カカオマスに個性を宿す
大東カカオ研究開発部では、カカオマスの開発に力を注いでいる。
カカオマスとは、カカオ豆を発酵、焙煎、磨砕しペースト状、またはそのペーストを固形状に固めたもので、同じ豆を使っても各工程をどのように踏んでいくかでその特徴は大きく変化していく。チョコレートをつくる際にはカカオマスを数種類ブレンドしたものをベースに、砂糖・粉乳・植物油などを加えて味わいを形成する。つまり、カカオマスがチョコレートの最終的な味わいを左右すると言っても過言ではない。
新たに仕入れたカカオ豆を元にした開発は勿論、手持ちのカカオ豆の可能性を広げるためにそれまでとは違うアプローチで再開発に着手することも。素材の力を信じる研究員たちの強い意志によって、プロジェクトは推進されていく。
研究開発部門を率いる春成麻未さんはこう話す。
「私たちがつくるのは製菓の原料としてのチョコレート。なのでやはり、シェフたちにインスピレーションを与えるようなものにしたいと考えています。そのためには、一つひとつが何かしらの個性を持ったものに仕上げていかないといけない。カカオマスはそのその土台にあたる部分ですね。
味や食感という目に見えないものを形にしていく上では、周囲とのコミュニケーションが必要不可欠です。“硬い”という言葉ひとつとっても、一人一人の考え方は当然違うもの。物理的に硬いのか、あるいは触った時にねっとりしてることを“硬い”と表現しているのか。現場のシェフ、そしてチームのメンバーとも日々根気強くやり取りを繰り返して、イメージをできるだけ具体的に共有していくことが重要です」
カカオマスの数があればあるほど、つくれるチョコレートの可能性は広がっていく。だからこそ、彼らは挑戦を続けるのだ。