「お父さんの名前はなんですか?」 小学2年のときの衝撃的な出来事。


小学校2年生の6月のある日、担任の先生が何かの授業か、学級会か……、それが何の時間だったかは忘れてしまったけど突然こう言った。

「もうすぐ父の日です。今日は、みんなのお父さんの名前を順番に発表してもらいます。こっち側(窓際)から、順番に立って答えてください」

私は、窓際の前から3番目の席に座っていて、「困ったなぁ」と思っていた。

1番前の席の子が立ち上がってお父さんの名前を言った。

先生は2番目の子の名前を呼んだ。2番目の子が立って、お父さんの名前を言った。

「次は私だ……」と緊張していたら、先生は私の名前を呼ばず、4番目の席の子の名前を呼んだ。

隣に座っていた”正義感の塊”みたいな男の子が、「先生! こいつのこと抜かした~!」と、大声で訴えてくれたのだけど、私は「せっかく先生が私のこと抜かしてくれたのに……」と、その男の子のお節介さに溜息をついた。

「いいのよ。○○さんは、お父さんがいないから」

今思うと……、というか、こうして書いてみると、あの担任の先生(名前も顔も覚えてない)、けっこうやばいよね。今だったら、ある程度大騒ぎになるだろう対応。

でも私は、「そうそう! 私はお父さんがいないから答えられないの。だから当てなくていいの」と思ったのを覚えている。答えがわからない算数の問題の回答者にならないように、「当てないで~、当てないで~」と祈っているときの気持ちと全く同じだった。

この出来事を、30年以上経った今でもこうしてはっきり思い出せるというのは、きっとそれなりにインパクトがあったんだろうなと思う。

娘が通う幼稚園では、母の日、父の日、敬老の日のイベントがある。似顔を書いて持って帰って来てくれたりする。

でも、保育園では基本的にそういうイベントはないらしい。

家族の形がさまざまになった今、きっと「お父さんの名前はなんですか?」なんて質問に答えさせるような授業はないんだろうな。



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