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W4D4 芝崎鋼機・夜-시바사키 강기/ 밤

海芝崎駅に直結している工場、芝崎鋼機川崎営業所の中。
絶えずプラントの機械を作る激しい金属音と、液体の流れる流音、それから時々聞こえてくる人の声が、工場の広い空間に響いていた。

ここで働く錦織は、その音に少しばかり苛立ちを覚えていた。
大卒でこの仕事に入ってから、厳しい上司や三交代制の激しい勤務に耐えてきた。
しかし、最近は旺盛な工業製品需要を満たしつつ、働き方改革なるものが中途半端にしか実行されていない現場で人手不足に対処するため、ただ勤務時間ばかりがいたずらに伸び、疲労とストレスをためていくしかなかった。

「お前は何をやっているんだ!」工場長である金子は、男、田中めがけて口角から唾を飛ばしながらしかりつける。
うっかりスイッチをつけ忘れてしまい、製品のクオリティに大きな問題が出てしまったという。
普段であれば気を付けることではあるが、もう今まで十八時間勤務を続け、昼食も夜食もない中で働くのは、さすがに精神力が持たなくなっている。
家に帰っても好きなことや勉強をする暇はなく、シャワーを浴びることもなく眠るだけだ。
そんな生活が約一年続き、意識も朦朧としている。
その中で叱られることも増え、そして今も叱られていた。

「スイッチを入れずに動かしたらどれだけ製品が無駄になるのか、わかっているのか!」

金子は叫ぶ。その叫びを、田中はうんざりしたように聞く。
しかし、そのような素振りを見せてはならない。
だからこそ、黙ってその場にとどまり、うなだれたような様子を見せる。
そうすればあまり派手な問題にはならないものだ。

その様に、適当に流しておけばいい。
ただ、今はそれができない。
聞き流しているうちに心にその怒りが突き刺さり、激しい怒りになっていく。
その怒りをどう逃したらいいのかわからずにこらえていると、涙が出てくる。

「泣きたいのは私の方だ!」金子は叫ぶ。

その後もクオリティだの、何だのと言った、反復する言葉で田中を金子は責め立てていく。
ついに田中は耐えきれなくなり、「すみません」といってその場を立ち去る。
そして更衣室で何も言わずに服を着替えると、今まで着ていた作業着をゴミ箱に突っ込む。
そのまま田中は駐輪場へと向かうと、自転車に乗った。

一体どうしてこんな思いをしなければならないのか。
こんなことが大企業である芝崎でも許されてしまっている。
そのほかもろもろも怒り。
それだけの怒りが沸き起こる分、まだ自分は元気なのかもしれないと、乾いた笑いが起こる。

しかし、次の瞬間、涙が流れてきた。

このまま運転するのは危険だと、田中は自転車を降りる。
涙は止まらず、ずっと流れっぱなしである。
その悲しみを言葉にすることもできず、ただ嗚咽している。
そんな時、一人の狐の面をかぶった男に出会った。

「田中陽介さんですね?」

男は言う。

「はい……」

田中はぎこちなくうなずくと、男の顔をまじまじと観察する。
男は笑うこともなく、顔を傾ける。
すると男の手には花束があった。

「おめでとう。あなたはニッポニアの兵士となり、この社会に巣くう反日分子を倒すのです」

「反日?」

田中はけげんな目で男を見つめる。

「ええ。あなたは金子、という男をご存じですね。彼は在日コリアンであり、日本人をこき使い、奴隷化をしようとしているのです。そしてあなたを奴隷として育て上げ、永遠に在日にかしずく存在とするべく、厳しく教育をしているのです」

「金子、さんが……」

田中は目を大きく見開く。
しばらく呆然としていたが、すぐに「あいつ!」と激しい怒りを見せ、叫ぶ。

「あいつは俺を奴隷にするために俺にあんなことをしたのか! 俺、何のために二十連勤十八時間も働いていたんだよ! 給料もでねぇしよ!」

田中は叫ぶ。

「しかも芝崎鋼機社は人員を増やそうとしているのに、在日である金子工場長は人件費の七割を彼の口座に移し替えていたのですよ」

男はゆったりとした声で言う。
その言葉は田中を怒らせるには充分であった。

「あいつ! 俺を何だと思っていたんだ!」

その瞬間、男の眼からは涙がこぼれる。

「あなたはそんな反日工場長と、そんな彼を操るマスクドオルカという逆賊を殺害し、在日の巣くつ、桜木を破壊しなければならない。そのための兵士として、あなたは選ばれたのです」

男は再び花を田中に渡す。
田中はその花束を受け取ると、その瞬間、ゆっくりとした眠気に襲われた。

田中は夢を見ている。
体中に管が回され、そして臓器が次々と機械部品に変えられていく。
痛みはいっさいないが、少しずつ自分の身体が変えられていくのを感じる
やがて耳にトラのようなものを取り付けられ、しっぽが設置される。
そしてまるで映画の中で見るような、ユリウスカエサルの着ているような服をきせられる。

声が聞こえる。
やがてその声は自分の田中、という名前ではない、「タイガー傀儡」という名前で呼ばれていることに気がついた。

「タイガー傀儡、目を覚ましなさい」

その声に、田中は目を覚ます。

「おはよう、タイガー傀儡」

違和感のある名前ではある。
しかし、自分はそうであるという意識も感じる。
それどころか、自分はタイガー傀儡であるという意識が強くなっていき、そしてその使命を、こころの中から喜びとともに感じた。

「私は、タイガー傀儡。芝崎鋼機に巣くう反日朝鮮人・アカどもから誇り高き芝崎を救うもの……」

そのように言うと、心から使命と、その喜びを実感できる。
そしてその喜びをかみしめるように、自身の、白い手袋で覆われた腕を見て、ゆっくと握りしめ、そして開いた。

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