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W3D5 睡魔-수마

 コウモリ傀儡は豆鉄砲に驚き、厳格魔法が切れたらしい。
 ルナはそれが厳格だと理解すると、ぼんやりと敵、そして味方を見つめる。
 しかし、ルナにとってそれは喜ばしいこととは思えず、俯く。

 自分の生きる意味を捕まえたつもりだった。
 しかしそれは幻覚であり、むしろ目の前の人間は自分を殺人兵器に変えようとしている。
 そしてその目的は、自分の同胞を抹殺するため。
 それは同胞であろうとなかろうと、絶対に許されるものではない。
 だからと言って、自分がこうなった意味など、あるのだろうか。
 もし殺すための殺りく兵器として生きるなら、それは強い意味を見出すことができる。

 ルナはその場で蹲り、じっと頭を抱える。

「ルナ、君はそんなことをするために改造されたんじゃないんだろう!」直也は言う。

 しかし、直也の声はルナには響かない。

「オルカ傀儡。生きる意味をあなたは見出したんじゃないかしら?」
「オルカ傀儡。もう君は動けないはずだ」

 その相反する二つの言葉が気持ちをループし、何を今すべきなのか、わからなくなってしまう。

「僕は……僕は……」ルナの情けない姿を、傀儡たちはつぶさに観察し、あざ笑う。

 頭を抱え、涙を流すルナの姿はなんとも情けなく、彼女がこの世界を一人で守ろうとしているのを見ると、直也としても哀れに感じてしまう。
 ルナにおいても、その思いは同じで、直也の残念そうな目を見ると、ますます悔しさがわいてくる。
 この敵は自分を引きずりもどし、世界を破壊する走狗として戦わせようとしているのだ。
 だから立て、立ち上がるんだ……。

 ルナは思う。
 しかし、かたくなな心が立ち上がらせようとしない。
 サタンの誘惑でしかないのに。
 それでも。
 ルナはゆっくりと立ち上がり、コウモリ傀儡と、直也に似たものの前に立つ。

「あら、まだ見たいのかしら?」コウモリ傀儡は言う。

 ルナは剣を握り、直也めいた男めがけて切りかかる。
 彼は腕を落とし、驚いた表情でルナを見る。

「生きるためだ!」ルナは叫ぶと、さらに剣で直也めいたそれを切り払い、腹を抉る。
 一方、敵はルナめがけて攻撃を仕掛けるべく、手を前に差し出す。
 しかし、その腕をもルナは切り払い、崖の下へと落としていく。

「何をしてくれる!」男は話す。

「僕の大切な友達を騙るな!」ルナはさらに叫び、顔面に剣を突き刺し、引き抜く。

「우뢰참雨雷斬!」ルナは叫ぶと、剣の先に雷を宿す。

 剣を払うと、直也めいたものへめがけて直進し、彼は電撃の中で、激しい叫びをあげながら倒れていった。

 ルナは居直り、最後の敵を見る。
 コウモリ傀儡はぱち、ぱちと手を叩くと、ルナに妖艶な笑みを見せる。

「その力、やはりさすがだわ。ねぇ、オルカ傀儡。私と組まないかしら? あなたの同胞を殺害したくないのであれば、他にもいろいろ手はあるわ」

 しかし、ルナはもう迷った様子を見せてはいなかった。

「僕は……ただ生きたいだけ。そして、仲間を殺したくない。だから、それを殺そうとするすべてのものを、僕は許さない! それが、マスクドオルカのクレドだ!」

 ルナは高らかに宣言する。
 ルナの目には光が宿り、迷いの色すらもない。
 自分が生かされている理由、それが今、見えた気がする。

「一人も滅ぼされないようにしてくださる神様の、傀儡となること、それが僕が生まれ変わった理由なんだ!」

 ルナはそう叫ぶと、剣を握り、コウモリ傀儡に向かう。
 そして剣を振るう。
 しかし、敵はマントをはためかせて飛翔。
 ルナの後方を取る。

「ならば、私にも考えがあるわ」

 言うとコウモリ傀儡は激しくマントをはためかせる。
 その瞬間、強い風が吹きすさび、立っていることが困難になる。
 さらに目を大きく見開くと、耳に激しいビープ音が走る。
 ルナは構うものかとその敵のもとへと飛び上がり、切りかかろうとする。
 しかしコウモリ傀儡はさらに高度を増し、ルナに思いっきり蹴りを落とす。
 その勢いでルナは叩き落され、柵を破壊し、そのまま転げ落ちる。
 さらに敵は銃を構え、ルナめがけて発射。
 ルナはそれを腕で避けるものの、腕はすぐに穴が貫通し、ボロボロになってしまう。
 それでもルナは体勢を立て直し、

