライバシー侵害)を提起することです。
それでは、仮に訴訟提起された場合、その帰趨はどうなるでしょうか。
1.名誉毀損訴訟のポイントは?
不法行為の成立要件や事実の摘示など論点はいろいろありえますが、名誉毀損訴訟では、以下の3つの要件を全て満たすかどうかが最重要ポイントです。
①滝ガレが摘示した事実が公共の利害に関する事実といえるか
②滝ガレが事実を摘示した目的がもっぱら公益を図ることにあるといえるか
③滝ガレが摘示した事実が真実であること、または真実であると信じることについて相当の理由があるといえるか
ちなみにこの3つのうち、どれか一つでもあれば良いというものではありません。3つ全てが必要です。
また、上記の3つの要件は全て滝ガレが立証しなければいけません。滝ガレが立証できなければ訴訟は滝ガレの負けです。
こっち(滝ガレ)は疑問を呈しただけだ、真実かどうかはお前(kizoku)が立証しろ、なんて立証責任を無視したことをやれば全てにおいて敗訴するでしょう。
2.裁判官はプロであり、法と証拠に基づいて判断する
ネット上では、滝ガレによる一連の事実の摘示を受けて、滝ガレが摘示した事実は真実であると判断した人間が大勢を占めているようで、これを信じた人間によって野良連合やkizokuに対して攻撃が加えられています。
これは、滝ガレの見せ方が非常にうまいこからこそであるとも言えます。
ただ、裁判官は滝ガレの見せ方で勝敗を判断することはありません。この動画面白いなー、kizokuの疑惑は真実である可能性があるなー、滝ガレの勝ちにしとくか! なんて判断は決してしません。
通常、人間はふわっとした印象に基づいて物事を判断しがちですが、裁判官はこのような自由"印象"主義で判決を下すことはありません。
冷静に、主張と証拠に基づいて事実認定をし、滝ガレが上記3つのポイントを立証できなければ容赦なく滝ガレ敗訴・kizoku勝訴の判決を出すので、ネット上でみなさんが感じた印象とはまったく違う判決がくだされる可能性は大いにあります。
それでは、以下、裁判官の判断を予測して、滝ガレが敗訴するのかどうか検討していきます。
3.疑惑1「世界大会期間中のパパ活」について
結論から言うと、この点は滝ガレの負けでしょう。
3要件で言えば、
①私人であるkizokuがパパ活をしたところで、公共の利害にはなんら影響しません。
②当然、公益目的も見当たらない。
③kizokuの認否が不明ですが、仮にkizokuがこの事実を否認した場合には真実相当性の立証は困難でしょう。kizokuがレインボーシックスシージの世界大会に出演することを知ったアンチがkizokuの画像を使った可能性は否定できません。
仮にこの点の真実相当性を立証するのであれば、滝ガレはきちんとこの値切られたという女性に接触して、本当に写真の人物であったのか等取材をするべきでした(真実相当性を立証できたところで、公共の利害に関する事実という点でアウトでしょうが)。
ただ、滝ガレに救いがあるとすると、この敗訴濃厚な事実の摘示については、『これだけ』であればkizokuの社会的評価はそれほど低下しないはずであり、『これだけ』負けるのであれば損害賠償額も数十万円ですむ可能性があります。
これに対して、他の疑惑についても敗訴するようであれば人格攻撃を伴う名誉毀損として、見逃せない増額要素となります。
4.疑惑2「未成年者への飲酒強要及び準強姦疑惑」について
率直に申し上げて、見出しの付け方があまりにセンセーショナルすぎます、疑惑とつけておけばよいというものではありません。kizokuが滝ガレに対して名誉毀損で訴訟提起をするのであればこれは重要な争点になります。
飲酒の強要や準強姦は重い犯罪です。kizokuの社会的評価(名誉)を大幅に低下させる事実の摘示であり、ここでの勝ち負けによって損害賠償金額も大きく左右されます。
それでは、上記3要件について検討していきましょう。
