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宗教の凄さを感じたベオグラード、あとニコラ•ステラも。

2023/11/26  セルビア ベオグラード 🇷🇸

朝6時前。セルビアのベオグラードに到着した。 

早朝、バスターミナルのカフェが6時から開店する様だったのでそちらでコーヒーを頂いた。店内はバスの利用者でいっぱいだったが、ほとんどが現地の人だったと思う。店内はコーヒーとタバコの匂いが充満していた。

カフェにはWi-Fiも特になく、オフラインでの作業しか出来なかったのだがなんとか観光の時間まで時間を潰す。行きたいカフェが幸いにも7時半くらいから空いているとのことだったので意外に慌ただしかった。

セルビアには夜行バスイン夜行バスアウトの予定で旅程を組んでいたので、キャリーケースは駅の施設に預ける事にした。なんとここの預け場所は大きな倉庫に荷物を預け入れるシステムで常駐の管理人さんがいる仕様だった。日本ではもうあまり見かけないその光景に少し興奮する。その倉庫の外観や内装はイメージしているものよりも無機質なのだが、管理人さんに荷物を預けるこのシステムは私からするととても映画の中で見る1900年代の文化であった為だ。

ベオグラードの街を歩いてカフェに向かう。この日はどうやらマラソンか何かが催されているようでお大きなゲートが道路上に設置されていたことを覚えている。

私が目指していたのはホテル・モスクワ。1908年開業の老舗ホテル、一階部分を占めているそのカフェは格式高く、夜行バスに乗ってきた私の身なりではとても恥ずかしいなと思う程に洗練された美しい内装だった。しかし、このカフェでは食べたいものがあったので格好には目を瞑ってもらう事にしよう。ちなみに、基本的には皆他所行きの格好をしていたのだが、数人の実業家っぽい雰囲気を漂わせた男性は綺麗めのスウェットを着用していたと思う。ただ、TPO的にも舐められないためにも一定水準の綺麗めな格好で訪れる場所だとは思った。この時に私にだけサービスが酷かったとか舐められたというわけではないのだが、まあ先方への礼儀的にも大事だなと思うので。
歴史あるホテルなのでメニューにもホテルの創始者や開業当初の話などが記載されていて興味深い。

朝ごはんに簡易的なパンとカフェラテを注文した。そして食べたかったのはこのケーキである。モスクワ・シュニットというそのケーキはサワーチェリー、桃、パイナップル、アーモンド、胡桃、特製のクリームと沢山の食材が組み合わされたもので、セルビアを代表するケーキの一つとなっている。このホテルが改装された1974年に初代パティシエのアニツァ・ジェピナ氏によって考案されたものらしい。

カフェ内では途中からピアニストの生演奏が始まった。早朝は人が少なく、また一人客も少ないと思っていたのだが、横に1人の男性が荷物を置いた。勝手に親近感を沸かせたのも束の間、彼はカバンからスコアを取り出して席の後ろに置かれていたピアノへと歩を進めた。そう、彼はピアニストだったのだ。

先程のケーキを楽しみながら生演奏に耳を傾けられるとはなんと贅沢な。お陰様でとても優雅な気持ちで朝を迎えることができた。

街の散策に繰り出すと、ベオグラードがアートに精通した場所であることが分かる。落書きであるものの、可愛らしいデザインのものやユニークなオブジェが沢山設置されていた。

初めはベオグラードの人気観光地となっているベオグラード要塞に向かう事にした。紀元前に建てられた要塞らしいのだが、現在はその要塞を中心にカレメグダン城址公園が築かれている。公園はかなり広大で、博物館やテニスコート、子供向けのレジャー施設などを含蓄した観光地兼市民の憩いの場となっている様だった。

ドナウ川とサヴァ川の合流地点に位置しており、城壁付近からは巨大な川と共にベオグラードの街並みを堪能することができた。またその広大な史跡をバックに敷地内を走っている集団に目が止まる。今朝のランニングイベントか何かのあのゲートを思い出した。こうした場所を走るのは気持ちがいいだろうなと思う。家の近くにこんな場所があれば私にもランニングの習慣がつくのにとたらればを述べ実際にはあっても結局私には続けられないんだろうななんて思ったりする。

