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いまだに新種がみつかる!? なんともダイナミックなカカオの世界。

フランスの老舗チョコレートメーカー・ヴァローナには4名のスペシャリストによる「カカオ供給チーム」が存在する。
彼らの重要なミッション。それは、カカオの種の保全活動だ。

長い歴史のなかで定説とされてきたカカオの品種といえば、クリオロ、フォラステロ、トリニタリオの3種類。しかし環境の変化と共に自然交配が進んだ結果、昨今の遺伝子研究によると現在では10種類、あるいは14,15種類のグループに分けられるとも言われている。とはいえまだはっきりと解明はされておらず、また種の数は今後も増えていく見通しだというが、一方で純粋な在来種たちはその存在を脅かされつつある。

そういった現状に対し、ヴァローナは各国の生産者と連携しながら各地に息づくカカオの種を守るための活動を行っている。

「現地の視察や、その土地に農学センターなどがあれば訪問し、協力を仰ぎながらまずは現状をよく理解するよう努めます。これに関してもとにかくケースバイケースで決まったやり方はありませんが、そこがまた面白い部分でもあるんですよ。大事なのは、土地、パートナー、栽培の“今”をよく理解すること。もう一度言いますが、定石を踏むような戦略は存在しません。技術革新が進んでいる国もあればそうでない国もある。カカオとの向き合い方は国ごとにバラバラですから」

そう話すのは「カカオ供給チーム」の一員、農学者のジュリアン・デスメ氏。
その土地のカカオをとりまく状況を分析し、保全すべき種であると判断すると、チームは現地の生産者との合意に向けて動き出す。双方にとってベストな方法を模索していく過程で、希少種を守る生産体制は少しずつ構築されていく。

「例えば、ペルーのピウラ地方で新たに識別されたカカオに『グラン・ブランコ』と呼ばれる種があります。その名の通り真っ白で(*)、クリーミーなカカオ豆がポッドの中にぎっしりと詰まった純粋なカカオ品種です。少し前まで人の手が入っていなかったので現段階ではまだ多くのカカオを採ることはできませんが、現地には今私たちが管理している小さな農園があり、ペルー人のパートナーによって栽培が進められています。この希少なカカオを守る手段として、そしてこれが生産者と私たち双方にとってフェアで良いビジネスチャンスにもなるという確信のもと、私たちは新たなプロジェクトを立ち上げました」

*グラン・ブランコ(Gran Blanco)は日本語で「雄大な白」の意

このプロジェクトの成果として、2012年に完成したのが『イランカ』(日本では2015年から販売開始)。グラン・ブランコの特徴を活かしたクリーミーさと、ブラックベリーやブルーベリーを思わせるシャープな酸味、力強いカカオ感が印象的なクーベルチュールだ。

「先ほどお伝えした通りまだ安定した供給量の確保には至っていませんが、種を絶やさないためにも引き続き『グラン・ブランコ』の栽培には力を入れていきたいと考えています。どんなに小さくともその遺伝子を守り、カカオの新たな風味の発見を続けていくというのは、ヴァローナが創業時から取り組みつづけてきた、いわば使命なんです。

なにより、カカオはチョコレートメーカーにとって言わずもがな最も重要な材料です。カカオの種を守ること、それはつまり“チョコレートの味の多様性”を守ることとイコールと言っても良いでしょう」

良質なチョコレートの基本は何よりもまず高品質なカカオ豆を使用することーー創業者アルベリック・ギロネのものづくり思想は、今日のヴァローナを突き動かし、彼らをまだ見ぬ地平へと向かわせている。

ヴァローナ ジャポン
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