①未成年者への飲酒強要や準強姦というのは、公共の利害に大きく影響します。本当にkizokuがこのような犯罪行為をしているのであれば、世の人間に広く知っていただかないと被害が拡大するおそれがありますし、こういった犯罪者を野放しにするわけにはいきません。
②①のような公共の利害に大きく影響する事実であれば、広く知ってもらうという公益目的は認定されやすいでしょう。
③問題は真実相当性です。真実相当性の認定は、裁判所は非常に厳しく行っています。
滝ガレが現在提示している証拠のみでは、裁判所は真実相当性の立証はできていないと判断する可能性が高いです。
まず飲酒強要疑惑です。
女性のツイート内容を見ましたが、お酒を勧められた、しこたま酒を飲んだという記載はありますが、kizokuに飲酒を強要されたという記載はありません。相手が未成年者であっても、一緒にお酒を飲むことと飲酒を強要することはイコールではありません、大きな差があります。
次に準強姦疑惑です。
たしかにkizokuと性交渉をしたと言っている女性がいること、同意がなかったようなことを言っていることはわかります。ただ、これだけだと真実相当性の立証ができるかというと難しいと言わざるを得ません。
この女性がそうだとは言いませんが、社会には、注目されたくて、芸能人と性交渉をしたと嘘を言う方はいます(なお、週刊誌はこういったタレコミについてはきちんと裏取りをしないと記事掲載しないのが一般的です)。
滝ガレが真実相当性を立証したいのであれば、もっと綿密な取材をして裏取りしなければいけません(既にしているかもしれませんが)。
会うまでの経緯はSMSの流れでわかりますがこれだけでは足りません。
どこで何時ころに会い、どれくらい飲酒をしたのか、ビジネスホテルに行くまでどういったやり取りがあったのか、これまでに女性とkizokuとの間で性交渉はあったのか、ビジネスホテルで気がついたあとの女性とkizokuとのやり取り、その後の女性とkizokuとのやり取り、仮に準強姦だというのであれば、なぜ警察に行かずにあえてツイッターで公言だけしているのかなど、これらを綿密に取材し、これは真実準強姦が行われたのであろうという確信を抱くほど詰めなければなりません。
準強姦というのはそれほど重い事実の摘示です。
以上のとおり、疑惑2(とくに準強姦疑惑)については、滝ガレの隠し玉次第と考えます。
もうこれ以上隠し玉なんてありませんよということであれば、滝ガレ敗訴で多額の損害賠償を覚悟してもらわなくてはいけないしょうし、反対に、週刊文春のように「あれあれ? 否定するんですか? でも、こういった証拠もああいった証拠も、こんな証拠までありますよ」とやれるのであれば滝ガレ勝訴となるでしょう。
5.疑惑3-1「VALORANT部門所属選手への給与未払い」について
この疑惑も非常に重要です。準強姦疑惑とならんで訴訟のメイン争点となります。
野良連合が給与未払いをしていたという事実の摘示について真実相当性が認定されず、滝ガレ敗訴となれば、賠償額は多額となります。
野良連合が主に叩かれているのは、給与を支払っていなかったという点にあり、給与未払疑惑は野良連合の名誉そのものに直結し、売上減少にもつながるためです。
この争点の上記3要件について検討をする前に若干整理しておきましょう。
まず、野良連合と所属選手との契約がなに契約に該当するか否かという点です。
5-1.チームと選手との契約関係についての一般論
民法上の雇用契約ということであれば、報酬の取り決めは必須です。
また、民法上の請負契約という線も考えられます。請負契約も有償契約のため、報酬の取り決めは必須です。
これに対して、準委任契約という線もありえます。準委任契約であれば、報酬は取り決めをした場合にのみ支払われることになりますので、報酬を支払わないのもありです。
さて、ゲーミングチームと所属選手との間の契約はどれに該当するのでしょうか?
