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ごちそうさま
私は長く生き過ぎた。病院のベッドの上で自分の意志では指先一つ動かすこともできないで横たわっていた。看護婦が体をふきながら聞いてきた。
「今日は何が食べたいですか?」
人間、体は衰えても食欲というものは衰えないものだ。
「そうねぇ、豪勢にフランス料理のフルコースといこうかしら・・・久しぶりにワインも頂くわ。デザートは私の大好きなプリンにしてね」
看護婦は点滴の針を刺しながら言った。
「ゆっくり味わってね」
「いい世の中になったわねぇ。点滴で栄養を送り込むだけでなく、食べたい料理の味まで味わえるのだから・・・」
私は、体中にワインの香りが行き届くのを感じながら人生の幕を閉じた。
私の人生、波乱万丈あったけれど、最期はおいしい人生でした。ごちそうさま。