城壁の近くには教会も築かれていた。装飾が美しく、クリスチャンでなくても割と興奮してしまう内装だった。また、別の教会から音楽の音が聞こえたので入ってみるとそこではまさに礼拝が行われている最中だった。流石にこの神聖な場をクリスチャンでない私が冒涜してはいけないと思い写真撮影などの目立つ行為は控え、またホールにも入らずに扉のガラス越しに礼拝堂内を見学させてもらう事にした。この場所は今回の旅の中でも最も神聖な場として印象に残っている。教会の収容人数もかなりの規模だと思うのだが、その礼拝堂が満員で私がお邪魔させてもらった廊下の部分でもお祈りをしたり一緒に讃美歌を歌っている人が数十人はいたはずだ。去年の今日は日曜日だったのできっと日曜礼拝なのだろうが、毎週この行事をこなしているというのはセルビアの人々がいかにキリスト教を真剣に信仰しているのかを感じられる体験となった。
ところで、この体験以外にも東ヨーロッパは西ヨーロッパに比べて、宗教信仰文化が強く残っているように思われた。それは観光として訪れた教会の豪華絢爛さとそこに祀られている聖偉人の絵画に対して十字架を切り、口付けをする姿をよく見かけたからである。西の方がより観光地化されているのもあってか、教会内でも信仰のための訪問者より観光客の方が多かったからそう見えたのか、宗派による違いなのかは定かではない。そんな光景から彼らの心にはきっとイエスの存在が大きく影響しているのだろうなと思ったりした。
私は特に能動的に何かの宗教を信仰しているわけではないのだが、さまざまな宗教について学ぶのは楽しいと思っている。その為に、高校大学とミッション系の学校だったのだがキリスト教の授業は苦ではなかったし礼拝はむしろ好きな方だった。はたまた旅行先ではイスラーム教やヒンドゥー教、さらにはシク教の聖地にまで足を運んだことがある。それで思うのはやはりなぜ宗教というものが存在するのかという疑問である。別に個人的な信仰事情としてはいないと思っている訳でもなく特に強い持論がないだけなのだが、以前どこかで人間のいるところには必ず宗教が生まれるという話を聞いたことがある。それが真なのか否か、また信仰対象は違えど何故さまざまな文化圏の人が宗教を信仰する様になったのかに関してはかなり知的好奇心がくすぐられるなと思っている命題である。

また話が脱線してしまったのだが、公園の散歩を終えてからは11時と少し早めではあったものの再び軽食屋に入る事にした。私はあざといレベルとかではなく生粋の苺好きなので寒かったもののフレッシュジュースを見た瞬間それをオーダーし、食べ物はトマトベースのソースに半熟目玉焼きにバケットが添えられた軽食をオーダーした。これが少しピリ辛で美味しかった。体が温まる。ベオグラードはカフェ文化もかなり根付いているようで、おしゃれなカフェが沢山見受けられた。チェックしていたカフェだけでも相当な数で、このカフェも気になっていた場所だったので来られてよかったと思う。問題はお手洗いの洗面台が私の身長に対して高すぎるという点である。海外に行くと150センチに満たない私の身長だとたまに起きてしまうこの悲劇。高身長になりたかった身からすると悲しいかな。まあ受け入れるしかないことよなと再び街にくりだした。

先程も述べた通りにベオグラードの街はアートで溢れている。何かしらの装飾で使われるのだろうと思しき巨大な青い物体やこれはアートではないもののその経緯が気になるゴミ箱の上に置かれたバナナなど個性豊かな情景が展開されていた。ドレス屋さんも多かったのでベオグラードはパーティが多いのだろうかと気になった。そんな中、多少の急足である場所へと向かう。

