インフレが起きると「現金」の価値が目減りするって本当?


画像引用:photo-ac./ななほしてんとう


最近よく耳にする「インフレーション」。
インフレとは物価が上がることです。インフレが起きるとモノの値段が上がるので、生活費が高くなると予想されます。
私たちの家計は大きな打撃を受けてしまいますが、実は困ることはこれだけではありません。
インフレがわたしたちの大切な資産である預貯金の価値に、大きな影響を及ぼすことをご存じでしょうか。

今回は、インフレが起きたときの預貯金の安全性について、そしてインフレのなかで財産を守るための対策について、FPの私が説明します。


【預貯金のメリット・デメリットとは】

預貯金とは、金融機関に預けているおかねのことです。銀行に預けていれば預金といい、郵便局に預けていれば貯金と呼びます。

日本人は、「資産は預貯金だけ」という人も多いようですね。

預貯金は、元本が減らないという特徴があります。では預貯金について、メリットとデメリットをみてみましょう。


■メリットは3つの「扱いやすさ」

1)貯めやすさ
2)管理しやすさ
3)流動性の高さ

現金のメリットの一つ目は「貯めやすさ」があります。

現金で給料が入ってくるので、現金のまま(別口座に自動引き落としなどするケースが多いかも)で貯めやすいという点がメリットです。

二つ目のメリットは「管理しやすさ」です。

預貯金はいつでも金額を確認することができるし、引き出さなければ勝手に金額が減っていくこともないので、資産状況を把握しやすいというのが良い点です。


三つ目のメリットは「流動性が高い」こと。流動性とはいかに現金に換えやすいかというものです。現金は他のモノへと交換しやすいので、現金への流動性が高いかどうかが評価されるのです。

いまはキャッシュレス決済が浸透して「買い物はアプリで」という方が増えていますが、決済システムがダウンしたりすると、現金でしか買い物ができなくなります。いざというときに現金は頼りになる資産だといえます。



■デメリットは「増えない」こと

現金にもデメリットがあります。それは増えていかないこと。利子が低くて、預貯金の口座におかねを入れていても増えていきません。


銀行の利子はメガバンク、ゆうちょ銀行で0.001%(普通預金金利、22年4月現在)です。1000万円口座に預けていても、その1000万円が一年かけて生み出す利子は100円です。がっかりするほど増えていきません。

さらにせっかくついた利子は、課税されます(源泉徴収で自動的に引かれます)。利子に対する所得税は20.315%(2022年現在)引かれるので、100円ついた利子は税引き後79円くらいになります。
1000万円が生み出した儲け(利子)が79円です。
預貯金の利子だけで、資産を増やしていくことは難しいということがわかります。

1000万円が生み出す利子は79円


【インフレで預貯金が目減りするとは?】


信頼のおける資産と思っている預貯金が安全ではない、というのは聞き捨てならないかもしれません。なぜ安全ではないといわれるのか、2つの理由を解説します。

■①インフレになると現金の価値が下がる

物価が上がる状況をインフレーションといいますが、インフレになった場合には現金で持っている資産=預貯金は、その価値が下がるのです。

1個のりんごが100円で買えたとき
りんご=100円です。

物価が上がって1.5倍になりました。
りんごは1個150円になりました。

するといままでは100円あれば買えていたりんごが、100円では足りず、もっとお金をださないと買えないようになりました。

インフレ前:りんご=100円
  ⇓⇓
インフレ後:りんご=150円

インフレによって、りんごに対しておかねの価値が下がったということです。


200万円の車を買おうと貯金をはじめて、やっと通帳の貯金額が200万円になったとき、インフレが起きて物価が上がり、車の値段が300万円になっていて、車が買えなかった、ということも起こります。


預貯金の通帳に書かれた金額は、インフレになってもモノの値段と一緒に増えていってはくれません。

これが現金の資産価値が下がるということです。


いま、世界の状況が変わってきて、日本ではインフレが起こると懸念されています。

コロナから経済を立て直そうという時期にきて、石油などのエネルギー資源が高騰しています。おかげでいろいろなモノの値段が上がっています。インフレは架空の世界のことではなく、現実にそろそろやってきそうです。



■②円安になると円の価値がさがる

インフレが円安を引き起こすことがあります。
円安とは、円がほかの国の通貨に対して安くなることです。円安になると外貨に対して円の価値が下がります。

1ドルが100円のときには1ドルを100円で買うことができます。

 1ドル = 100円

為替レートが変わって1ドルが120円になったとします。このときドルに対して円安になったといいます。

 1ドル = 120円

1ドルを買うのに120円出さないといけなくなりました。
ドルに対して円の価値が下がったということです。


日本円を現金で保有していると、円安になることによって自分の資産を目減りさせてしまうことになります。


インフレや円安で、現金の価値は下がります。
ではどうすればいいのでしょうか?


【インフレの時の対策は?】

インフレのときに、大切な資産を守るためには対策が必要です。対策とは現金をほかの形に変えて持つこと。
どうして現金以外の資産に変えないといけないのでしょうか。

投資の世界で語り継がれる格言のひとつに
「たまごをひとつのかごの中に盛るな」というものがあります。

これは、資産を一か所にまとめておくと、危険だということを表しています。

一か所にまとめるというのは、資産を1つの形で持っておくという意味で、つまり資産を現金だけで持つのではなく、いくつかに分散させると良いということを示しています。

私たちをとりまく環境は、刻々と変わっていきます。
変化に対応しながら資産を守っていくためには、現金とほかの金融資産に資産を分けておくことが、結局は一番のリスクを回避する方法なのです。

インフレ、円安においては、現金は価値が下がってしまい、分が悪い。
だから資産の一部を他の形で持っておこう。



【現金以外の資産とは?】

預貯金ではない、他の資産の形にはどんなものがあるのでしょう。インフレ時に有効な資産をいくつかご紹介します。

■外貨に替えておく

円安のときにドルを買おうとすると、たくさん円を出さないとドルが買えないので、ドルに資金をかけるのは得策ではありません。円高のときに円をドルに換えておき(①)、円安になったときにドルを円に戻す(②)とおかねが増えます。

①1ドル=100円のときに10000ドルを100万円で買った
   ⇓⇓
②1ドル=150円になった(円安になった)。10000ドルを円に換えると150万円になった

150万-100万円=50万円の利益が生まれます。

円をほかの通貨に替えておくことで円安リスクを避けられる


■投資信託


投資家から集めたおかねを資金にして、ファンドに合わせてプロが商品を選んで投資して運用するもので、投資家はファンドの成績に応じて分配益をもらいます。

■株式投資


株式を購入すると、その会社の成績に応じて分配される配当を得ることができます。株式を売買するときの差額で利益を得ることができます。

ほかにも外貨FX、金、不動産、などがあります。


おかねを殖やしていくためには多少の専門性のある知識が必要です。投資を始める前にはしくみやルール、リスクについて学ぶ努力をしましょう。

投資を学ぶのはけっこう大変なので、セミナーを受けるなどで基礎知識を得ると良いと思います。


【まとめ】


「現金は完全無欠の資産ではない」ということをご理解いただけたと思います。これからの先の読めない時代には、資産を分散してバランスよく保持することが大事です。

・預貯金とそれ以外の形で資産を持っておく
・外貨、投資信託、株式などがインフレに有効


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