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ビスタエナジー(VIST)

概要

Vista Energy, S.A.B. de C.V.(ビスタ・エナジー)は、主にアルゼンチンを中心に石油およびガスの探査、開発、生産を行うメキシコ拠点のエネルギー企業です。
2017年に設立され、ラテンアメリカにおける独立系エネルギー企業として急速に成長しています。
同社は特にアルゼンチンのバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域での活動を強化しており、この地域のシェールオイルやガス資源を活用しています。

ビスタ・エナジーの主な事業活動は、持続可能なエネルギーの供給と環境配慮を組み合わせた、効率的な石油・ガスの開発にあります。
彼らは、業界全体で生産効率を向上させるために先進的な技術を採用し、コスト効率の高い運営を追求しています。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)戦略を重視しており、環境への影響を最小限に抑える取り組みや、地域社会への貢献にも注力しています。


シェールオイルおよびガス (Shale Oil and Gas)

シェールオイルおよびガスは、地中のシェール層に閉じ込められた石油や天然ガスを抽出する方法で、主に水圧破砕技術(フラッキング)を使用して回収されます。
従来の石油・ガス井よりも複雑なプロセスですが、エネルギー自給率の向上に大きく貢献しています。

シェールのイメージ
シェールのイメージ2

企業概要

  • 会社名: Vista Energy, S.A.B. de C.V. ($VIST)

  • 設立年: 2017年

  • 本社所在地: メキシコ、メキシコシティ

  • 業界: 石油・ガス業界(エネルギー)

  • ミッション: エネルギー生産を通じて経済成長と持続可能な開発を促進し、効率的で環境に配慮した運営を実現する。

  • 目指すビジョン: 世界的に有数のエネルギー企業として、地域社会や株主に持続的な価値を提供し、再生可能エネルギーと化石燃料のバランスを取りながらエネルギー転換をリードする。

Vista 本社

創業について

背景

Vista Energy, S.A.B. de C.V.(ビスタ・エナジー)は、2017年に設立され、アルゼンチンのシェールオイルおよびガス資源の開発に特化したエネルギー企業としてスタートしました。
創業時の背景には、ラテンアメリカにおけるエネルギー需要の増加と、アルゼンチンのバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域が世界有数のシェール資源を有していることがありました。
これにより、同社は、アルゼンチンを中心にしたエネルギーの自給自足と輸出増加のための大規模な資源開発を目指すこととなりました。
また、Vista Energyは、既存のエネルギー会社や資産を取得して、効率的かつ持続可能なエネルギー供給に取り組むという戦略を打ち出し、短期間で成長を遂げました。

創業者

Miguel Galuccio
Vista Energyの創業者兼CEOであり、彼はエネルギー業界で「オイルマン」の愛称で親しまれ、30年以上のキャリアを持つ経験豊富なビジネスマンです。
Miguelは、以前YPF S.A.(アルゼンチン最大のエネルギー企業)のCEOを務め、同社の再国有化とシェールオイル・ガス資源開発を指揮しました。
彼のリーダーシップにより、YPFはバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)油田の開発に成功し、アルゼンチンのエネルギー市場でのシェール技術の採用を加速させました。
2017年にVista Energyを設立し、持続可能なエネルギーの供給とコスト効率の向上を図り、アルゼンチンのシェール開発をさらに進展させています。

Miguel Galuccio

沿革

  • 2017年: Vista Energy, S.A.B. de C.V.(ビスタ・エナジー)は、Miguel Galuccioによって設立。
    アルゼンチンのバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域でのシェールオイルおよびガスの開発を主要事業として開始。

  • 2018年: Vista Energyがメキシコ証券取引所に上場。
    アルゼンチン国内の石油およびガス資源の開発を進め、エネルギー生産の主要プレーヤーとしての地位を確立。

  • 2019年: 同社はバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域でのシェールガスプロジェクトを拡大し、生産能力を大幅に増強。
    生産量は年間約10万バレルの石油換算量に到達。

  • 2020年: パンデミックによる世界的な経済停滞にもかかわらず、Vista Energyは事業の拡大を続け、アルゼンチンのエネルギー供給の主要企業としての役割を強化。

  • 2023年: Vista Energyはアルゼンチン国内外での事業拡大を図り、シェール資源の開発を継続。
    環境配慮型技術の導入により、持続可能なエネルギー生産を目指す。


