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冷凍生地職人の流儀

冷凍生地メーカー・イズムの原点である大阪の四條畷(しじょうなわて)工場には、製パンの現場に基づく様々なアイデアが詰まっている。

その象徴とも言えるのが、分断された油脂の折込ラインだ。
イズムの工場では、一度目の折込が終わると一旦生地をカットし、ラインから下ろす作業を行う。二度目の折込の際は別のラインへと移され、生地をもう一度ラインに置いて生地を繋ぎ直す。(写真上:一度目の折込ライン終着点/下:二度目の折込ラインスタート地点)

二度の折込を一続きで行うメーカーも多いなか、なぜ敢えてラインを分断するのだろうか?

答えは、パン屋の厨房にある。クロワッサン生地をつくる際、シェフたちは折込を行った後に必ず生地を冷やして休ませる。温度上昇に伴う生地の緩みの抑制と、油脂の溶け出しを防いで綺麗な層をつくるのがその主な目的だ。

それと全く同じことが、イズムの工場でも行われている。一度目の折込が終わってカットされた生地は、工場内の冷蔵庫へと運ばれ30分〜1時間程度冷やされる。ここで生地の状態を整え、二度目の折込へと移されるのだ。

ラインを分断したことによって、必要な人員も、手間も増えた。決して合理的とは言えないが、そこには創業時から脈々と続くイズムのある思いがあった。

研究開発部を率いる田部井部長は当時を振り返りこう語る。

「創業時のメンバーは全員が製パン経験者でした。現場を知る人間がつくったからこそ「クロワッサンをつくるなら折込の後に休ませないとおかしい」という発想になったんだと思います。

ただ綺麗な層がつくれれば良いというだけなら、工場のライン専用の油脂を使うという選択肢もありました。温度が上がっても溶けにくい特別な性質を持つ油脂で、たしかにそれを使えば層は残るし作業効率も上がります。ですが高温でも溶けにくいということは、人の口のなかに入れても溶けにくいということ。結局のところ、あまり美味しくないんです」

シェフたちのリクエストに応えるためにも、新たな製品開発のためにも、使う原料や製法はできるだけ限定しない。機械都合で美味しさの可能性が狭まるなら人の手で拓く、それがイズムの流儀だ。

イズム
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