「清水 新スタジアム問題 その6」
前回の後で、台風15号で静岡市が甚大な被害に見舞われ、物資支援やボランティア活動に従事。その間に川崎戦の参戦とあり、時間が経ってしまいました。申し訳ありません。
さて、今回は新スタジアム問題の「総まとめ」としたいと思います。
ただし、静岡市議会の令和4年9月定例会において、総括質問でスタジアム問題の質疑がされています。ここで市長の考えが出ているはずなので、この議事録を入手したところで、補足投稿をしたいと思っています。
(1)9月定例記者会見の市長発言
「その5」で触れましたが、エネオス遊休地のスタジアム用地としての供出については、市とエネオスさんで水面下で一定の理解というか、合意があったと推察されます。それを背景として、基礎調査委託や検討委員会が動き出しているのだと思います。
ところが、「その1」で触れたように9月定例記者会見にて市長が新スタジアム問題に触れ、突然として「民間主導でやって欲しい。」という意向を表明しました。
今回は、この真意、背景などを探って行きたいと思います。
(2)土地所有権の問題
市長会見のコメントには、こんな言葉が付いています。「民有地であるならなおさら(民間主導でやるべき)だ。」
ここには、大きな意味があります。
まず一つは、「民有地なら」と言っていますが、ここにはスタジアム用地としての適地は、もはやエネオス遊休地しかあり得ないという考えが滲み出ているように思われます。
そして、「民有地なら、なおさらだ。」というのは、市の公共施設を民有地に建てるわけにはいかないということです。
短期的で仮設的な施設を建てるならまだしも、恒久的かつ大規模な公共施設を民有地に建てるのは難しいということです。
民間の土地を市が借りて恒久的な公共施設を建てた場合で、万一、その土地の所有者が破綻、破産等したとき、明渡しという事態に及ぶ可能性も無いわけではありません。そのため、一般的には公共施設は用地を取得(買収)します。
ということは、吹田スタジアムのように民設・公営というようなスタジアム建設の手法は別として、市長はエネオス遊休地を「買収をするつもりはない」ということを言っているのだと思われます。
(3)市財政の状況
買収するつもりがないというのは、お金が無いということでしょう。というのも、田辺政権ではビッグプロジェクトが目白押しです。
・駿府公園内の歴史博物館 約62億円
・静岡市民文化会館の改修工事 約160億円
・駿府城天守台跡の展示 約8億円
・清水港の海洋文化施設 15年間の運営費169億円+赤字追加補填
という巨額を投じる計画が進んでいます。
更に、以下もあります。
・清水庁舎建替え
・東静岡にアリーナ建設構想
これらの建設費等の巨額費用が見込まれるうえに、コロナ禍の影響で歳入が悪化、ウクライナ戦争から波及する資材高騰・物価高による建設費のさらなる増加と、市財政の圧迫が予想されます。
清水庁舎の建替えはコロナ禍を受けての延期、見直しがされていることからも最近の情勢が影を落としているのは間違いないでしよう。
9月定例会見で市長のこのコメントが出て来たタイミングとしては、9月から始まる令和5年度当初予算要求作業があり、その直前に財政課から今後の収支予測が庁内向けに示されたはずです。
その厳しい予測が市長コメントの背景としてあったものと思われます。
スタジアム建設費は200億円超とも予想されますが、そのうえに数haもの用地取得は容易ではないということだと思われます。
吹田スタジアムは、市有地の上に寄付金を主財源として民設でスタジアムを建設をし、市にスタジアム寄付する「民設・公営」方式でした。
この手法なら、静岡市は用地取得だけすれば良く、建設費の負担はありません。けれど、市長コメントはこの手法すら否定したものとも考えられます。
用地取得もしたくない、そんな厳しい財政状況ということかと思われます。
(4)裏の背景
ともかく、市財政が厳しくなりそうなのは容易に予測できます。更に、今回の台風災害も追い討ちとなりそうですし、脆弱性を示した市の災害対策も強化していかなくてはならないと思います。
しかし、ここまでは、表向きのお話だと考えています。市長が「民間主導で」と言った裏事情があるのではないかと、私は推察しています。
そこで、思いつくいくつかのパターンを挙げてみます。
ア)収支予測が思った以上に厳しかった
市長は、基礎調査委託を発注するなど前向きに進めてはいた。ただし、コロナ禍の長期化で歳入の悪化が想定以上になっている。
また、ウクライナ情勢で物価高の影響を受けて財政を圧迫し、ダブルパンチを喰らっているのが想定以上で、スタジアム建設は厳しいと判断した。
イ)水面下で民間主導プロジェクトが進行
エネオスさんと鈴与とエスパルスを中心として、民間主導のプロジェクトが進みつつある。
市とエネオスさん側との水面下の話し合いで、用地買収額が折り合わない。ならば、スピード感をもって一日でも早くお金を生む土地とするため、エネオスさんが民間主導で進めようと考えている。ジャパネットグループが主体で三菱地所のデベロッパーを入れて進めている「長崎スタジアムシティプロジェクト」のような形態が想定される。
ゥ)市長がはしごを外した
市長は新スタジアム建設には前向きではなかった。ところが、エネオスさん側から用地供出の用意がある旨が水面下で伝わると、機が来たとして基礎調査や検討委員会など動きを見せたが、これらもパフォーマンスにしか過ぎなかった。更に、民有地が障害であることや、財政的にも苦しくなって来たことを盾にして公設断念宣言。そもそも、ここまでシナリオとして書いていた。
ェ)イとゥの両方
そもそも、市長は進める気持ちが無かった。途中で公設断念宣言をしようと画策していたところに、運良くエネオスさん側が民間主導プロジェクトを進める旨の話が舞い込んで来た。
というよなパターンが考えられました。
市の財政状況や用地買収のこと考えると、イ)の民間主導で進めるしかないように思われます。また、市長も既にさじを投げていますし。
ウ)のような単にさじを投げているのだとしたら、検討委員会も開催中にもかかわらず一定の結論を出してしまった形なので、非常に無礼であると言えます。また、エスパルス、サポーター、パートーナーなどの期待を足蹴にしたようなものです。
これは私個人の感想ですが、私としてはェ)のパターンかと推察しています。
台風15号の災害に対する市長の姿を見ても、市長には市民に対する責務を全うしているとは思い難い言動があります。そこからして、もともとやる気が無かったとしか思えなくなってきました。
ともかく、自分や描いたプロジェクトを優先。そして、支援者や財界から要望されたものを優先し、新スタジアムの優先順位は圧倒的に低い。むしろ総合計画上の確固とした位置付けすらない。
ともかく、市長から民間主導という言葉が出て、もはや、選択肢は限定されたということですので、そこに向けてエスパルスファミリーとエネオスさんらとで地道に進んで行くしかないと思います。また、水面下で民間主導プロジェクトが進行していることに期待します。
ただし、市長選が近くなってきましたので、そこで風が変わるかもしれませんが、、、
6回に亘って長々と書いて来ましたが、お付き合いありがとうございました。
なお、色々な事実等を集めて推察して来ましたが、あくまでも私の推論でしかありませんので、ご理解ください。
また、9月議会の議事録を入手しましたら、補足投稿します。