【史料】『文献解説 西洋近現代史』/『世界史史料』 ~日本語で読めるオランダ近世史研究の手引き2冊
オランダ史関係に絞った内容です。
近世ヨーロッパの拡大―文献解説 西洋近現代史<1>
書誌情報
著者: 中野隆生/中嶋毅 共編
出版社: 南窓社
サイズ: 単行本
ページ数: 126p
発行年月: 2012年3月
定価: 1800円
読書メモ
西洋近世史を専攻する学部生には必要充分な内容の研究入門。同様の研究入門書、名古屋大学出版会の『西洋近現代史研究入門』では近世はほとんど扱われていないので、ようやく出たとの感が強いです。(発行からわずか数ヶ月で入手困難に陥りました…たくさんの学生に読んでもらうべきなのに。現在は中古がそれなりに安く手に入ります)。
それぞれの分野で、概説+文献解説の併記になっていて、概説よりも文献解説側のほうがページ数が多い分野もあります。この文献解説も、基本的には2008年までに発行された、完全に日本語で読めるものだけ(訳書含む)に絞ってあります。巻末にリストも有。
オランダに関していえば、オランダ史研究者の桜田先生によるもの。第3章 第2節「オランダの独立と繁栄」として、まるまる1節割いてあって感涙もの。経済史や文化史についても詳しく文献が挙げられていますが、肝心の通史・政治史は、2012年当時ではどうしても数が少ないため、薄かったり古かったりするのは仕方ないところです。
一部もくじ
ハプスブルク帝国と主権国家体制
1)ハプスブルク帝国
カール5世の時代
フェリペ2世とスペイン王国の盛衰
16世紀後半の神聖ローマ帝国
三十年戦争とその影響
2)オランダの独立と繁栄
オランダの独立
オランダ共和国の繁栄
黄金時代の社会と文化
3)主権国家体制の成立
世界史史料<5>ヨーロッパ世界の成立と膨張―17世紀まで
書誌情報
歴史学研究会編: 近江吉明 森田安一
出版社: 岩波書店
ページ数: 390p
発行年月: 2007年6月
定価: 4,000円+税
読書メモ
「世界史研究・教育のスタンダード文献」を謳うとおり、日本語による史料一覧です。それぞれ出典や註、解説がついているのも嬉しい。八十年戦争関連の史料は大体下記のものでしょうか。以下は、管理人によるピックアップです。
とはいっても、これらの史料の全文ではなく一部しか訳されていないものが大半です。たとえば、「ユトレヒト同盟」は全二十六条ありますが、ここで紹介されているのは十三条のみ。ネーデルランドの「反乱」については、英語の史料「Texts Concerning the Revolt of the Netherlands」が出ていますので、併読すると良いでしょう。
一部もくじ
第4章 主権国家への道―16・17世紀
第3節 スイス・オランダ―地域連合から独立国家へ
183 フェリペ二世の宗教政策(16世紀後半)
フェリペ二世からパルマ公妃へ「セゴビアからの手紙」(1565/10/17)
184 オランダの独立(十六世紀後半)
ヘントの和平(1576/11/8)第四条、第五条
ユトレヒト同盟(1579/1/23)第十三条
185 フェリペ二世の退位(1581年)
ネーデルランデン全国議会の布告(1581/7/26)
186 国際法の芽生え(17世紀初め)
H.グロティウス著『海洋自由論』(1614年)第一章、第五章、第十三章
188 アントウェルペンの聖像破壊運動(1566年)
ヘーラールト・ブラント『宗教改革史』(1671年)
ほかにも、同時代の有名なものは大抵網羅してあります。たとえば下記などなど。
ルター『九十五か条の掲題』
アウグスブルクの宗教和議
トリエント公会議
ナントの勅令
権利の請願
ウェストファリア条約
チャールズ一世の死刑判決文
航海法
ポツダム勅令
あまり個人所有する類の本ではないので、もともと若干高額でした。あまり部数の出るタイプではないとはいえ、品薄から高騰してしまうのは残念です。