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いつもの街のいつもの笑顔のために

パッケージ中澤は、島根県松江市を拠点とする紙器製造メーカーだ。和洋菓子のパッケージに特化した製品展開で、1958年の創業以来60年以上にわたり食のプロたちを支えてきた。

紙器:紙の加工製品全般を指す言葉。1911年の大英博覧会を訪れた日本の実業家・田島志一氏がイギリスの紙製品(paperware)に魅了され「紙器」と名付けたことがきっかけで定義された。田島氏は帰国後「日本紙器製造所」を設立、その後の日本の紙業発展に大きく貢献した。

2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響で営業活動がほぼ潰えているにも関わらず、売り上げは好調。特にレジ袋有料化に伴い人々が店でショッパーを受け取らなくなったことが、洋菓子のパッケージにおいては有利に働いているという。

これまでパティスリーでは、ケーキを持ち手のない箱に入れ、さらにその箱をショッパーに入れて購入者へ渡す形式を採るところが多かった。しかしレジ袋有料化以降は、ショッパーがなくてもそのまま持ち帰れるような手提げのケーキ箱を導入する店が増加。

その結果、パッケージ中澤では手提げのケーキ箱「OPL(オープンロック)」の受注が急増し、一時期生産が追いつかないほどの売れ行きになったという。

松浦静夫さんは、パッケージ中澤で40年以上パッケージ製造に打ち込んできたトムソン課の木型職人。「トムソン(加工)」とは、刃を組み込んだ木型を使い、紙やフィルムを型抜きする工程のことで、地域によっては「打抜き加工」や「ビク抜き加工」とも呼ばれる。

すべての箱の大元となる型づくりを担う職人として、1mmにも満たない細かな数値の調整に心血を注ぎ続ける松浦さん。そんな彼にとって「いいパッケージ」とは何か聞いてみた。

「完璧な箱ってね、音がするんです。蓋を閉めた時にカチッ、って気持ちの良い音がする。“良い音がする箱”っていうのが私のひとつの指標ですね。
音がするっていうことはつまり、寸法がぴったりで緩みがない状態。緩みがない箱は強度が高い。そう簡単には潰れません」

届けたい「もの」と「思い」をほんの僅かでも損なうことなく届けるために。職人たちは今日もパッケージの可能性を追求し続ける。

「私たちの仕事は、使う人の当たり前をつくることです。誰でも当たり前に、普通に、気持ちよく使えるものをつくるのが私たちの使命。
だけどそれだけじゃなくて、その”当たり前”をちょっとずつ引き上げていけたらと思うんです。箱の中の小さな工夫に気づく人は少ないかもしれないけど、それでいい。私たちはいいものをつくるだけです。
これは箱屋のプロとしての自負というか…プライドの戦いみたいなものじゃないでしょうか」

パッケージ中澤
〒690-0021 島根県松江市矢田町250-2
https://p-nakazawa.com/