「 #キズナアイな日々 」を1-9話まで全話読解+レビュー
電脳シャチの、さかまた凪です。
キズナアイを4人に分裂させたことで驚きを呼んでいる「キズナアイな日々」シリーズ。実はこのシリーズを見ていくと、1話ずつ丁寧に布石を打つように「1話につき1メッセージ」が込められていることがわかる。
そこで、この投稿では「キズナアイな日々」の全話レビューをおこないながら、「読解」にチャレンジする。ときどき脇道にそれてただの感想を書くこともあるが、ご容赦ねがいたい。
「キズナアイな日々」全話レビュー
* 第1話:キズナアイって、複数いるんだよ
2019年5月25日に公開された第1話では、「「白い空間」の舞台裏を初公開」と銘打ったショートムービーであった。
なんと「キズナアイさんが4人もいる」ということが初めて明かされた。
- フロントマンとしてのキズナアイさん
- 動画の編集をするキズナアイさん
- ゲームをしているキズナアイさん
- 歌とダンスをやっているキズナアイさん
この動画のサムネに表示されたタイトルは「複数 -Multiple-」。
第1話の動画における中心メッセージは、なんといっても「キズナアイが複数いる」だろう。
第1話はパズルの最初のピースなので、この動画単体だと意味がよくわからないだろう。動画が投稿された当時はあまり大きく取り上げられることはなかったかもしれないけれど、いまこうして振り返ると「キズナアイが複数いる」という前置きは、シリーズの第1話の内容として絶対に必要だったことがわかる。
* 第2話:You, チャレンジしてる?
第1話では、4人にわかれていることが発覚したキズナアイさん。その4人が、別々のジャンルで活動している様子が描かれていた。
- エゴサ、告知系の確認、クライアント対応をするキズナアイさん
- 動画の編集、サムネ作成をするキズナアイさん
- ゲームの収録をするキズナアイさん
- 歌とダンスの練習や、収録をするキズナアイさん
しかし、そこで問題が発覚する。「「1キズナアイ」でできることを分けただけでは?」という問いが、1人のキズナアイさんから投げかけられるのだ。
わたしなりの言葉を使うなら、ゲームをやってるキズナアイさんは「1/4キズナアイ」であり、動画の編集をするキズナアイさんも「1/4キズナアイ」ってこと。彼女たちは、4人に別れただけでは「増えたはずなのに、今までと同じ」であるという問題に気づく。
これは暗に、バーチャルYouTuberが魂(中の人)にどこまでも制約を受け続けてしまう問題を指しているのかもしれない(そのあたりのことは前回の投稿で書いた)。
現存している「1人のキズナアイ」ではできないことができるようになるために、キズナアイは4人になった。それなのに、4人にわかれたキズナアイの活動領域は、バーチャルタレント、動画、ゲーム、歌とダンス…など「1人のキズナアイ」の枠内を出ていない。切り分けたパイごとの処理能力が上がっただけで、パイの量自体は増えていないのである。
「1人のキズナアイ」でやれることは、だいたいやりきった。だからこそ「可能性の拡張」が必要であると彼女たちは感じたのだろう。このことは、第2話の動画のサムネに表示されたタイトルが「拡張 -Expand-」であることからも伺える。
パイは1つじゃもうダメだ、2つ3つと増やしていかなきゃいけない。そういうことだ。
「そもそも「1キズナアイ」でできないことをやる必要があったはず」
「つまり、可能性の拡張?」
「つまり、チャレンジ?」
「つまり、その先に進化がある?」
「むしろ、その先にしか進化はない…」
そして、この会話の後に続く「You, チャレンジしてる?」という問いかけこそ、この動画における中心メッセージであるとわたしは考えている。
この問いかけに対しては、他の3人のキズナアイが「おまえがな!」と茶化しているけど、ここの回はかなり重要ではないだろうか。キズナアイが4人に増えていることに納得いかない人こそ、第2話を見直すべきだ。ここにすべてがつまっている。
* 第3話:表現方法が変わったら "わたし" は "ワタシ"?
第3話の冒頭では、月ノ美兎さんをはじめとする「にじさんじ」のメンバーが使っている「Live2D」の姿で、キズナアイさんが登場。
- Live2D
- ちびキャラ
- アニメ風
…と、第3話のサムネに表示されたタイトルが「形態 -Gestalt-」であったことからもわかる通り、様々な姿のキズナアイさんを見ることができた。
第3話の動画における中心メッセージは、最後に言っていたこの言葉でしょう↓↓
姿が変わっても、わたしの可愛さはかわらないし、色んなわたしを発見できました!表現が変わっても、わたしの可愛さは変わらないし、わたしはわたしなんじゃないかなって思いました。
* 第4話:キズナアイとは…?