「누리헤엄침世泳ぎ!と叫ぶと、空中めがけてひれを動かし、左手を見る。

 左手はまだボロボロになってはいない。
 ルナはそれをチャンスと判断し、左手で剣を握り、魔法を込める。
 一方でコウモリ傀儡はルナめがけて銃を発射。
 ルナはそれを水中のシャチのようにひらりひらりと交わすと、コウモリ傀儡のマウントポジションを取る。
 そして剣で魔法陣を描き、氷を剣に付着させる。
 その剣でまず、コウモリ傀儡が銃を持っている、右手を落とす。
 その刹那、コウモリ傀儡はルナに小さな手裏剣を放つ。
 それはルナの胸や腹に突き刺さり、そして激しい痛みとともに、鈍く、動きにくさを感じる。

 ――マヒ魔術

 その気配を感じ、ルナはきっと敵を睨む。
 敵は楽しそうに笑い、ルナを見つめる。

「あなたを安全に捕獲するためよ」

 さらに敵はルナのしびれて動きの悪くなった腕をつかみ、左腕の関節をひねる。
 もはや剣は握れない、
 ルナは一瞬、絶望的な思いを感じる。
 その時、ルナは直也がエアガンを持っていたことを思い出す。

「ナオ、ちょっとエアガンを貸してくれ」

 突然のことに、直也は一瞬きょとんとした表情でルナを見る。
 しかし、必死な形相の彼女の表情から、何か大切なことになるのかと感じると、直也はルナにエアガンを投げる。
 それをルナは口で加えると、魔力をその中に注入する。

 そして魔法でそれを複製すると、何十丁もの剣を作り出す。

 しかし、敵はそんなことでひるむような相手ではない。
 コウモリ傀儡はかのんをつかむと、ルナの前に突き出す。
 少女は真っ青になり、おびえた様子でルナを見る。

「この少女を撃たない限り、私は倒せない。どうするかしら」

 ルナはそれでもかまわないと、魔力を練り、周辺を凍り付かせることで敵を破壊しようとたくらむ。
 しかし、そのことを理解したコウモリ傀儡は、おもむろに短剣を呼び出し、少女の足を切りつけ、そして足を抉っていく。
 かのんは今、何が起こっているのかわからず、大きく目を見開く。

「魔法を使ったら、この子は傷つく。どうかしら?」コウモリ傀儡は笑う。

「……卑怯だぞ」ルナは叫ぶ。

 しかし、コウモリ傀儡はそれを喜ぶかのように足を抉っていく。

「オルカ傀儡には回復魔法など、無いものねぇ。こうやってやられればあなたはもう、何も動けなくなる」

 ならば。
 しかし、剣を今は握れる状態ではない。
 ルナはコウモリ傀儡のもとへとづき、顔面を殴る。
 その瞬間、少女のもう片方の、真っ白の足を切り裂いていく。

 攻撃を加えるごとに、かのんちゃんは殺されていく。
 そのことをどのように判断したらいいのかわからず、困惑する。

 その時、自分が銃を思い出す。
 ルナはその瞬間、陰に隠れる。
 敵はルナが姿を隠したことに何かの秘密を感じ、「どこ行ったのかぁ、かのんちゃんがどうなってもいいのかなぁ?」と挑発を加える。
 ルナは仮想水中から抜け出した先の、ゴルフ場の陰で銃を構える。

 そして。

「심빙탄沈氷弾!」

 ルナは叫ぶと、何十もの、無数の氷がルナのモデルガンから放たれる。
 それは油断をし、後ろを振り返っているコウモリ傀儡の首に命中し、炸裂。
 頭部を破壊されたコウモリ傀儡は、真っ逆さまに崖を下り、爆発した。


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