鮮度保持のプロが語る、見落としがちなファーストステップ
食品の嗜好的品質や栄養価値が下がる大きな原因は、食品中に含まれる成分の酸化。酸化は食品の色や風味に大きな影響を及ぼし、廃棄ロスや消費者クレームの一因にも繋がる。
これを防ぐためにパティスリーやベーカリーで多く用いられるのが「脱酸素剤」だ。
脱酸素剤は、鉄が錆びる時に酸素と結合する働きを活かして、密封した容器内の酸素を吸収し酸化による食品への悪影響を防いでくれる優れもの。
とはいえ一口に脱酸素剤と言っても様々なサイズや特性があり、どれが自分のお菓子に合うものなのか頭を悩ませた経験のあるシェフも多いだろう。鮮度保持剤メーカー・鳥繁産業が設立したシェフ向けの相談窓口「お菓子の相談室」には、「商品の鮮度保持がうまくいかないので脱酸素剤選びを見直したい」といった悩みも多く寄せられる。
「でも実は問題ってその手前にあることが多いんです。脱酸素剤がどうかと言うより、そもそも容器の密閉に不具合があるケースはお店の規模感や年数関係なくよく見受けられますね」
そう話すのは、品質管理課を率いる工藤豊さん。
品質管理課では、お菓子そのものの検査に取り掛かる前にまず専用の測定器を用いて容器内の酸素濃度をチェックする。
脱酸素剤が入っているにも関わらず酸素濃度が規定値を上回る場合は、どこからか空気が流入している可能性が高い。その場合はシールチェッカーと呼ばれる浸透性の高い液体を袋のシール部分に垂らし、問題箇所の洗い出しを行う。
「最近は包装にガゼット袋を使う方が多いと思うのですが、ガゼット袋はフィルムが何枚も重なるので失敗しやすい。特に古いシーラーだと熱がかかりにくいので、厚みが出る部分の接着が難しいんです。
あるいは機械の設定に原因がある場合もあります。長年店をやられていると包装材を変えたり種類を増やしたりするタイミングがあると思うのですが、その際初めに使っていた包装材用の設定のままやってしまうのはトラブルの素。手間はかかりますが、包装材ごとに設定を見直せばトラブルは減らせるはずです」
鳥繁産業ではお菓子以外の要因から幅広く考察し、衛生管理全般に関する包括的なアドバイスを行う。なぜなら、いくら鮮度保持剤を使っても、適切な条件下でなければその能力は生かされないからだ。
「シェフの皆さんが消費者に提供しているのは、『美味しいお菓子』と、その先にある『心豊かな時間』。お店と消費者の絆を深める機会を、鮮度保持の観点からこれからも一緒につくっていきたいんです」
鮮度保持はお菓子そのものに対してだけ施せば良いわけではない。全国のパティスリーが人々から愛される店であり続けられるように、鳥繁産業は今日も衛生管理全般のサポートを使命に掲げシェフたちと共に走り続ける。
鳥繁産業
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