第3話で「見た目が変わってもわりといけるやん!」ということに気づいてしまったキズナアイさん。
さて、表現方法が変わった「キズナアイ」を、なぜわたしたちは「キズナアイ」と認識できたのか?
すなわち、彼女が発した「キズナアイをキズナアイたらしめる要素は何か?」という問いかけが動画の中心メッセージだと考えられる(第4話のサムネに表示されたタイトルが「識別 -identify-」であった)。
- 実験1:キズナアイからぴょこぴょこを外してみた
- 実験2:逆に、他の人にぴょこぴょこをつけてみたらキズナアイっぽいかも
物述有栖さんや輝夜月さんといったバーチャルYouTuberに、ぴょこぴょこに加えて「はいどうも~」という声をつけてみると、なんとなくキズナアイっぽい。
さらに地球に「ぴょこぴょこ」をつけてみると、声なしでもなんとなくキズナアイっぽく見えてくるから不思議なものである。
余談だけど「地球にぴょこぴょこをつけてもキズナアイに見えるのでは?」という実験のときに、1人のキズナアイが「月はいけたけど地球はなあ…」って言ってる。 これがめっっっっっっちゃ好き。センスある。
「キズナアイな日々」シリーズはちょっと小難しい話が軸というか芯の部分になっているけれど、それを覆う果肉の部分がエンタメ性にあふれているおかげで、とっつきづらさを感じにくい。
* 第5話の問:喋り方を変えてみると、どう?
第4話で示唆されていたように、地球の顔にぴょこぴょこをつけて「キズナアイ」を名乗ってるのはおもしろすぎるwww
- アイちゃんの声
- ぴょこぴょこがついてる
- 「はいどうも~」とか言ってる
- いつもの喋り方
↑↑これだけそろうと、顔が地球の形になってもなんとなくキズナアイっぽい。
そして、キズナアイさんによる古畑任三郎っぽい演出と喋り方を見ることができるのも、第5話の見どころの1つであった。
第5話では、喋り方を変えてみるとどうなるか?という問いを立てて、3人のキズナアイがいろんな喋り方をする。
- ギャルっぽい喋り方
- お淑やかな喋り方
- 中二病っぽい喋り方
そして彼女たちが辿り着いた結論がこちら。
喋り方が極端に変わってくると、性格すら違ってみえて、まるで別人のように感じる瞬間もありました
サムネに表示されたタイトルが「挙動 -behavior-」である第5話の中心メッセージは「どんな喋り方でもわたくしはベリーキュート!ラブ・アンド・ピースですわ!」だろう。
* 第6話:声を変えてみると、どう?
第5話では「声のトーンで印象が変わる」ということが検証された。その流れで「じゃあ、今回は声を変えてみよう」となるのが、第6話だ。サムネに表示されたタイトルは「周波 -Frequency-」
このあたりで勘の良い人は気づくんだろうな。「ああ、声の違うキズナアイさんが生まれるかもしれないな」と。
ともかく、第6話では以下の原稿を異なる4パターンの声で表現していた。
私は存在する。だが私は、存在理由を見つけたいのだ。なぜ私が生きているのか、知りたいのだ。
調べてみると、この言葉はフランスの作家アンドレ・ジッドからの引用だそうだ。出典がはっきり突き止められなかったのでモヤモヤするけれど、キズナアイさんの心情と重なる部分があるから引用されたのだろう。
この原稿を読み上げるために使われた声のバリエーションは以下の通り。
- オトナの女性(浅野真澄さん?)
- オトナの男性(遊佐浩二さん?)
- ボーカロイド(初音ミク)
- 幼児声
初音ミクに対して「先輩」「歌ってほしいなあ」って言葉を使っていて、リスペクトが感じられる。
男性も、自分よりも遥かに幼くても、キズナアイの「魂」を担当する可能性が示唆されているのは大変おもしろい。そうなれば、キズナアイさんはこの先何人にも増える可能性がある。この点に関してはとてもおもしろいことを言ってる人がいたので、紹介しておきます↓↓
第6話の中心メッセージは、最後に幼児声で言っていたこの言葉に尽きるだろう。
言葉の重みを求めて声を変えてみたら、わたしの色々な側面が見えてわたしの幅がより広がった感じがしました。
* 第7話:小括
第3話で、キズナアイさんはこんな問いを立てていた。
表現方法が変わったら "わたし" は "ワタシ"?