実はこれについては答えがでていません。ただ、どの典型契約にも合致しないので、これらの中間地点にあるような無名契約と考えられます。
問題は、チームに所属している以上、選手には必ず給与ないし報酬が支払われなければいけないかどうかという点にあります。すなわち、
①チームに所属している以上、合意がなかったとしても、給与ないし報酬は支払われなければないけないと考えるか、
それとも、
②チームに所属していても、報酬支払いがあるかどうかはわからない、取り決めをすれば支払義務が生じるものの、取り決めがなければ支払義務は生じない
と考えるかです。
eスポーツの現状(慣習)を考えると、②でしょうね。
LJLに出場するレベルのチームであれば当然、LoL部門所属の選手やスタッフに給与を支払っているでしょうが、eスポーツチームというのはこういったものだけではありません。
これからみんなで成り上がっていこうぜという有象無象のチームは山程ありますし、そういったチームに所属する選手全員に対して、チームのまとめ役が報酬を支払わなければいけないかというと、そうはならないでしょう。
5-2.給与未払いについて名誉毀損が認められるか否かの検討
それでは、今回のケースで滝ガレに名誉毀損が認められるのかどうかについて上記3要件の検討をしていきましょう。
給与未払いというのは、雇用契約などの契約を締結し、報酬もしくは給与を支払うという合意があったものの、支払われない、債務不履行の状態を意味します。
何らの債権債務が発生していないのに、給与未払いとはなりません。
これを前提にみていきましょう。
①プロゲーミングチームが給与未払いをしている、というのは公共の利害に関係する事実です。これを公表しないで放置すれば、今後も騙されて契約をする人間がでてくるおそれがあります。
②表現には人格攻撃的な部分や楽しんでいるだけではないかと見られる部分が多く、もっぱら公益目的かといわれると疑問が大きいですが、とりえあずここは公益目的ありとしておきましょう。
③問題は真実相当性についてです。ここが賠償金額を大きく左右します。
滝ガレは、LINEのやり取りのスクリーンショットを証拠としてあげていますが、もしも根拠がこのスクリーンショットだけならば敗訴は濃厚です。
というのも、滝ガレは(1)給与支払いの合意があった、(2)それにも関わらず給与は支払われなかったというのが真実である、もしくは、真実であると疑うに足りる相当な理由があることを立証しなければなりません。
契約書はないというのがまずマイナスポイントですが、それであれば給料の支払い条件などについて具体的にどのようなやりとりがあり、どのような合意があったのかについてきちんと取材をするべきです。
10万円を支払うといっても、それが月給として支払うということなのか、なんらかの条件(たとえばスポンサー契約ができて月50万円以上の収入が発生した場合に月10万円を毎月支払う、大会に参加したら10万円を支払うなど)があったのか、これだけではまったくわかりません。
仮に、将来的には、給与も最低月10万円くらいは払うようなチームにしたいので一緒に頑張っていこうという程度の合意であれば、そもそも給与未払いとは言い難いです。
このように、給与未払いについても滝ガレの隠し玉次第となりますが、隠し玉がないのであればここも敗訴は濃厚です。
6.疑惑3-2「デザイナーへの報酬未払い」について
これは滝ガレ有利です。
①野良連合が合意したデザイン報酬を支払わないどころか、kizokuが自宅にまで押しかけるとまで言ったのであれば、公共の利害に影響ありといえるでしょう。
②ここも表現がちゃかしすぎで、公益目的か否か若干あやしいところですがありとしましょう。
③チーム所属選手の契約と異なり、デザインは立派な請負契約です。報酬は当然に合意されているでしょうし、被害にあった(実際に請け負った)人物の証言があるのであれば、真実相当性の立証までいける可能性はかなり高いです。
7.疑惑4「所属選手への恫喝」について
これも滝ガレ有利と考えます。
①eスポーツチームのオーナーが選手へ恫喝を行っているというのは、見逃せない事実であり、今後同じような被害者が出るおそれがあることからすると、公共の利害に関する事実といえるでしょう。
②ここの表現はそれほどちゃかしておらず、もっぱら公益をはかる目的といえるでしょう。
③真実性ですが、きちんと録音もとれているので立証できるのではないかと考えます。
8.その他の給与未払い疑惑について
ここは5の「VALORANT部門所属選手への給与未払い」についてでふれたとおりです。
①公共の利害に関する事実、②公益目的というのは満たす可能性が高いです。
③問題はやはり真実相当性にあります。様々なDMがさらされていますが、どれも給与もしくは報酬支払の合意があったのか疑問が大きいところです。隠し玉があるのであれば滝ガレ有利ですし、ないのであれば敗訴濃厚です。
9.まとめ
以上のとおり、野良連合(kzioku)が滝ガレを訴えた場合の勝敗予想ですが、
・パパ活は滝ガレの敗訴濃厚
・未成年者への飲酒強要及び準強姦疑惑、給与未払いについては現状あげられた証拠のみでは真実相当性にかなりの疑問があり、滝ガレの隠し玉がない限り滝ガレの敗訴濃厚
・デザイナーへの報酬未払い及び所属選手への恫喝については滝ガレ勝訴の可能性が高いと思われる(そもそも、kizoku側がこれら敗けそうな事実の摘示については提訴しない可能性もありますが)
というところです。
私見ですが、もしもnote投稿通りの時系列でやっているのであれば、滝ガレはリーク情報の魅力にとりつかれ、また、kizokuからの警告に反感を覚えて、我を忘れてしまったように思われます。
滝ガレとしては、kizokuの社会的地位の失墜を狙ったのでしょうが、勝訴の可能性が高い、デザイナーへの報酬未払いと所属選手への恫喝だけで目的を達することができたのではないでしょうか。
敗訴した場合には、きちんと損害賠償金を支払い、今後は匿名のリーク情報だけで完結せず、綿密な取材を心がけ、冷静にどこまでなら法的にセーフかということを検討されるようおすすめします。
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