そう、そこはニコラ・テスラ博物館である。セルビアの100ディナール紙幣は彼の肖像画印字されており、その名が起用された通りや電気学校、さらには空港まで作られてしまうほど人気の高いニコラ・テスラ。その博物館見学は完全ガイドツアーで人数と時間がしっかりと区切られていた。英語とセルビア語かでその時間が分かれていたので英語ツアーの時間に間に合うように急いでいたのである。なんとか時間前に到着できた。
しかし、ついたは良いもののそこには長蛇の列があり、観光客で賑わっていた。取り敢えず並んでみる。時間になり扉が開かれたものの、私の前に数十人を残してその扉は閉じられた。その人気っぷりに驚くとともにそれ程までの博物館なのかと期待値も上がる。インターネットの情報とは異なり、運よく次の回も英語でのガイドだったので扉の前で次の回まで丸々一ツアー分の時間を潰す事にした。次の回もギリギリだとまた入れない可能性があると懸念して取った策であったが数十人が同じように待機していたものの諦めてかまた戻ってくるつもりなのか、その場を離れる人もそれなりにいた。寒空の下、雪も降り始めていたのでそれなりにきつくもあったのだが、たまたま何かのきっかけで話したトルコ出身の女性と仲良くなりおしゃべりをしていたので割とあっという間だった気もする。自己紹介として私が映画批評を専攻している学生だと話すと、彼女は”gora”と”cem yilmaz”というタイトルのトルコ映画を勧めてくれた。申し訳ないのだが、そのことをすっかり忘れていてまだ見ていなかったので今度見てみようと思う。

1時間が経過し、再び扉が開かれる。遂に我々の番が来た。彼女は他に同伴者がいたので館内では別行動。お礼を言って分かれた。別行動と言っても全体で一気に回るツアーではあるのだが。初めはチケットを購入してからニコラ・テスラの私物や実験器具の展示を自由に鑑賞するスペースが設けられていた。そこに人が集まっているなと思ったら遺灰が収められていたらしく中々の衝撃である。全体の受付が終了して扉が閉ざされると、スクリーンの前へと誘導され、映像資料の鑑賞に移る。その後は複数の機械で実演がなされ、最終的には世界層電動システムを実体験できた。コ交流モーターが駆動する事を示すためのロンブスの卵、送配電のデモンストレーションをしてくれる装置、ネオン点灯の実験も興味深いのだが、やはりこの世界ワイヤレス送電システムによる実験の面白さは群を抜いている。挙手性で選ばれた希望者が蛍光灯を持ち、そこにこの巨大装置から電気が流れる様子を目撃することができるのだ。
私は希望者として手を挙げることはしなかったのだが、全体のツアーが終わり多少の自由時間が設けられた折に電気を触る体験はしてきた。多少ピリッとは来たものの、全く痛くなく貴重な体験をすることができた。

正直な所全てが英語での説明だったのと私が電気に対しての知識が欠如していたことから完全に理解出来た訳ではないと思うのだが、これまたテスラコイルや電気に対して学びたい意欲を掻き立てられてしまった。ベオグラードに来た際は訪れる価値のある場所だと思う。

再び街を徘徊しつつ、お手洗いを使用したいと思い休憩も兼ねてカフェに立ち寄った。しかし、その人気ぶりがすごく2階まである店内はベオグラードの若者で満員となっており、お手洗いだけ借りてラテをテイクアウトする事にした。

再び街の教会に入る。丸いドームが特徴のその教会は見た目は教会というよりもモスクに近い印象を受けた。セルビア正教の中心的な教会である聖サヴァ大聖堂は東方正教の中では最大規模の大きさを誇っている。私が訪れた際はすでに中は豪華絢爛であるものの、未だに建設途中であったらしい。
多くの信者が祈りを捧げにやってきていた。あくまでお邪魔させていただいている身からの敬意を示すために私も見よう見まねで十字架を切ってみる。煌びやかなその内装はヨーロッパでたくさんの場所に訪れたこの期間の中でも最も美しかったのではないかと思うほどの美しさを備えていた。