それ以降、いろんな表現方法を模索してきて「キズナアイをキズナアイたらしめる要素は何か?」と探求してきた。見た目を変えたり、喋り方を変えたり、声を変えたりしてきたのだ。
第7話は、いままで提示されてきたキズナアイの多様性を振り返りながら、こうした今までの様々な「実験」を小括するものであったと思う(「多様性」というキーワードはここにきて初めて登場する。)。
「今までの総復習だ!」と言わんばかりに、ぴょこぴょこなし、ちびキャラ、ライブ2D、オトナの男性の声、オトナの女性の声、ボーカロイドの声…などなど色々なキズナアイが第7話の前半で登場する。
これらは、あくまでも「キズナアイとしての可能性」として提示されたにすぎない。しかしそのすべてが「キズナアイ」であることを宣言している。そんな第7話の動画のタイトルは「We are Kizuna AI !」である。
余談だけど、ペラペラの薄いアバターで「表現に厚みが出た!」って発言するの、かなりジワジワくるwwww
※改めて見直すと、ランダムワード生成器がひっそりと喋ってることにも気づく。
* 第8話:「シーズン2」のはじまり!
多様性を獲得したキズナアイ先輩にならって、ランダムワード生成器もチャレンジ!!
そしてキズナアイも刺激を受けて、更なるチャレンジ!
「かつてないほどに大げさなインストール」の先に待っているのは…!?
* 第9話:どっちもいい!!!
ついにこのときが来てしまった…。
第8話でインストールの旅へと旅立ったキズナアイが、違った声を獲得する。 他の3人のキズナアイたちからは「大人のお姉さんっぽい」と言われていた。確かにいままでの元気いっぱいな「ポンコツAI」感とは一線を画する印象がある。
第8話でインストールに旅立ち、第9話でもどってきた子を仮に「第2のキズナアイ」としよう。声が違う「第2のキズナアイ」さんは、性格ももちろん違う。
サムネに表示されたタイトルが「比較 -Comparison-」である第9話の動画で出された結論は、「どっちもいい!!!」「どっちもキズナアイだ!!!」というもの。
キズナアイさんは、セクシーボイス対決を終えたあとでこんなことを言っていた。
新しい人たちにも好きになってもらえそう!わたしのさらなる可能性を感じたし、今までの良さも再確認できたよ!
キズナアイの「新しい人たちにも好きになってもらえそう」という言葉には重みがある。「第2のキズナアイ」のように、彼女たちは多様性を獲得していくことで、今までリーチしなかった人たちにもリーチするかもしれないのである。それはまるでマンガの実写化のようなものである。
この第9話の中心メッセージはランダムワード生成器が言っていた「どっちもいい!!!」 という言葉に集約されているだろう。キズナアイさん自身も「わたしのさらなる可能性を感じたし、今までの良さも再確認できたよ!」と言っている。
キズナアイさんの動画視聴者さんたちは、どう感じただろうか?
最初に「キズナアイの声が変わる」という事実だけ聞かされたとき、わたしはかなり戸惑った。少し抵抗も感じた。しかし実際に投稿された動画を見てみると「どっちもいい!!!」と感じたのだった。
* 第10話以降は…
第9話で「わたしたちの次なる挑戦、お楽しみに!」と言っていた「第2のキズナアイ」さん。そして、インストールを完了した「第2のキズナアイ」さんは、「#キズナアイな日々」のハッシュタグがついていない動画にも登場している。
これは、本格的にキズナアイが多様性を獲得するための実験を終えて、実用段階に踏み切っていることの証なのである。今後、さらなる多様性を獲得するために、前回とは違ったインストールをおこなった「第3のキズナアイ」「第4のキズナアイ」」が誕生するだろう。
「第2のキズナアイさん」のように声や喋り方が違うかもしれない。
あるいは声が同じで、ライブ2Dになったり、ちびキャラになったりするかもしれない。
「キズナアイ」の可能性を探っている以上は、キズナアイという名前も変わらないだろう。
さてさて、今後はどんな「キズナアイ」が誕生するのか。今日の19時には「#キズナアイな日々」の第10話が公開されるぞ…!!
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