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アラサー同人字書き女の結婚 馴れ初め編♯1

―――数十万字の小説を書き上げた後、私は何を書いていいのか分からなくなった

 同人字書きになってから数年、私は複数の作品を書き上げてpixivに投稿。さらには同人誌として形にすることが出来た。
 嬉しいことに、マシュマロを置いて、小説の感想をいただけることに楽しみを見出していた。
 しかし、数十万字の小説を書き上げたことにより、これ以上の作品が書ける気がなってそこから私は何も書けなくなっていた。

 燃え尽き症候群だと、今なら思う。

 小説を書いている間は恋愛に興味なく、仕事が終わればすぐに家に帰り、母に作ってもらった夕飯を食べて、好きなように小説を書いていた。それが私の人生の使命かのようにただひたすら。
 その使命がなくなったことによって、私は大きな喪失感を覚え、どうして良いのか分からなくなった。
 そして思うのが現実。
 アラサーの実家暮らしの、恋愛経験ほぼない女。
 このまま両親におんぶに抱っこで好き勝手生きていて良いのか。自分が年を取って両親を看取ったあと、ひとりぼっちになって生きていけるのか。
 漠然と不安が押し寄せてきた。
 仕事の面でも、一応正社員で働いていたが、給料も安く将来性もない。

 そして比べてしまうのだ、周囲の友達の現状を。 
  
 周りの友達が羨ましかった。
 結婚して楽しそうに旦那さんの話をする友達。
 大企業で働いて惜しむ事なく推しグッズを買う友達。
 羨ましい気持ちはあったが、妬みはなかった。それぞれの幸せは、彼女達が自分たちの努力で得た幸せなのだから。
 それでも、今までは推しキャラをいかに幸せに小説で表現するかが私の推し活。小説を書くことで昇華していた。しかし、それがなくなってしまった今、自分は何をすれば良いのだろうか。このままでいいのか。2週間ほど悩みに悩み抜いたが答えが出ず。
 そんな中、友人から急遽夜みんなでご飯を食べようとグループラインが。気持ちが沈みながら待ち合わせへと向かい、早めに駐車場へ着いた私はスマホをいじっていた。

 そして気がついたら、私は週末に街コンを申し込んでいたのだ。

 これが運命を大きく変えるとも知らず。

 小説が書けなくなった、という喪失感は大きかった。しかし小説を書いて感想を頂けて、こんな自分でも誰かを感動させることができるのだと、同人活動をしていて自信が多少なりともついていた。
 自信が全くなかった数年前。そんな時に街コンへ参加しても結果は散々だったが、自信がついた今なら何かが変わるかもしれない。ほんの希望を一欠片だけ抱いて、とりあえず現状を変えたい一心で、当日までの日々を過ごした。

街コン当日

 数年ぶりの街コンは不思議と緊張していなかった。
 いつもなら吐き気がするほど緊張して、行く前から「帰りたい」を心の中で連呼しており、出逢えなかったらどうしよう、もし出逢えたとしても変な人だったらどうしようと考え込んでいたが、この時の私はアラサーとして社会性もそれなりにあったので、どうにかなるだとうと開き直っていたのだ。
 
 街コンの流れとしては、当日の男女は7人:7人ぐらいで、女性が座ったままで、時間になったら男性のみが席の移動をして、時間内に全員とお話をするというものだ。
 一巡すると気になる相手の番号(複数可)にチェックをして、「あなたに興味がありますよ」というアピールをし、更にアピールするには一方的に電話番号もしくはLINEのIDを記載した紙を、主催者側を通じて渡すこともできるが、相手がこちらに興味がなければ紙屑となってしまう。
 それからもう一巡して、最終的に一人を決めて、互いの番号を書けばカップリング成立となる。

 正直に言うと当時の記憶はあまりないが、とある男性が目の前にきた瞬間は今でも忘れない。
 彼が私の正面に座った時、私は「親戚の集まりにいても馴染みそう」な雰囲気の人だなぁと漠然と思った。

(※うちは田舎なので、お盆や年末年始に集まる習慣があります。もちろん絶対参加ではないですが、普段会えない従兄弟や伯父伯母に会えるのは、年に数回の楽しみ。従兄弟のみんなは配偶者を連れてきているので、私もそう出来たら嬉しいなと思っていました)

 あまり緊張が漂わず、当たり障りのない会話をして、なんとなく自分の中では「気になる」という感情が芽生えた。これ!という決定打もなく、本当になんとなく。
 何回も参加した街コンで、こんな感情が芽生えたのは初めてだった。
 でもこの勘が当たるのかどうか。
 もしアプローチをして成功したとして、変な人で失敗したらどうしよう。正直恋経験もほぼなく、年齢のこともあり結婚を前提としたお付き合いをしたいので、失敗はしたくないという気持ちが強く、この時の私はぐるぐると考え込んでいた。
 
 一巡した後、中間で気になる人の番号を書くにあたり、私は彼の番号に丸をつけた。しかし、私の番号に彼の番号はなかった―――つまり彼は私のことが気になっていない。
 そんな人生うまくいかないよなぁ、と落ち込んだ。漫画のように、重い石が落ちてズーンと。
 でも気になる相手がいた、という事実が自分の中で大きかった。アプローチしたいという気持ちが、自分の中にもあったということが。
 散々悩んだ挙句、電話番号もしくはLINEのIDを記載した紙を主催者側に提出した。最終的にカップリングにならなくても、自分の気持ちは伝えようと。後悔はしたくなかったから。
 そのあと、もう一度話すことがあったが、今となってはあまり覚えていない。

 そして最終カップリング発表の時。

 もしこれがダメだとしても自分の中では大きな一歩だと、自分で自分を褒めようと言い聞かせていたなか、相手の番号と自分の番号が一緒に呼ばれた。
 訳もわからず、一瞬思考が停止した。そして、気づいたのだ、気になる男性と最終カップリングになったということに。

 自分としては???を頭上に連ねながら、最後に彼の元へ。
 中間発表の時は、私に興味なかったのに。自分に興味があるから釣ろうとしているのか。はたまた連絡先を記載した紙が功を為したのか。
 そして当時は誰も想像していないだろう。その男性こそが、今の旦那様になろうとは。
 街コン終了後、近くのファミレスで食事へ。何を喋ったのか全然思い出せないが、無言の空気も居心地が良かったのは何となく覚えている。
 自分としては、このまま行けるところまで進めれば嬉しいな、と思いながら、LINE交換をしてその場を後にした。

(※なぜ中間発表の時はチェックしてなかったのに、最終カップリングは番号を書いたのか、当時の話を聞いても、彼ははぐらかすので分からずじまいです)

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