インポになった話

impotent(インポテンツ)。
さまざまな原因によって海綿体に異常が生じ、正常な勃起ができなくなることである。

俺は、つい先日この病気になってしまった。いや、正確には、常たる勃起不全というわけではない。
ホテルで女の子を前にして、いざ行かんというタイミングで全く息子が聞かん子になってしまったのだ。

これは身体的な問題がある場合のインポよりも深刻である。なぜなら精神的な原因で生じた障害は、精神を改善することでしか回復が見込めないからである。そして俺はあくまで恒常的に精神を患っているわけではない(そう思っている)。

何がいけなかったのだろうか。とにかくホテルを出た後、俺はただ落胆した。これまで他人事だと思い、なんなら若干せせら笑っていたインポに勢いよく足を突っ込んでしまったのだ。歩く気力を失い、へたへたと傍に座り込み、ただ呆けていた。道ゆく全ての人が何故か輝いて見えたし、こんな安くてもろい相対的な価値基準で世界を見ていたことにさらに落胆した。

俺は人を愛せなくなったのだろうか。行為中、不甲斐ない俺の体をさすりながら、大丈夫だよ、と言ってくれた女の子の顔が浮かぶ。その優しさもやり切れず、さらに自己嫌悪に陥り元気をなくした。

よく考えればそうだ。男根は姓の象徴であり、生殖能力を司る男のコアみたいなもの。それがブラックアウトともなれば、自信を失い戦意喪失にいたる。俺は完全に勝負どころで白旗を掲げてしまったのだ。

つらつらと書き連ねているが、結局原因がどこにあったのかはわからない。俺がオナニー中毒で刺激を求めすぎた弊害なのかもしれないし、ホテルに緊張してしまったのかもしれない。

わからないが、とりあえず愛だのアイデンティティだの、人類の共生だの考えそうになるのを押しこらえて、ブックオフでsmapのCDを大人買いした。

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