バカ・ムエルタ(Vaca Muerta)について

歴史

バカ・ムエルタ(Vaca Muerta)はアルゼンチンのパタゴニア地域に位置する巨大なシェール層で、アルゼンチンのNeuquén(ネウケン)州に広がっています。この地域は、約30,000平方キロメートルの面積(日本の九州の面積が約36,782平方キロメートル)を持ち、世界有数のシェールオイルおよびシェールガス資源を保有しています。

バカ・ムエルタ(Vaca Muerta)のシェール層が初めて1920年代に注目され、2000年代に入り実際のシェールオイル・ガス開発の可能性が本格的に認識されました。
特に、YPF(アルゼンチンの国営石油会社)が2010年にバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)でのシェールガスの大量発見を発表したことで、世界的な注目を集めることになりました。
この発見は、アルゼンチンのエネルギー自給率向上と、輸出国としての位置づけを強化する可能性を秘めた画期的なものでした。

その後、YPFをはじめ、ChevronやShellなどの多くの国際的な石油・ガス企業がバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)での開発に着手し、アルゼンチン政府もエネルギー開発を促進する政策を打ち出しました。

埋蔵量

シェールオイルの埋蔵量は、アメリカのPermian Basin(パーミアン盆地)に匹敵するともいわれており、エネルギー業界にとって極めて重要な資源です。
アルゼンチン政府の推計によれば、バカ・ムエルタ(Vaca Muerta)には世界第2位のシェールガス埋蔵量(推計:約8.72兆立方メートル)と、第4位のシェールオイル埋蔵量(推計:約270億バレル)があるとされています。

またバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)のシェール層は、その資源の質の高さでも注目されており、シェールオイルやシェールガスは、比較的高い有機物含有量と良好な浸透性を持っており、これが商業採掘のしやすさに貢献しています。

バカ・ムエルタ(VACA MUERTA)

VISTA ENERGYは、この広大で良質なバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域で活動をしています。


事業セグメント

  • シェールオイルおよびガスの開発
    主にアルゼンチンのバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域で石油と天然ガスの探査と生産を行っています。
    この地域は世界有数のシェールオイルおよびガス資源が存在し、同社の主力事業です。

  • 環境配慮型エネルギー技術
    Vista Energyは、環境への負担を軽減するための技術を導入しており、再生可能エネルギーや排出削減技術に取り組んでいます。
    これにより、2023年には、温室効果ガス排出強度を13%削減しました。
    廃棄物管理や水資源の保護にも取り組んでおり、これらの施策はESG戦略の一環として推進されています​。


ビジネスモデル

  • 垂直統合型モデル:
    石油および天然ガスの探査から生産までを一貫して行う垂直統合型のビジネスモデルを採用しています。
    このモデルにより、サプライチェーン全体でのコスト削減が可能となり、効率的な生産が実現されています。

  • シェール資源開発に特化:
    アルゼンチンのバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域でのシェールオイルおよびガス資源の開発に注力し、豊富なシェールオイルおよびガス資源にアクセスできる点が大きな強みです。
    Vista Energyはこの資源を効果的に活用しています。
    2023年には、同社の確認埋蔵量は318.5 MMboeに達し、前年比26.6%の増加を記録しています​。

  • 最新技術の活用:
    先進的な技術を導入し、最新の地質データ解析や探査技術を駆使して、効率的な資源抽出を行っています。
    また、環境に配慮した掘削技術を導入することで、環境負荷を最小限に抑えながら、生産の持続可能性を追求しています。


主要な競合他社

主要な競合他社は、同じくアルゼンチン国内でシェールオイルおよびガスの探査・生産を行うエネルギー企業や、ラテンアメリカ市場に強みを持つ国際的なエネルギー企業です。
代表的な競合企業として、以下が挙げられます。

  1. YPF S.A.
    アルゼンチン最大の石油会社であり、国内エネルギー市場のリーダー。
    特にバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域でのシェール開発においてVista Energyと直接競合しています。
    国有企業であるYPFは、政府の支援を背景に多くの資源とインフラを活用しています。

  2. Pampa Energía S.A.
    アルゼンチン最大の電力およびガス供給事業者の一つであり、上流のエネルギー生産にも参入しています。
    Vista Energyと同様に、シェール資源開発に注力しており、国内市場での競争が激化しています。

