今堀拓也 交響曲第1番 (プログラムノート)
来たる2024年11月27日に行われる演奏会「オーケストラ・プロジェクト2024」
にて当日配布されるプログラムノートを先行公開します。
今堀拓也 交響曲第1番 (初演)
Takuya IMAHORI: Prima Sinfonia
私はいつも作曲の基礎的な骨組みを作る際、アルゴリズム作曲ソフトウェア OpenMusic にその多くを頼っているが、これはその全ての計算過程を自分で組み立てたものである。学習型生成 AI とは根本的に異なり、隅から隅まで自分で書いたアルゴリズムであり、作曲システムの根幹である。
この交響曲は単一楽章で、8 つの主題を持つ伝統的なソナタ形式を拡張したものである。この交響曲で計算したことは主に次の 2 つである。まず全体の時間を割り振った。全体を 24 分 20 秒と決めて黄金比 1.618:1でまず 2 分割し、さらにそれをまた黄金比で分割していき、最終的に 16分割した。テンポは四分音符 144,128,112,96,80,72,64,48 と徐々に遅くなり、[8] の最後にある黄金分割点を超えた後半で逆順に辿り速くなる。もう一つの重要な計算は、微分音程の和音を含む音程素材の決定である。
[1] テンポ 144 素早く 16 分音符単位で入れ替わる各種教会旋法のディアトニックと、それに対応する残りのペンタトニックとの対比。
[2] テンポ 128 完全 5 度、完全 4 度、長 7 和音の堆積の提示。
[3] テンポ 112 ペンタトニックを半音ずらした 10 音と残り 2 音の完全 5度による 12 音セリーの前後入れ替えによる推移。
[4] テンポ 96 グリッサンド素材と微分音によるアルペジオの対比。
[5] テンポ 80 自然倍音の各部分音の音程の比率をセント単位で圧縮する。
[6] テンポ 72 半音階の低音の動きを中心とし、弦は演奏しない。
[7] テンポ 64 グリッサンドで下降する完全 5 度のヴァイオリンが主軸。
[8] テンポ 48 [2] で出た完全 4 度堆積、完全 5 度堆積が、周波数移調frequency shift により微分音の和音として圧縮され、ピッツィカートで提示される。
全体の黄金分割点をピアニシモで越え、[9] 以降は全体の展開部となる。[12] の最後にある後半 4 分の 3 の黄金分割点でクライマックスを構築し、
残る 4 部分は再現部を兼ねるコーダとなる。
2024 年 3 月半ばから 2 ヶ月間のブラジル滞在の経験が、本曲の特に後半の展開部以降に大きく影響を及ぼしている。ウェブマガジン「メルキュール・デザール」に本曲の分析的解説を掲載して頂いたので、より詳細に知りたい方はご一読下さい。
大井剛史氏と東京フィルハーモニー交響楽団の皆様に感謝します。