教会を出て散策しながら小腹を満たそうと現地の人で適度に賑わっていたホットドック屋に入ってみる事にした。路面店のそのお店は道路側に透明なビニールで覆われたイートインスペースが設けられていた。混みすぎている訳ではないので席の確保も容易だったのだが、私が滞在していた際にも数組のお客が入れ替わり立ち替わりホットドックを食べにきていた。そのうちひと組が警察なのかパトロール隊なのか、仕事中の軽食として購入していたのだが、彼らの連れていた犬が私の足元に擦り寄ってきてとてつもなく可愛かった事を覚えている。

再び散策をしながらどうしても着たかった場所へと歩を進める。その前に何故かこれも目をつけていたカフェが近かったのに立ち寄っている私、どんだけカフェ好きなのさと詰め込みすぎでしょと思いながらもここでの創作ドリンクも美味しかった事を思い出した。

所で、その目指していた場所はユーゴスラビア解体後に起こったコソボ紛争にてミサイル攻撃を受けた旧国防省のビルである。その跡地がそのまま街中に残されているので、中々の衝撃。この度がボスニアヘルツェゴビナから入っていることもあり、セルビアが敵国的な立場の説明を受けていたので複雑な気持ちを持っていたのだが、やはり誰が正義で誰が敵だということはない。強いていうのであれば戦争自体が悪なのだなと時間できる建物だと感じた。実際世界平和がいかに難しいのかということを思うと平和を目指そうなどとは簡単には言いえないと思ってしまう。しかし、この街中に突如現れた戦争の遺物は言葉以上にその悲惨さと避けるべき事象であることの重要性を示してくれていた。ずしんと心にくるものがある。

久々のポストコレクション

午後5時を過ぎると辺りはもう暗くなっている。
街を歩き教会に入り、そしてまたカフェに入る。こちらも何かで見ていたのか、ケーキが美味しそうすぎて入ってしまったのか。ケーキは美味しかったし食べ過ぎだよなと思いつつもベオグラードを堪能できた余韻に浸ることができて幸せな時間だった。

巨大なオブジェを鑑賞し、現地の人々で賑わう中心街の方に向かってみる事にした。道中で見知った顔の人だと思ったら、その人は先日モスタルの宿で一緒だった中国出身の男の子であった。こんな偶然もあるんだねとお互い驚きつつも彼は電車の時刻が迫っていたらしく、お互いのこれから先の旅路の幸運を祈ってお別れをした。

アダプターを使用しての充電が夜行バスや電車だとバランスが取り辛くて不便だと思っていたのでついにここで現地のタイプに合わせた充電器を購入してしまった。選択肢が少なく割高だったような気がするのだが仕方がない。必要経費として計上する。また、すでに帰っている予定だったので益々寒くなっていく旅を懸念してニット帽とマフラーも購入してしまった。今夜も夜行バスなのでこれがまた毛布代わりとしても役に立つだろうと見込んでの選択だ。
安易にものを増やせないので久々のショッピングに心が躍る。これまた楽しい時間だった。

また中心街の賑わいは華やかで、ガラス張りの建物で企画展が開催されていたり、中でも書店が美しかったりとベオグラードのポテンシャルの高さを持って夜の街を堪能することができた。至る所に本屋があったのだが、本当に各箇所個性的で素敵な場所だった。

時間も近づいてきたということでバスに向かう。
本日も夜行バス。夜行バイン夜行バアウトとは我ながら中々のたいとスケジュールだよなと思うのだが、限られた時間でいかに多くの場所に訪れるかに重きを置いていた私としては最適解だった。

途中に寄る日本でいうサービスエリアも新鮮で面白い。ただ、日本と違って何時に出発するという告知がちゃんとある訳ではなかったので置いていかれないかだけはめちゃくちゃに心配だった。

本日も貴重品のリュックを枕に新しく手に入れたマフラーで暖を取って眠りについた。

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