  3. Pluspetrol
    アルゼンチンやペルー、ボリビアで事業を展開する独立系エネルギー会社。
    特にシェールオイルと天然ガスの生産で実績があり、南米市場でVista Energyと競合しています。


業績

売上高 

2024年第2四半期:3億9,670万ドル(前年同期比 66%増)
2023年通期:11億6,880万ドル(前年比 1.6%減)

2024年第2四半期の売上高は、生産量と原油価格の上昇が寄与。


売上総利益(率)

2024年第2四半期:2億800万ドル (売上総利益率 52.4%)
2023年度通期:5億9100万ドル (売上総利益率 50.5%)


純利益(率)

2024年第2四半期:1億9360万ドル (純利益率 48.8%)
2023年度通期:3億9700万ドル (純利益率 34.0%)


調整後EBITDA

2024年第2四半期:2億8840万ドル (前年同期比 90%増)
2023年度通期:8億7070万ドル (前年比 13.8%増)

比較表:直近2024年第2四半期 調整後EBITDA(左) / 調整後EBITDA率(右)


資本支出(CAPEX)

2024年第2四半期:3億4600万ドル (前年同期比 93.9%増)
2023年度通期:7億3400万ドル (前年比 36%増)

比較表:直近2024年第2四半期vs前四半期,前年同期

指標

生産量(PRODUCTION)

直近2024年第2四半期の総生産量(TOTAL PRODUCTION)は、65.3Mboe/d(前期比 19%増 / 前年同期比 40%増)。
これは、第1-2四半期中に新しいパイプラインが開通したことによるもの。
また、生産ペースは2024年のガイダンス通りに進行中。(第4四半期 85Mboe/d, 2024年通期 68-70 Mboe/d)

比較表:直近2024年第2四半期vs前四半期,前年同期
総生産量(左) / 原油生産量(中央)/天然ガス生産量(右)

Mboe/d = 1日あたり1,000バレル相当量の石油生産


確認埋蔵量(Proved Reserves)

2023年は318.5 MMboeで、前年比 26.6%増、2019年比 312.9%増と、埋蔵量が年々増えています。


原油・ガス引き上げコスト(Lifting Cost)

直近2024年第2四半期の引き上げコストは、前年同期比よりも6%減となっており、
LIFTING COST PER BOE(BOE当たりの引き上げコスト)の4.5は、2024年ガイダンスに沿ったものとなっています。

原油・ガス引き上げコスト(左) / BOE当たりの引き上げコスト(右)

原油・天然ガスの価格推移(2024/9/21現在)

過去5年間の原油価格の推移
過去5年間の天然ガス価格の推移

原油・天然ガス価格の重要性
原油・天然ガス価格は、エネルギー企業の売上高の増減に大きく直結します。
また、需給関係や外的要因(地政学や情勢など)は、価格に大きな影響を与えます。


現在の株価(2024/9/21現在)

過去1年の株価チャート

株価は年初来から60%増となっています。


まとめ

  • シェールオイル・ガスの開発に特化
    Vista Energyは、アルゼンチンのバカ・ムエルタ(Vaca Muerta)地域でのシェールオイルおよびガスの探査・生産を主力事業としており、同地域は世界有数のシェール資源を誇ります。

  • 垂直統合型モデルを採用
    石油および天然ガスの探査から生産までを一貫して行う垂直統合型ビジネスモデルにより、効率的な生産とコスト削減を実現。

  • 確認埋蔵量の増加
    2023年の確認埋蔵量は318.5 MMboeに達し、前年比26.6%の増加。
    これにより将来の生産拡大と安定供給が見込まれます。

  • 競争力
    同社はバカ・ムエルタ地域での豊富な資源アクセスと低コスト生産を武器に、YPFやPampa Energíaなど国内外の競合他社に対して差別化を図っています。

  • 業績
    2024年第2四半期の売上高は3億9,670万ドルで、前年同期比66%増。
    生産量の増加と原油価格の上昇が大きく寄与し、調整後EBITDAも2億8,840万ドルに達しました。


以上となります。
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また、前回の決算とカンファレンスコールをまとめています。
それと、今回も参照した用語集なども記事として貯めております。
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